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間違えて理解してはいけない質的優位性!!

 今回は「間違えてはいけない質的優位性」というテーマでお話させていただきます。質的優位性が高い選手というと、多くの人がメッシ選手やエムバぺ選手を想像すると思います。簡単に説明すると「相手よりも能力的に上回っていること」が質的優位性ですよね。では実際に、試合で「どこにパスを出すのか」「どうやって攻撃を成功させるのか」について考えていくとなった時、「質的優位性の意味を理解できてないなー、この人・・・」と思ってしまうことがあります。
 例えば試合に出場したとき、11人の中で一番うまい選手がいるとします。チームの中で一番うまい選手です。「この選手=質的優位性」だと思っていると、それは間違いです。
 今、チームで一番うまいと思っているその選手、その選手のことをもう少し解像度高く考えてみると、例えばドリブルが上手かったり、シュートが上手かったり、そういった攻撃的な能力が高い選手を想像していることが多いのではないかと思います。では、その選手は「ヘディング」はうまいでしょうか。「フィジカル」は強いでしょうか。守備で「ハードワーク」ができるでしょうか。「ボールがない時に味方選手を活かす動き」ができるでしょうか。
 つまり、すべての面で相手選手11人に勝っている選手はそうそういないので、どんな状況でも質的優位性を保っている選手というのは滅多にいないということになります。質的優位性というのは、「その状況で相手と勝負したときに、どちらが勝つか」ということです。例えば、ゴール前でセンタリングを待っているときに、相手とヘディングの競り合いをしたらどちらが勝つかと考えた時に、メッシ選手とロナウド選手なら高い確率でロナウド選手が勝ちますよね。これは「ヘディングの上手さ」と「高さ」で考えると、ロナウド選手の方が質的優位性を保っているということです。カウンターアタックで広いスペースがあるときに、エムバぺ選手にパスを出すのか、ベンゼマ選手にパスを出すのか考えると、スピードのあるエムバぺ選手にスペースを使ってドリブルしてもらった方が、チャンスになる確率は高いと思います。確かにベンゼマ選手は類稀なシュートセンスを持っていますが、ゴールから遠ざかれば遠ざかるほど、その能力の効果は低くなります。
 つまり、質的優位性を考えるとき、常に今の状況から「どちらが勝つのか」「どちらがいいのか」を考えなければならないということです。何でも、メッシ選手やエムバぺ選手やネイマール選手にパスを出せばいいというわけではありません。
 質的優位性は、位置によって効果が変わります。「サイドでのプレーを得意とする選手」の中でも「右サイドを得意とする選手」がいます。逆に、「左サイドを得意とする選手」もいます。「スペースがある状態でボールを持てば、スピードを発揮する選手」も、「密集地で相手をかわすのが上手い選手」もいます。ベルナウド・シウバ選手のように、狭いスペースでテクニックを使って切り崩すタイプの選手は、密集していたり相手に囲まれているときの方が質的優位性が高くなります。

 間違っても、「相手がいないフリーの選手にパスを出す」という、古い考えは捨てるべきです。

 「後ろを向いて相手を背負った状態のほうが、ボールを上手く扱える選手」がいます。「スピードはないけれど、フィジカルは強い選手」は、相手を背負った状態でパスすると質的優位性が高くなります。このように、状況や選手の特徴に合わせて考えなければ、質的優位性を有効活用することはできません。
 さらに深堀すると、「相手選手と味方選手で考えた時に、味方選手が勝っていればそこにパスを出すのがすべて正解だ!」という訳ではありません。他に「味方選手が相手選手に勝っているところはないか?」と考えなければなりません。
 例えばバルセロナでは、質的優位性が保たれている状況が試合中にいくつもあります。そんな状況で、「質的優位性を保っている選手であればどこでもいからパスを出せ!」という考えでプレーすれば、あなたは即ベンチでしょう。試合の流れを考えたり、得点しやすい状況はどこか考えたりしなければ、せっかくのチャンスを潰すことになります。アマチュアサッカーの試合を見ているとよくある判断ミスです。「ボールは奪われていない」「状況も悪くない」ですが、もっと良い状況の味方選手がいたなら、そこにパスを送るのが正解になります。そう考えると、例えパスが通っても、「あなたは今、決定的な判断ミスをしてチャンスを棒に振ったんだぞ!」と言われても仕方がないということです。

 最後にもうひとつ、よくある間違いを紹介します。

 ペナルティエリア付近のメッシ選手のドリブルは、ほぼほぼ質的優位性を保っていると言えるでしょう。ですが、相手1人とメッシ選手1人では、質的優位性を保てていると言えたとしても、相手選手が5人6人いた場合は、その選手たち総合した守備能力とメッシ選手のドリブル能力を差し引きして、質的優位性を保てているのか考えなければなりません。
 ゴール前でロナウド選手がセンタリングを待っていても、3人の長身ディフェンダーに挟まれていたら、質的優位性は保てているのか難しいところですよね。他の状況を見たときに、やっぱりメッシ選手やロナウド選手にパスを出す方が「可能性が高い」ということはあります。ですが、こういった人数差も考えながら、質的優位性を正しく測っていくことが大切です。

 今回の話をまとめます。質的優位性は状況ごとに変わってくるので、選手の能力や総合値で考えてはいけません。選手によって得意な状況というのは異なり、能力を最大限に発揮する状況は人によって違うということです。これらを常に考えながら、「試合でパスを送るべき選手」を判断していく必要があります。今回は、質的優位性についてお話させていただきました。

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