コロナウイルスが日本経済に与えた影響③

先日、日本政府はコロナウイルス感染拡大防止のために緊急事態宣言を出し、個人や企業に 対して莫大な経済支援をすることを決めました。その「事業規模」は 108 兆円です。勘違い してほしくないのは、コロナ関連の対策で新たに 108 兆円を社会に配るということではないのです。

事業規模とは、簡単に言うと将来の経済回復を前提とし、どれだけのお金が動い ていくかを金額で表したものです。今年度の当初予算一般会計総額(今年度はこのくらいの お金で経済を動かしていきますよという額)が約 102 兆円な訳ですから、新たに 108 兆円 を予算に追加することとなったら、経済が破綻することになりますね。

実際に、コロナ関連で予算に追加された額は 16 兆 8057 億円となっています。政府は「17兆円弱の金額を新たに社会に配れば、医療や民間の企業も経済的に安定して回復し、最終的 に 108 兆円くらいのお金のやりとりが生まれるのではないか」と見ている訳です。ちなみ に、なぜ 17 兆円弱の追加でこんなに効果が見られるのかは、以前に書いたコラム「お金の 増え方の仕組み」の方に少しヒントを出していますので、良かったらそちらもご覧ください。


さて、17 兆円弱のお金はどこからきたのでしょう?大打撃を受けている私たち個人や企業 などへの増税はもってのほかですし、ほかの国から易々と借りることのできる額でもあり ません。政府は、今回の追加分をすべて国債の新規発行によって賄うとしています。今現在、歳入の約3割もが国債であることを考えれば、今回の決断はなかなかのものです。 

この政策によって、果たしてどのくらい経済が回復するかを判断するにはまだまだ時間が必要です。目の前の状況に慌てることなく、落ち着いて得られたデータを分析していきまし ょう。

ここで、先ほど書いた国債、ひいては債券について少し説明したいと思います。経済学では よく「コンソル債」というものを考えます。この債券は無限期間一定額の償還(同じ額が手 元に入ってくる仕組み)があるものです。 「それならば、ずっとその債券を持っていたらめ ちゃめちゃ儲かるじゃん!!」と思った人もいるでしょう。ですが、実際にそんなことは起 こりません。

ここには「割引現在価値」という考え方が潜んでいます。式は省略しますが、 年を経るごとに手元に入るお金の価値は、額面が同じであっても減少します。つまり、無限期先の償還額の価値は、限りなく0に近いのです。これより、コンソル債の価格は「手元に 入るお金の額/利子率」で表されます。 (無限等比級数の考え方を使っています。 )つまりは、 お金を借りる側はあたかも貸す側が得をするように見せかけて賢く借りているということ です。 

今では、コンソル債はあまり見られないようですが、計算のしやすさからこれが経済学で使 われます。気になった方は他の種類の債券も調べてみてください!!

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