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0435 読書感想”その日のまえに”重松清

僕たちは「その日」に向かって生きてきた――。昨日までの、そして、明日からも続くはずの毎日を不意に断ち切る家族の死。消えゆく命を前にして、いったい何ができるのだろうか…。死にゆく妻を静かに見送る父と子らを中心に、それぞれのなかにある生と死、そして日常のなかにある幸せの意味を見つめる連作短編集。

概要(Amazon)

数多の生き死にを題材にした作品がある。ワンパターンかつ、やや感動の押し売りのようで読み進むことが難しいことがある。

“その日の前に”は、少し異なる。人が亡くなることに対する悲しみだけに焦点をあてたものではないと感じた。静かに過ぎる余命のタイムリミットの中で、逝く人と残される人の行動と心理描写のリアリティ。生きることと死ぬこと、その意味を考えさせられる。

4つの話が、自然に交差していく点も、秀逸でした。ときどきこういった小説を手にして、自分を省みて、残りの人生をどう生きるか?を考えさせてもらうことは必要。

また、”誰かが亡くなっても、日常は驚くほど当たり前のように繰り返されること”—それを残酷ととらえるか、慈悲ととらえるか。実際はどんな感慨を抱くのだろうか。

故安倍晋三さんへの菅元首相の追悼の辞を思い出した。”季節は歩みを進めます。あなたという人がいないのに時は過ぎる。無情にも過ぎていくことに私はいまだに許せないものを覚えます”

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