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『THE MUSIC MAN』(ザ・ミュージックマン) BWを愛し、BWに愛された超絶怒涛の夫婦漫才

12/27 20:00
Winter Garden Theatre

【ニューヨーク2022②】
ヒュー・ジャックマン&サットン・フォスター『ミュージックマン』である。もともと2020年9月から公演の予定だったが、コロナの影響で延期を重ね、2021年12月にようやくプレビューが始まった。

実はこのプレビュー公演のチケットを持っていた。だが日本の水際対策はまだ全く緩和される気配がなく、実際の感染状況も高止まり。とても渡航できる状態ではなかったので断念。主演の2人が相次いでコロナ感染したため持っていた公演は結局中止になったのだが、何とも残念だった。何しろ大スターのヒュー・ジャックマンのこと、公演期間はさほど長くないだろうからもう二度と観られまいと諦めていた。

ところがプレビュー含め1年以上のロングランをやってのけてくれたおかげで、再びそのチケットを手にすることができた。有難い話である。

ご存じの通りヒュー・ジャックマンは『X-MEN』でブレイクする前に『美女と野獣』などのミュージカルに出演しており、その後ブロードウェイでも『ザ・ボーイ・フロム・オズ』でトニー賞主演男優賞を獲得している。そしてトニー賞の司会も務めるなど、ブロードウェイとの関係は深い。

映画スターとしての地位を確立したあとも何度も舞台に立っており、そのブロードウェイ愛がうかがえる。自分も2013年にストレートプレイ『THE RIVER』を観劇した。

このときはミステリータッチのやや重い舞台だったが、今回はミュージカル、そして思いっきり明るいタッチの話だ。エンターテイナーとしてのヒュー・ジャックマンを堪能できそうだと楽しみにしていた。

そして共演のサットン・フォスター。『モダン・ミリー』『エニシング・ゴーズ』で2回のトニー賞主演女優賞に輝いた、押しも押されぬ実力派。ファンコンベンション「BroadwayCon」人気投票で上位に入るなど、舞台好きの人たちの間で非常に人気が高い。TwitterやFacebokのコメントを観ていても彼女がいかにファンに愛されているかがよく分かる。

本作の開幕直前にも、その愛されキャラの本領を発揮したエピソードがあった。2021年夏、ロンドンのバービカン劇場で『エニシング・ゴーズ』が上演されたが、主演女優がけがで降板。すると代わりにサットン・フォスターが舞台に立ったのだ。かつての当たり役に「代役」として臨む、その心意気は何とも舞台ファンの心を打つ。

さらに、彼女も以前舞台で観ている。2008年の『シュレック』だ。

すでに中堅どころになっていた彼女が、キャピキャピ感を出さずに微妙なヒロイン・フィオナ姫を器用に演じていたのが印象に残っている。

この2人のタッグに心躍らせて向かったウィンター・ガーデン。1500人近いキャパシティを誇るこの劇場に来たのは4回目だ。1996年の『キャッツ』、2008年の『マンマ・ミーア!』、2016年の『スクール・オブ・ロック』。4本もの演目を観た海外の劇場はここだけではないか。『ウィキッド』のガーシュインのように同じ演目を観るために通った劇場はあるが。

と、前置きが長くなった今回の『ミュージックマン』はどうだったか。明るくのびのびと、実に楽しそうに詐欺師を演じるヒュー・ジャックマン。抑えた演技で陰キャの司書を演じながら、着実に笑いを取るサットン・フォスター。ふたりの息はそりゃもうピッタリで、ベテランの夫婦漫才を観ているようである。

英語の苦手な自分にとっても分かりやすい明快なストーリーで、終始ハッピーな気持ちで観ていることができた。

ベテランの演技、馴染みの劇場、そして俳優たちと観客との間の信頼感。すべてが揃い、抜群の安定感に満たされた幸せな空間。長く舞台を観てきてよかった、と心から感じられた最高に贅沢な時間を過ごさせてもらった。

『THE MUSIC MAN』公式サイト


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