好きだった曲たちとの再会

中学校2年の頃、担任の影響から洋楽ばっかり聴いていた自分は、定番のビートルズ、マドンナ、ビリー・ジョエルからいつの間にかR&B沼にハマってしまい、高校1年の頃からは、心の中はバリバリのBボーイと化していた。
都会と違い情報が手に入りづらい分、ラジオやテレビからの僅かな情報を繰り返し反芻し、bmrは我がバイブルであった。

深夜帯にやっていたTVKの「Billboard TOP40」を毎週ビデオに撮り、はがきを出したりしたのだが、結局自分は読まれたこともなかった気がする。でも弟はテレホンカードをもらっていたのが悔しかった。

95年前後、Mariah Carryの「Always be my baby」に切なさを覚えたり、Brandyの「Sitting in my room」に心おどらせて、テレビの前で一緒に踊っていたりした。今考えたらヤバい人だけど。でもそのお陰で、首は人より動くし、リズムも結構取れる方だと思う。さまざまな曲がある中で、今まで聞いていたものとはちょっと違う、大人の雰囲気の曲で、かっこいいなぁと思ったのがKeith Sweatの「Twisted」だ。

背後で一緒に歌っている Kut Kloseの小柳ルミ子似のメンバーの表情も好きだし、この独特のヌルヌルした声もなんだから癖になった。このアルバムから入ったので、ニュージャックスウィングの頃は全然知らなかった。色々聞いてみたけど、彼の作品の中ではセルフタイトルである「Keith Sweat」はNobodyはじめ、Ron Isleyとの曲や後にLSGとして組むメンバーとの曲など全体的に大人の色気に満ち溢れすぎていて、最高の名盤だと思う。Nobodyの1曲前のイントロの部分とかもかっこいいし。

Youtubeでいろんなビデオが見れるような時代となり、久々にTwistedを見てみた。あの頃はなんの疑いもなくかっこいい〜なんて思いながら一緒にリズムを取ってみていたんだけれど、大人になって少し引いた感じで見てみると・・。

刑事役のKeithが大物の警備だろうかパーティ海上のような場所にいると、色気ムンムンで誘ってくる女が一人。近寄ってきて彼の耳元で何かをささやいた。その後主賓らしいアジア人の男がトイレで覆面の暴漢に襲われる映像が流れる。Keithはテーブルで別の女性と食事中。そんなパーティ会場とおって覆面の暴漢が逃げるところを偶然にも目撃。暴漢はゆうゆうと逃げ切り、路地裏に止めてあった車に乗り込みマスクを外す。それはさきほどのムンムン女なのであった。この時点でよくわからなくなってくる。全身黒ずくめの姿の犯人は、なぜ明るいパーティ会場をあえて横切ったのだろう。

犯行現場を調べるKeith。そこにはあの彼女がしていたネックレスが落ちていた。それが決定打となったのか、あっけなく彼女は自宅で逮捕される。(どうやって調べたのか。前からの知り合いだったのか・・)Keithをみてハッとしたような評定をする彼女(まさか刑事だったなんて・・・?)
Keithは車で彼女をパトカーではなく、自家用車で護送するが、突然車の前に現れた買い物袋を落とした婦人の手伝いをする隙に、彼女はまんまと逃げ出してしまう。運転席に戻って後ろを振り向くKeith。ここで始めて犯人がいないことに築いてDamn!の表情。(気づくのが遅すぎる)
一番最初のシーンで耳打ちをしていたシーンがあったので、実は彼と彼女は最初からこの犯罪を計画していたのではと思ってしまったが、このシーンでそうではなかったことが実証される。

その後Keithが自宅に帰ると、そこにはなんとあの彼女が!どうやって彼の家がわかったのだろう。手錠を指にかけ、「バーカ。こんな手錠なんてちょろいんだよ」と言わんばかりの表情でKeithを見つめる。そして彼を押し倒し、服を脱がせてくるのであった。まんざらではないKeith。
そして次の瞬間、電話のベルが鳴る。逃走した彼女が見つかったようなのだ。
ん?じゃあ、ついさっきのシーンは何だったのだろうか。
おそらく、彼の妄想だったのだろう。さっきのシーンいる?

現場に駆けつけるとパトカーに囲まれながら、彼女ははしごを登る。
んー。
逃げるときにはしご登るかなぁ・・・。現場に到着したKeithの静止も虚しく、銃声がなる。
彼女ははしごに手を絡めながら絶命をしていたのだった・・・。


なんだか釈然としない。映像のクオリティが良いし、俳優もそれぞれ熱演している。お金もかかっていそうなビデオなだけにストーリーがなんが陳腐でいただけない。思い返してみると、この頃はHype WilliamsだったりPVにめちゃくちゃお金がかけられていて、見るのが本当に楽しかったなぁ。
そんなことはさておき、おかしなビデオではあるのだけれども、今見てもなんだかやっぱりかっこいい。

少し後にはこんな犯罪系ビデオもあった。
Brownstoneの「5Miles to empty」。

歌も曲も最高にかっこよい。どこかアジアンチックなMaxeeの表情も素敵だったし、コーラスの重厚感もたまらない。En Vogueもそうだけど、こんな風にカチッとそろって計算されたコーラスって本当にきもちよい。3:00くらいのところで画面に歩み寄ってくるシーンが一番好き。

カジノで遊び大人たちのシーンはがつづいていくんだけど、突然警察が押し寄せる。違法賭博がしょっぴかれたのだろうか。途中アフロの面を被ったおばさんがでてくるんだけど、この人は潜入していた捜査官なのかなぁ。確かなことはわからないままで終わっていくんだけど、こうやってつづけてみると、Twistedって結構説明過多なビデオだったんだなと気づく。5miles to emptyくらいさらっとだとちょうどいいのかもしれない。なんだか状況はつかめないけど、なんだかおしゃれ。大人。Brownstoneの妖しい色気も際立っている。

Totalの「Kissing you」は犯罪者ではないけれど、冒頭に警察がでてくる事件物。
冒頭のTotalはセピア調の映像の中、まるで天使のようにビルの上で歌う。真逆の色合いの青いプールの中には溺死したような男。冒頭でこの男は息を吹き返したのか、ゆっくり泳ぎだす。このタイミングが冒頭ののサビの終わりなのがかっこいい。
そして最初のバースを歌うKeishaの表情。これがいい。この人は表情がとても豊かで喜怒哀楽をコロコロと顔で表現できる。ドラマチックでセクシーで、ハードボイルドなPamとは対照的。全編を通して優しいコーラスが続き、Kimaがアクセントで各所で声を乗せている。力強いパートを特作らないスムースで耳に馴染む大人の曲。傘を指して歌うパートの美しさたるや。行き交う車や服装からクラシックな雰囲気を出している。
プールを出て、街をさまよい、雨を喜び、屋上でキスを交わし、最後男は、海に向かって歩いていくシーンで終わる。
なんて詩的で美しいビデオだろうか。昔はこんな事思わなかったけど、見返してみるとそう思う。TotalがBadboyRecord所属だったなとおもうと、それも感慨深い。

あの頃の自分には大人過ぎるものばっかりだったと思うけど、本当に何度も何度も聞いた。この頃は輸入盤のCDが沢山出回っていて、富山駅でNasのIt was writtenとBone-Thugs-N Hermonyを買ったりした。封を開けた時に香る外国の匂いに興奮し、手に入れたSourceマガジンを切り抜いてスクラップしたり、NHKでやっていたERなんかも見たりして、アメリカにたいする憧れを膨らませた高校時代だった。どの曲を聞いてもあの頃のワクワクするような時代を思い出す。

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