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レビュー「エレファントカシマシアルバムレビュー」 第五回 エレファントカシマシ5

「エレファントカシマシ5」

ラバー・ソウルなアルバムジャケットが印象的な本作の背景には宮本の失恋があります。前作の「ペットのようなら飼ってもいい」と歌う一言は傑作を作るという決意や自信が感じとれました。実際、傑作だと思っていますが、傑作を作ったことの代償、恋人への配慮の無さが招いた不幸が失恋だったと思います。本作も傑作だと思っていますが、失恋をしたから傑作を作ったのか、失恋をしたのに傑作を作ったのか、どちらなのかは分かりませんが、いずれにしても、失恋がもたらすエネルギーや宮本の感性や感受性は相当なものだと思いました。また、失恋や恋の辛さは人を饒舌にさせるということも知っています。本作の曲の数々は歌詞や言葉がいっぱいですが、それも失恋の表れなのかもしれません。本作が発表された日比谷野外音楽堂のコンサートは当時では珍しくアンコールをやりました。宮本もいっぱい楽しげに喋っていましたが、失恋は人を饒舌にさせるということを再度、実感しました。とは言え、本作は失恋や恋の辛さだけではなくて、労働のストレスや憂鬱、余暇の退屈等、消極的な事柄がいっぱいです。また、「曙光」という前向きな言葉を落胆と深い溜息で締め括られるほど、徹底していますが、なんだか、笑い話にしてしまいたくなるようなムードも漂わせています。失恋の辛さからアルバムタイトルが付けられないなんて、今となっては笑えてしまうエピソードです。

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