米国株マーケット考察 2021.2.24

マーケットサマリー

米国株式市場はまちまち。ダウ平均は15.66ドル高の31537.35ドル、ナスダックは67.85ポイント安の13465.20で取引を終了しました。
ニューヨーク証券取引所の出来高は前日比1億2776万株増の13億3512万株。

連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の半期に一度の上院議会証言を控え金融緩和縮小への警戒感に寄り付き後、割高感が意識されやすいハイテク株の売りが加速し、ナスダックは一時4%近く急落しました。

パウエルFRB議長は昨日、米議会で証言し、米景気改善に伴う物価上昇リスクを否定し、量的緩和策の早期縮小懸念の払拭に努めましたが、その内容に目新しいものはありませんでした。

債券利回りは高値圏でのもみあいに終始しており、FRBが平均インフレ率目標からイールドカーブコントロールへの移行に躊躇している以上、利回り上昇は当面続くのではないかと思われます。

ハイテク株などのグロース株は債券利回り上昇を受け、割高感から売り圧力に押されてますが、今後の決算の内容によっては、割高感があるという解釈にも変化が見られる可能性はあります。

一方で、景気循環株は企業収益上昇の可能性と景気回復の楽観主義から年内は順調に推移するという見方も多く聴かれるようになってきています。

用語解説


--平均インフレ率目標ー「平均インフレ率目標」は、完全雇用と物価の安定性という議会からFRBへのデュアルマンデート(2つの使命)の観点から見ても適切な政策と言えます。

FRBが物価の安定性を維持しようとする場合、どの目標水準が安定的かを特定しなければならないことは明白だからです。

但し、米国は現在ゼロ金利制約に近い金利環境にありますから、景気を刺激するための金利の一段の低下が不可能である環境に居ますから、万が一景気後退が発生すれば、FRBにとってマンデートを達成することは困難になります。

-イールドカーブ・コントロール(YCC)とは長期金利と短期金利の誘導目標を操作し、イールドカーブを適切な水準に維持すること。
「長短金利操作」とも呼ばれます。

国債買い入れオペレーション(公開市場操作)などを通じて長期金利を誘導する一方、当座預金への付利を調整するなどして短期金利を誘導します。

FRBは単純に一定期間の平均インフレ率2%を目標とし、物価が弱かった時の分を相殺するため、成長率が高い期間にはインフレ率が目標を上回るのを許容すればよく、利上げを先送りできる仕組みになります。

-グロース株ーグロース株とは企業の売り上げや利益の成長率が高く、その優れた成長性ゆえに株価の上昇が期待できる株式のことで、「成長株」とも呼ばれます。

革新的な商品やサービスを通じて市場シェアを拡大し、増収増益を続けているような企業が多く、一般に投資家の人気が高いという特徴があります。ひところのIT株のように、ほんの数年で株価が数倍~数十倍に上昇するものも珍しくありません。

-景気循環株ー景気動向によって、業績が大きく変動する銘柄のこと。「景気敏感株」と呼ぶ場合もあります。鉄鋼、化学、紙パルプなどの素材産業や工作機械などの設備投資関連などの銘柄が該当します。

好況時にはモノが売れるため、多くの素材や設備、工場が必要になりますが、不況時には在庫調整で需要が低迷し、生産が落ち込むことなど、景気の波によって受注が大きく左右され、業績に直結する銘柄群のことです。


立沢賢一とは

元HSBC証券社長。
会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。
・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?