見出し画像

博多座 AKBグループ特別公演「仁義なき戦い」

異色コラボというレベルではない、AKBグループメンバーによる『仁義なき戦い』の舞台化。しかしAKBの側から見れば『マジすか学園』をはじめ暴力的な世界観のコンテンツは数多くあり、さほどの驚きはない。特に、群像劇としての性格が強い『マジすか学園2』はまさに『仁義なき戦い』(第一部)を彷彿とさせる演出が多く、横山由依演じる「おたべ」は『仁義なき戦い 代理戦争・頂上作成』の武田のような冷静さと熱さを備えた秀逸なキャラクターだった。

逆に博多座のほうから見ても『時代劇版 101回目のプロポーズ』など数々の意表を突いたオリジナル作品を送り出していることを考えれば、さほど驚くには値しない。そして自主制作公演『めんたいぴりり』などの高い評判を聞くにつれ、自分としては大いに期待して会場へ向かった。

https://www.hakataza.co.jp/lineup/201911/akb48/index.php

画像1

この舞台は後半キャストの初日で、主演は岡田奈々。彼女の演技は昨年の「舞台版マジムリ学園」でも見ており、これがすこぶる良かったので後半組で観ることを即決。まあ田中美久が出ているせいでもあるが。

幕が上がると、まず舞台装置や照明の完成度の高さに圧倒される。戦後の混乱期の空気が、映画同様見事に表現されている。しかも、驚くほど映画版に忠実に展開していくストーリーを、まったく間延びさせずに支えている転換技術の見事なこと。そして脚本・演出もテンポよく映画の面白さを舞台上に再現してみせていた。『仁義なき戦い』を舞台化する、という目的は150%達成されていたと思う。

それと比較すると、AKBメンバーの演技はまだまだ練習不足の感じがぬぐえなかった。いや、彼女たちの努力がすさまじいものだっただろうことは想像できる。それは演技から伝わってきた。だが、脚本、演出、舞台装置などのトータルとしての完成度が極めて高かったので、ハードルが上がってしまったのだ。

その中で、ひときわ輝いていたのがやはり主演の岡田奈々。何がいいって、ちゃんと「第一部」の広能だということだ。

『仁義なき戦い』の映画はシリーズを通して11本あるが、やはり評価が高いのは笠原和夫が脚本を書いた最初の4本。この4本も物語的には第一部、第二部(広島死闘編)、第三部(代理戦争)+第四部(頂上作戦)の3つに分かれている。

そして主人公である広能のキャラクターは、第一部とそれ以外では微妙に異なる。第一部の広能は、もともと極道ではなかったこともあり、どこか純粋で、ひょうひょうとしたところがあるのが魅力だ。

その魅力的な広能を、岡田奈々は自分の中にしっかりと受け止め、それを新たに自分なりの広能として描き出していた。どんな仕事にも真摯に務め上げることで知られる彼女だが、この難しい仕事もきっちりこなしてきた。

第二部、というかフィナーレに当る「レビュー48」は、親不孝通りのショーパブで30年以上の歴史を持つ「あんみつ姫」が監修。以前からあんみつ姫の噂は聞いており、店の前を通ったことも何度かあるがまだ未見。今回のショーでは想像の斜め上を行く観客席とのインタラクションなどが取り入れられていたが、そこから想像するにオリジナルは相当面白いに違いない。これは行かなくては。

AKBグループの劇場公演や一部のコンサートではメンバーによる「お見送り」があるが、今回の博多座公演でも実施された。そして、抽選でその動画撮影権が当たってしまったのでありがたく撮影させていただきました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?