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建築学生の生きる道

例の建築家 手塚貴晴さんのFB炎上に思うところあり、少し思うところを書いてみようと思います。
まずは、原文さらっとご覧ください。さらっとでいいです。

建築家手塚FB1

最近建築学科を出た優秀な学生が、少々給料が高いからということで、建築設計以外の職業を選ぶ事例が多い。しかし、一歩踏みとどまって考えてほしい。建築家は頑張れば必ず良いことがある職業だから。

原文はダラダラと書かれているのですが、内容的にはここに尽きるかなと思います。
優秀な若者たちが建築家という道を選ばないということに憂いているわけですが、それを引き留めるためのメッセージが

建築家は頑張れば必ず良いことがある職業だから

と、説いているわけです。
で?良いことってそれは何??具体的に教えてください。先生!
と、言いたいところですが、引き留められるほど具体的に魅力ある『良いこと』って示せないということなんですね、それが書かれていないということはつまり。

職業として選択して『良いこと』があるのは建築家だけに得られる特権的なものではなくて、それぞれの職業で『良いこと』はあるものではないかなと思います。それは、それぞれの職業をやってみて実感し得るものですが、どのような職業でも少なからずそういうことがあるだろうことは想像に容易ですよね。
ということで、この引き留めるためのメッセージが全然響いてない。。
という残念なモノになってしまってます。

もう1つ引っ掛かるのは、建築家先生は、建築設計が建築分野の仕事として上位に位置してると勘違いしている節がありますね。
建築学科に入学した頃の学生たちは、具体的にイメージできて目に触れることも多い『建築家』という生き方に憧れて、イメージして建築の道に入ってきた人も多いのは事実かなと思います。
そして、いわゆるアトリエ系の建築家にならなくても建築設計を仕事としたいなら組織設計事務所でもゼネコンでも建築設計者になる道が見えてきて、それぞれの道を選んでいくことになります。

でも、建築設計の仕事と言っても、アトリエ系・組織設計事務所・ゼネコンその他ハウスメーカーなどでそれぞれ扱う建築に特徴が出てきますよね。
学生時代の卒業設計などで題材にするような大規模で都市的な問題点を突くような案件は、それこそゼネコンなどの方が都市開発と絡めて扱える分野だったりしますし、学生の設計提案で力を入れているコンセプトの部分に焦点を当てると、設計者の仕事範疇でなかったりします。
〇〇不動産などのデベロッパーと言われる人たちがそのあたりを考え、具体的な建物について設計者が担当するという分業体制になるので、学生時代に1番力を入れて取り組んできたことがそういうコンセプト的な提案だったとすると、それを生きる道としてやりたければ、建築設計の道に進んではダメなのです。

つまりは、建築設計を主専攻として学んできた学生でも建築設計が将来、1番やりたい仕事というわけでない場合も多く、少々給料が高いからという理由で建築設計以外の職業を選んでるという認識がまずズレてると言えます。
まさにズレてる、ということなのかなと思いますね。

デベロッパー的なアプローチでなく、純粋に建築設計を極めたいという場合においても、対象としたい規模でまず進むべき道が分かれてくると思います。
何万㎡規模となる複合施設だったりすると、まずは組織設計事務所や大手ゼネコンがその分野の仕事をやってることが多いです。本当に極々一握りの著名建築家事務所でもない限りはその規模の案件など回ってこないわけです。
そういう設計がしたいのに、一生のうちにできない確率の高いアトリエ系を選ぶほど今どきの建築学生はバカではありません。

そうして、建築学生なりに、情報を集め、自分のやりたい仕事ができる環境を選んでいるのが本当のところで、少々給料が高いからという理由では選ぶ事例はそもそも多いわけではないのです。

そして、建築に関わる仕事は建築設計だけではもちろんないし、それ以外にも本当におもしろいと思える仕事はいくらでもあります。
建築家のすばらしい作品を支えているのは実は構造設計者だったり、設備エンジニアだったりすることも多いし、最近ではデジタルデザインの力によってはじめて実現しているような作品もあります。
デジタルデザインのできることから発想されて建築デザインとなるものを考えれば建築家とデジタルデザインのプログラマーとでどっちがどうということもわからなくなります。
建築家の想像力がまずあり、それを技術的にどのように形にするかというエンジニアが後追いする時代は大昔に終わってるのです。建築家もその他のエンジニアも、もっと大きな俯瞰的な視点からアプローチするデベロッパーも、関わる人たちはそれぞれの立ち位置から対等に関わればよくて、『建築家』をはじめとした建築設計も1つの選択肢でしかないのです。人それぞれにこれだと思える仕事を見つけて、進むことが大事かなと思います。

実際にそこそこブラックな環境でも働いてみて、家族を持つなどのライフスタイルの変化も経験すると、労働環境やそこから得られる経験、賃金も含めてできるだけ納得できる環境で働けることが1番です。

ちなみに、私は学生時代からいろいろと思うところがあり、紆余曲折あって意匠設計者の仕事を生業に始めたのですが、今では意匠設計者を引退し、『設計の仕方を設計する』というテーマのもと建築設計を中心とした周辺の技術開発に興味があり、取り組んでいます。
まぁ、設計デザインセンスがなかったということもありますが、それぞれに興味を持って本気で取り組めるところで生きていくのがよいかなと思います。ぜひそんな心から興味を持って本気で取り組めるものを見つけてください。

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