見出し画像

こころの緊張と向き合う方法

毎年開催されるワールドカップ

けん玉には毎年日本で開催されるワールドカップがあります。
人前でけん玉の技を成功させるのは緊張しますが、それを競技化したものの世界大会のうち、よりオープンなルールでの大会が「けん玉ワールドカップ(KWC)」になります。

『いつもはできるけど、いざとなったらできない』

こんな経験は様々な場面で、誰しも経験があると思います。
けん玉はそれを克服して結果を出す競技。緊張感とうまく付き合う方法が不可欠な競技なのです。

KWC2023

KWCの歴史=トリック難度向上の歴史

2014年から開催されているKWCの課題トリックは年々難易度が上がっています。たとえば12あるレベル設定のうち、今年(2024年)のトリックリストの
レベル5 
にある

デンマーク一周
(大皿→けんフリップ小皿→さか落とし→はやて中皿→ダウンスパイク)

という技は、初開催の10年前(2014年)
レベル7
だったのです。

開催後数年はアメリカ人選手の優勝が続きました。振り返れば、開催当時(2014年)の世界のけん玉難易度と日本で認識していたけん玉の難易度には逆格差があったのです。つまり、日本人の想定よりも世界の愛好家が考えるKENDAMAは、世界大会ならばより難しいトリックを成功させるべきものでした。
つまり初開催当時のレベル設定は、世界のレベルからすると簡単すぎたのです。

そんな難易度設定も徐々に修正され、年々増える高難度トリックもプラスされた近年になると、1975年から続く日本けん玉協会の教室に通い
ミスしないけん玉
の教えを受けながら、KWCの高難度トリックにも年少期から触れてきて、緊張感との付き合い方に慣れている
KWCネイティブ世代
が、中高生になって選手として台頭し、日本人選手の優勝が続いています。

初心者も参加できる大会

KWCは、求められる難易度の設定を自分でするので、今年けん玉をはじめたばかりの初心者でも参加できるオープン大会です。マラソン大会で言うサブシックス(6時間以内の完走)に例えるなら、自分で設定したトリック10種を制限時間内に全部成功させる「フルマーク」を目指すことも十分楽しいものです。
しかし、前述した
「緊張すると本来のチカラが出にくい」
という事実は変わりませんので、その対策はある程度しなければなりません。そして、この系統の競技全般で、より良い結果を残す方法には共通点が存在すると私は感じました。

KWC2023女性の部優勝 NOWAちゃん(と弟のケティくん)と

より良い結果を残すには

私はけん玉の競技に出る前までは、射撃競技の大会によく出ていました。それなりの結果は出ていて(ある大会では優勝しています)、けん玉でも昨年のKWCでは50歳代部門で総合1位(3回目)になりました。
その経験から、本番までのステップを5つに分けて、私がとっている練習方法と心構えを列記します。

① 練習しすぎない
真面目な人ほど、練習して上手になることが本番での緊張感を緩和する方法と考えるでしょう。でも、私の経験上はそうでもない。むしろ、練習量が多い時は「奇跡」も生まれません。奇跡が起こせるくらいのこころの余裕が必要です。
練習でできることは「足りないスキルの向上」や「より良い方法の発見」であって、こころの余裕を生むことはほぼできないと考えるべきです。むしろ、大会2ヶ月前にトリックリストが発表されるKWCに至っては、スキル向上もそれほどできないでしょう。
少なくとも大会まであと1ヶ月の今は、現時点でのスキルでどれだけ工夫すれば良いスコアを出せるかを探る時期に入っています。
KWC.にはトリックごとに固有の特徴があります。

・ミスした後のリスタート時間
・成功までの動作数(手数)
・緊張すると成功させづらいか否か

それを見極めて自覚して、チャレンジする順番を変えたり心の準備をするわけです。
もともと週末の1日くらいしか練習していない私ですが、そのペースは今もそれほど変わっていません。
トリックリストを作って、固有の特徴を確認→リスト修正だけなら、1日で終わるからです。
ただし、リストの作り方と修正には以下のようなコツがあります。

