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『BEETLE JUICE』(ビートルジュース)  お化けは死なない コロナも何にもない

12/28 20:00
Marquis Theatre

【ニューヨーク2022⑤】
『ビートルジュース』といえば、ティム・バートン監督の出世作であり、後に『バットマン』でもタッグを組むことになるマイケル・キートン主演の映画である。その舞台化、ということで注目を集め、当初は評論家によって酷評され、それに反して観客の支持を集めちょっとしたブームになり、さらにウィンターガーデン劇場を『ミュージックマン』に明け渡すために打ち切りになり・・・と、とかく話題に事欠かない、『ビートルジュース・ザ・ミュージカル』。

打ち切りが決まったときはファンたちの嘆く声がネットにあふれていた。「どこか劇場はないのか!」「マーキース劇場が空いてるじゃないか!」という書き込みがあったのを覚えている。もしマーキース劇場で上演するなら、ぜひ観たいものだ、と思っていたら、何とそれが現実となって2022年春から復活上演。となれば観ないわけにはいかない。

マーキース劇場は言うまでもなく、自分の定宿であるマリオット・マーキースの中にある。泊まっているホテルの中でミュージカルが観られるなんて、温泉宿で歌謡ショーが観られるみたいでステキじゃないか。

『ミュージックマン』の記事で「同じ劇場で4作品目なんて他にない」と言ったが、考えたらこの劇場も4回目である。初めてこの劇場で観たのは1996年の『ビクター/ビクトリア』。主演は泣く子も黙るジュリー・アンドリュースである。彼女の現役の舞台を観られたことは数少ない自慢できる経験のひとつだ。

2回目はあのリッキー・マーチンがチェを演じて話題となった『エビータ』。

そして3回目はマジックショーだった。

今回もこの地の利を生かし、ぎりぎりまで部屋でくつろいでから、コートも着ずに劇場へ。休憩時間のトイレと水分補給はいったん部屋に戻って。うーん快適。

さて舞台版ビートルジュースはどうだったか。直前に、ひとつバッドニュースがあった。主演のアレックス・ブライトマンが、けがのために休演になってしまったのだ。彼の演技は『スクール・オブ・ロック』でも観ていたので、「再開」を楽しみにしていた。

とはいえこれはブロードウェイではよくあること。そして代役を務める役者も一流の実力者だ。この日主演を務めたのはウィル・ブラム。スクール・オブ・ロックやブック・オブ・モルモンにも出演していたので、彼もどこかで観ていたかもしれない。

その熱演を中心に、とにかくニギヤカなステージが繰り広げられる。あっと言わせる舞台装置と、この世ではない世界の住人たちを鮮やかに浮かび上がらせる美しい照明、とびきり明るい音楽。夜は墓場で運動会、とばかりに騒ぎまくるお化けたちのドタバタ劇である。

『& Juliet』同様、すべてを忘れさせてくれる勢いにあふれた作品だ。コロナ禍でうつむき加減になった人類に、今こそ必要なのはこういうパワフルなエンターテイメントである。

そして、リディア役のエリザベス・ティーターのキュートなこと!Netflixの『ウェンディーズ』を観ていても感じるように、ゴスロリっぽい衣装とメークは3倍増しで可愛く見せるのかもしれないが、彼女の一挙手一投足にいちいち目を奪われてしまう。この舞台が多くのリピーターを獲得した要因の一つが彼女の存在にあることは間違いなさそうだ。

これまた観たいし、日本公演もやってほしいなあ。

『BEETLE JUICE』公式サイト

https://beetlejuicebroadway.com/


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