米国株マーケット考察 2020.11.6

マーケットサマリー

米国株式市場は4日続伸。ダウ工業株30種平均は前日終値比542.52ドル高の2万8390.18ドルで終了。ナスダック総合指数は300.15ポイント高の1万1890.93で引けました。米ダウとS&P 500は、1982年以来の4日間連続1%超の上昇してます。

民主党のバイデン候補が次期大統領に就任しそうな情勢ですが、トランプ陣営からは不正投票への疑念が示され、最高裁への上訴など法的措置を検討しており法廷闘争のリスクも強まっています。

議会選挙の開票も続いており、下院では民主党が過半数確保がほぼ確実な情勢ですが、上院は拮抗していますが、現段階では共和党が過半数を維持しそうです。市場の一部が期待していたホワイトハウスも議会も民主党圧勝というブルーウェイブのシナリオは崩れそうです。

この状況を受け株式市場はいいとこ取りして、楽観的な雰囲気に包まれています。新政権はねじれ議会により何も決められないですが、それは寧ろ株式市場にプラスになると認識している様です。

つまり、ねじれ議会により、民主党が提示している大胆な財政出動は容易に打ち出せないものの、結果的にはある程度の規模は講じられ、また、上院が共和党であれば、民主党が主張している巨大IT企業をはじめとした積極的な規制導入の可能性は弱くなり、税制面でも極端な増税は回避できるのではないかとの期待もあるのです。バイデン氏の名前がどこにも出てこないのが特徴で、如何に彼に期待していないかが窺えます。

引け後に発表されました米連邦公開市場委員会(FOMC)声明を要約しますと、
-FRBはこの厳しい局面で米経済を支援するためにあらゆる手段を行使し、雇用最大化と物価安定という2つの責務(デュアル・マンデート)を促進することに全力で取り組む
-経済活動と雇用はここ数カ月で持ち直し、住宅市場は完全に回復したが、労働市場の回復は鈍った
-最近のコロナ感染拡大は特に懸念され、経済見通しは極めて不透明で、短期的に経済活動、雇用、インフレの重しとなり、中期的な経済見通しに著しいリスクをもたらすだろう
-FRBは雇用最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指し、この長期的な目標を下回るインフレ率が続いているため、委員会は当面、2%をやや上回る程度のインフレ率の達成を目指す。労働市場の状況が委員会の最大雇用の評価に一致する水準に達し、インフレ率が2%に上昇して当面の間2%をやや超えるような軌道に乗るまで、この目標誘導レンジを維持することが適切だと予想する=平均インフレ率目標は維持
-追加の金融・財政支援が必要になる公算が大きい
というもので特段新しい内容は出てませんでしたが、頼みの綱のFRB的安心感のある声明でした。

用語解説


-平均インフレ率目標ー「平均インフレ率目標」は、完全雇用と物価の安定性という議会からFRBへのデュアルマンデート(2つの使命)の観点から見ても適切な政策と言えます。FRBが物価の安定性を維持しようとする場合、どの目標水準が安定的かを特定しなければならないことは明白だからです。但し、米国は現在ゼロ金利制約に近い金利環境にありますから、景気を刺激するための金利の一段の低下が不可能である環境に居ますから、万が一景気後退が発生すれば、FRBにとってマンデートを達成することは困難になります。

立沢 賢一(たつざわ けんいち)
元HSBC証券社長。
会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。

・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi

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