米国株マーケット考察 2021.1.22

マーケットサマリー

米国株式相場はまちまち。ダウ平均は12.37ドル安の31176.01ドル、ナスダックは73.67ポイント高の13530.91ポイントで取引を終了しました。ニューヨーク証券取引所の出来高は前日比1億1434万株減の9億2561万株でした。

バイデン大統領が掲げる1兆9000億ドル規模の経済対策によって、新型コロナウイルスの流行で打撃を受けた米経済が下支えされるとの期待が、引き続き株価を支援。ダウは一時3万1272.22ドルを付け、取引時間中の史上最高値を更新しました。

高値警戒感が漂う中で、この日は手掛かり材料も不足。ダウは終日、プラス圏とマイナス圏を行き来する方向感の乏しい展開となりました。

昨日発表された経済指標は市場にポジティブなものでした。
(1) 最新週の新規失業保険申請は90万件( 先週92万6000件)と、依然高止まりしているものの、3週ぶりに改善。市場予想(91万件)も下回りました。
(2) 1月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は26.5で予想(11.8)を大幅に上回りました。
(3) 12月の住宅着工件数は年率換算で前月比5.8%増の166万9000戸と、市場予想(156万戸)を上回り、2006年9月以来の高水準となりました。

然し乍ら、新型コロナウイルス感染の終息に目処が立たたず世界的なワクチン普及の遅れで経済回復への懸念もくすぶり、引けにかけ下落に転じました。先日のネットフリックスの決算で再びテクノロジーなどの巣篭もり銘柄が脚光を浴びた面もあり、逆に米ダウを中心とするバリュー株は頭が重かったです。来週に決算発表を控えているアップル、フェイスブック、マイクロソフトが今週既にそれぞれ7.7%、 8.6%、5.8%上昇しています。

企業決算は本格化していますが、ネガティブな内容は少なく、無難な印象です。S&P500企業の2020年の利益は15%の減益となるものの、2021年は24%増加するとの予想も出ています。

それ故に、株式市場の焦点は企業決算よりも引き続きコロナ問題に左右されており、今後の展開もワクチン配布のペース次第というこれまでと同じ問題に戻ってきてしまっているようです。

そういう意味ではセクターローテーションにはまだ時間がかかり、第1・四半期のマーケットリーダーは選別できない状況にあります。

バイデン大統領はワクチン接種のペース加速、地方政府へのより多くの資金提供、また、国防生産法を使用し、多くのマスクと機器を作る10の大統領命令を発表しました。バイデン大統領がワクチン接種の加速を狙った対策を打ち出したことで、株式市場は今年下期の景気回復への期待を強めているようです。

用語解説


-新規失業保険申請件数ー失業者が失業保険給付を始めて申請した件数を集計し、季節調整を加え発表するもの。本指標は景気の動向に敏感に反応するといわれており、景気先行指数として用いられています。米労働省雇用統計局が毎週集計し、集計期間の翌木曜日に発表。米雇用統計の基準日である12日を含む週の結果は、それ以外の期間よりも注目度が高いです。

-フィラデルフィア連銀製造業景況指数ーペンシルベニア州の一部、ニュージャージー州、デラウェア州を管轄区域とする地区連邦銀行であるフィラデルフィア連銀が、管轄区域の製造業の景況感や経済活動状況を指数化したもの。新規受注、在庫、出荷、支払い価格、雇用などの項目について、一カ月前との比較と、六カ月後の予想を「増加または好転」「変わらず」「減少または悪化」の中から選択する形で調査します。分岐点はゼロ、プラスが好況、マイナスが不況となります。地区的にも近いニューヨーク連銀製造業景気指数と同様の指標で、毎月15日に発表される同指標の後、毎月第3木曜日に発表されます。両指標は全米をカバーし、より注目度の高いISM製造業景気指数の先行指標としても注目されてます。

-住宅着工・着工許可件数ー米商務省センサス局が米国内で一月に建設された新築住宅戸数を調査して発表する指標。住宅建設は季節ごとのばらつきが大きいため、調整をかけたうえで年率換算して発表されます。一戸建てと集合住宅に分けて、北東部、中西部、南部、西部の地区ごとに集計されます。

同時に発表される住宅建設許可件数は、建設にあたって地方自治体への許可申請が必要な地域における許可発行件数を調査したもの。実際の着工に先駆けて許可申請が実施されるため、住宅着工件数の先行指標となります。

住宅の購入に伴って、家具・家電などの耐久消費財の購入が行われることが多く、個人消費への波及効果が大きいことから注目されています。

雇用市場の動向や、消費者の景気への信頼感などとの相関がみられます。

-バリュー株ーバリュー株とは、売り上げや利益の成長がさほど期待できないなどの理由から、現時点の株価が本来的な企業価値を考慮した水準に比べて安いと考えられる株式のことで、「割安株」とも呼ばれます。知名度の低い企業が多いことから、堅実経営を続けているような場合でも、投資家の人気は低いのが一般的です。値動きも値幅も地味になりがちで、いったん売り込まれたまま放置されているケースも目立ちます。

-セクターローテーションーこれから儲かりそうな業種の銘柄に投資する対象を切り替えていく投資戦略のことです。景気循環において、景気が最も悪化している状態にはインフラ関連の銘柄の株価が伸びやすいですが、より景気が改善した際には他のセクターの業種の銘柄の株価は上がりやすい傾向があります。注意点としてよく挙げられることは、同じセクターの中でも銘柄によって業績や性格が異なるため注意が必要とされています。

立沢賢一とは


元HSBC証券社長。
会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。
・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi

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