米国株マーケット考察 2021.1.23

マーケットサマリー

米国株式相場はまちまち。ダウ工業株30種平均は前日終値比179.03ドル安の3万0996.98ドルで終了し、ナスダック総合指数は12.14ポイント高の1万3543.06で終わり、史上最高値を更新しました。ニューヨーク証券取引所の出来高は前日比1億6210万株増の10億8771万株でした。

昨日は好決算発表期待を背景にアップルなどのグロース株が総じて堅調に推移した一方、景気敏感株や金融株の軟調でした。週間では、ダウ平均が0.59%高、S&P500が1.94%高、ナスダック総合が4.19%高とそろって反発しました。

セクターローテーションが進まない理由は、バイデン米大統領が提案する1.9兆ドルの追加経済対策に反対する声が野党共和党だけでなく民主党内からも上がったことで法案早期成立の不透明感が強まったことです。それ故に、S&P500の金融、エネルギー、素材指数は週間でも1.2-1.8%下落した一方で、財政刺激策への依存度が低いハイテク株は堅調に推移しました。

経済指標では米12月中古住宅販売件数が676万件と予想(655万件)を上回り、米1月サービス部門購買担当者景気指数(PMI、速報値)も57.5と予想(53.6)を上回る強い結果となりました。

バイデン大統領は、パンデミックによる米国の死者数は来月には50万人を超えるだろうと発言。感染拡大が継続している中で、その動向は一部の投資家の買い増しを躊躇させていますが、今年の米国株式市場を強気に見ている投資家は多く、高値圏での売り一巡後はIT・ハイテク株中心に下値では押し目買いが入っています。

用語解説


-グロース株ーグロース株とは企業の売り上げや利益の成長率が高く、その優れた成長性ゆえに株価の上昇が期待できる株式のことで、「成長株」とも呼ばれます。

革新的な商品やサービスを通じて市場シェアを拡大し、増収増益を続けているような企業が多く、一般に投資家の人気が高いという特徴があります。ひところのIT株のように、ほんの数年で株価が数倍~数十倍に上昇するものも珍しくありません。

-景気敏感株ー景気動向によって、業績が大きく変動する銘柄のこと。「景気循環株」と呼ぶ場合もあります。鉄鋼、化学、紙パルプなどの素材産業や工作機械などの設備投資関連などの銘柄が該当します。

好況時にはモノが売れるため、多くの素材や設備、工場が必要になりますが、不況時には在庫調整で需要が低迷し、生産が落ち込むことなど、景気の波によって受注が大きく左右され、業績に直結する銘柄群のことです。

-セクターローテーションーこれから儲かりそうな業種の銘柄に投資する対象を切り替えていく投資戦略のことです。景気循環において、景気が最も悪化している状態にはインフラ関連の銘柄の株価が伸びやすいですが、より景気が改善した際には他のセクターの業種の銘柄の株価は上がりやすい傾向があります。注意点としてよく挙げられることは、同じセクターの中でも銘柄によって業績や性格が異なるため注意が必要とされています。

-中古住宅販売件数ー全米不動産協会(NAR:The National Association of REALTORS)が、中古住宅の販売件数を所有権の移転が完了した段階で、月ごとに集計した指標。商務省が販売成立時点での数字を集計する新築住宅販売に比べて1~2カ月の時差があると言われています。

もっとも、米国では中古住宅の市場規模が新築住宅に比べてはるかに大きいことから、新築住宅販売件数よりも、市場の注目度は高いです。住宅の販売は、その後の家具・家電製品などの耐久財に対する家計の需要を誘うこともあり、景気に対して先行性が高いと言われています。

-米サービス業購買担当者景況指数(PMI)ーPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)とは、企業の購買担当者らの景況感を集計した景気指標のひとつです。国別や、製造業、サービス業ごとの集計も行われており、米ISM(Institute for Supply Management)やIHS Markit社が公表しているものが有名です。一般的に鉱工業生産や雇用統計などの統計よりも景気先行性があるとされ、株式等の運用担当者の注目度が高い指標のひとつと言えます。景気判断の方法としては、一般に、PMIの数値が50を上回ると改善、50を下回ると悪化と判断されます。


立沢賢一とは

元HSBC証券社長。
会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。
・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?