② 目標は低く、物足りなさを醸成させてから高く
KWCの場合、自分で設定した5トリック2ラウンド、合計10トリックを制限時間内に成功させるという目標があります。
日本人は勤勉なので「目標は高く」というのが常態化しています。そこが緊張感を増大させる落とし穴です。
目標は低く設定する。たとえば、3分間で5トリック成功させねばならないのなら、普段の練習では2分で成功できるトリックを選ぶ。それで練習をある程度していて、成功率が安定してくると物足りない気分になってきます。
こんなレベルだと後悔しそう
そんな思いが芽生えた時に初めて、1トリックだけレベルの高いトリックに変えて、少し挑戦してみるのです。つまり、実際は錯覚なのですが
ほどほどに無理していない自分
をキープすることが、本番で緊張を増大させないためには大事です。

③ できなくてあたりまえ
冒頭で書いたように、いざとなったらできないなんて、あたりまえなのです。だからできない時のことを常にイメージしておく。大事なのは前向きに数字でイメージすることです。
たとえば、KWC予選は1ラウンド3分間です。バックアップトリックを入れると1ラウンド6トリックに挑戦する可能性があります。時間にすると1トリックにつき30秒。トリックごとにミスするまでの時間はおよそ5〜8秒。5秒なら5回。8秒なら3回トライできます。その回数をなんとなく体感できているかが重要なのです。
・5回やってできなかったらあきらめて次へ
・残った時間で再トライしたら1発成功するかもしれないし
そのくらいの前向きなイメージを数字で意識していれば、少し落ち着いて挑戦できると思います。

④ 緊張は良いコンディションのサイン
これは射撃競技の師匠に言われた言葉です。
私が後輩に緊張感を無くす話として、よく前述の「できなくてあたりまえ」を話していて、それを近くで聞いていた師匠が言ったのです。
「しかしまったく緊張しない選手は勝てないよ」
そのとおり。
緊張感ゼロでは、こころがうわついて身に入らない。やはり良い結果は出ません。しかしその事実を逆手にとれば、緊張している自分を自覚したら、良い状況ととらえることもできます。

⑤ 根拠のない自信を持つ
これは別コラムでも書きましたが、けん玉や緊張感に負けそうな場面で一番大事なマインドはコレ。
根拠のない理論→根拠のない自信
だと思っています。

・やっぱり天才かも
・今日は調子が良い
・いま失敗したから本番は大丈夫
・いま成功したから本番も大丈夫
・眠くてボーッとしてるから大して緊張せずに済む・・etc

とにかく自信をもつ。それを自分の頭で言葉にする。時には鏡の前の自分に微笑みながら言う。
ダメな時も前向きな状況へと変換して言葉にする。
それでもダメなら、意固地になって冷静さを失うよりはマシなので、あきらめた自分を演出します。
「次もダメだろうな・・etc」→偶然の奇跡を待つ。
とにかく、自分を失わない程度に成功への糸口をキープすることを優先して
主人公気分を楽しむ
のが肝心です。

おわりに

大人になって人前で緊張する機会が少ない方に、とくにKWC参加をお勧めしています。
この緊張感に勝てた時は、本当に楽しいです。
参加エントリーは今からでも間に合います。zoomでのオンライン参加もできます。
(エントリーは2024年6月23日まで)

もし、広島県廿日市市のKWC会場に行けるなら、7月27日(予選)、28日(決勝)を、ぜひ体験してください。観覧は無料です。
世界各国から緊張感を楽しむけん玉のプロや猛者たちだけじゃなく、初心者さんも集まってきます。けん玉人口はまだまだ少ないですから、すぐに友達もできます。そして、会場では日本人のほとんどが知らない、エキサイティングなけん玉の今がここにあります。

私も広島の会場におりますので、見かけた人はお声掛けいただけると嬉しいですww

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?