米国株マーケット考察 2020.10.22

マーケットサマリー

米国株式相場は反落。ダウ平均は97.97ドル安の28210.82ドル、ナスダックは31.80ポイント安の11484.69ポイントで取引を終了しました。ニューヨーク証券取引所の出来高は前日比9163万株増の8億9306万株。相変わらず薄商いの中、不安定なプライスアクションを繰り返しています。

前日は追加財政策を巡るムニューシン財務長官と民主党のペロシ下院議長の交渉を睨んだ展開となってました。昨日はクドロー国家経済会議(NEC)委員長が交渉進展に楽観的見方を示したほか、ペロシ議長も大統領選前の合意に前向きな見方を示し市場は一時大きく上昇しました。

しかしその後、5000億ドルという遥かに小さな金額を提示している与党共和党は民主党が主張する大型経済対策に反対しており、メドウズ大統領首席補佐官がまだ多くの相違が見られると慎重な見解を示すと、11月3日の大統領選前の追加策成立は困難との慎重論が相場の重しとなり市場は下落しました。

前から私は何度も申し上げてますが、経済支援策協議については、「ある種の合意はまだ可能」とのコメントがあっても、時間切れで、結局大統領選前の議会通過は無理なのです。

大統領選挙に関して、市場では何となくシラけている感が出ているのは、やはり、2016年の大統領選挙でヒラリークリントンが大きく優勢であると選挙前日までメインストリームメディアが情報統制しまくって、市場が完全に騙された経験があるからです。今回もその感があり、投資家的には選挙結果が出てから投資活動を開始するのでも充分に間に合うと見ているのでしょう。

最近の為替市場は米国債券利回りがじりじりと上昇している一方で、米ドルインデックスは安値を更新中です。この動きはこれまでの金利とドルとの関係で見ると真逆の動きになっています。その中、ユーロ円が乱高下し、ドル円もその影響を受けています。恐らく、債券利回りが落ち着くことによってドル安に歯止めが掛かり、また戻ってくるように思えます。

相場に影響を与えませんでしたが、連邦準備制度理事会(FRB)が公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)では、10月初旬にかけての全米地区の経済活動が引き続きごくわずかまたは緩慢なペースで拡大を継続したことが明らかになりました。

用語解説


地区連銀経済報告(ベージュブック)ーアメリカにある12の地区の連邦準備銀行が、それぞれ管轄する地区の経済状況をまとめた「地区連銀経済報告」を指します。報告書の表紙がベージュ色をしているため、ベージュブックと呼ばれてます。全米の経済情勢についての総合判断の他、消費支出、製造、金融サービス、不動産、雇用などの各項目の状況について説明されています。年8回開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)の2週間前の水曜日に発表され、金融政策を変更するかどうかの判断材料に用いられます。12の地区連銀とは、アトランタ、ボストン、シカゴ、ミネアポリス、ニューヨーク、フィラデルフィア、セントルイス、クリーブランド、ダラス、カンザスシティー、リッチモンド、サンフランシスコの各連銀です。


立沢 賢一(たつざわ けんいち)
元HSBC証券社長。
会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。

・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi

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