米国株マーケット考察 2020.12.17

マーケットサマリー

米国株式相場は反落。ダウ工業株30種平均は前日終値比44.77ドル安の3万0154.54ドルで終了。ナスダック総合指数は63.13ポイント高の1万2658.19と、終値の最高値を更新して引けました。ニューヨーク証券取引所の出来高は前日比3241万株増の9億9524万株でした。

11月の米国小売売上高は前月比1.1%減(予想:0.3%減)と、2カ月連続でマイナスとなった。感染拡大による行動制限措置の影響が個人消費に出ていることや所得の減少が重しとなったとみられ、パンデミック(世界的大流行)が引き起こした景気後退(リセッション)からの経済回復が鈍化している兆候が増しています。

コロナ感染者数が依然ピーク近辺にあり、州・地方政府がここ数週間に制限措置を強化したことを踏まえますと、小売売上高は今後も更に弱含むと予想できます。

昨日の相場を支える要因となりましたのは、米追加経済支援策をめぐる与野党協議の合意期待です。

米追加経済支援策は数ヶ月に及ぶ懸案事項になっていましたが、ペロシ米下院議長(民主党)やマコネル上院院内総務(共和党)など議会指導部と、ムニューシン米財務長官を含めて協議が行われ、やっと前進が見られたようです。場合によっては24時間以内にも合意が見られるという噂も市場には出ています。

米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明発表では、FRBにより追加策はなく、市場に大きなインパクトはありませんでした。

一部で期待されていました資産購入の構成やペースに変更がなく、月間1200億ドル相当の債券購入は今後も継続することや、FOMCメンバーの金利見通しは2023年まで利上げなしを再確認しているに留まりました。

用語解説


-米国小売売上高ー米国内で販売されている小売業・サービス業の売上高を集計したもの。米国の個人消費の動向を表しています。米国は個人消費がGDPの約7割を占めており、他の先進国より高い傾向にあります。その為、個人消費の動向が景気全体に与える影響も大きいため、注目度の高い指標となっています。

全体に占める売上高の割合が最も大きい「自動車及び同部品」部門は、販売店のセールなど景気と直接の関係がない要因による月ごとのブレが大きいこともあり、自動車を除いたコア部分の注目度が高いです。

-FOMCーFederal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)の略で、アメリカの金融政策を決定する会合のことです。日本では、「日銀金融政策決定会合」で金融政策を決定していますが、それに当たるものがFOMCです。

FOMCは年に8回開催され、現在の景況判断と政策金利(FF金利)の上げ下げなどの方針が発表されます。その結果が市場の予想とは違った場合には、株式市場や為替レートが大きく変動することがあり、世界の金融マーケットにも大きな影響を及ぼします。

FOMCでは政策金利の利上げや利下げの判断をしています。その発表は世界のマーケットに与える影響が大きいのですが、市場関係者の予想との乖離があるかないかで、大きく違ってきます。例えば市場が0.1%の利下げを予想しているときに0.2%の利下げが行われると、予想以上の結果ということで株価に影響が出たりするのです。


立沢 賢一(たつざわ けんいち)とは


元HSBC証券社長。
会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。
・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi

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