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キミは高偏差値を見たことがあるか?

 好きですか?偏差値。

 なんですかね、偏差値。なんで学力のレベルを図るのに「偏差値」という尺度が人気なんですかね。偏差ってのは偏差でありますから、相対評価ですね。雑に言えば平均値からどのぐらい離れているかの目安であるからして、母集団が異なれば値は変化する。それなのにどういう母集団における偏差なのか、という重要な要素がどっかへすっとんで、「偏差値」だけが一人歩きする。

 さてそんな偏差値ですが、みなさん、最高に高い偏差値、いくつを見たことがありますか?

 僕が中学生から高校生のときにね、クラスにとんでもないやつがいたんですよ。Z君。Zなんてイニシャルあんの?って思うでしょ。頭文字Z。ドラゴンボールかよ。まぁZってイニシャルじゃなくて本当は違うんだけど、あだ名のアタマがZだった。そのZ君、いろいろ面白いエピソードがあるんですよ。

 Z君はひょろっと背が高く、アボガドロみたいな顔をしていた。普通の秀才じゃなくてブチ抜けた秀才で、平均的によくできるんじゃなく、まぁ全部トップレベルにできたけど、特に理科に異常な強さを誇っていた。さすがアボガドロ。あいつアボガドロの再来だったんじゃないか。

 Z君は苗字のあたまが「な」で、僕は田熊で「た」なんで、出席番号が近かった。だから席が近かった。よく定期テストの試験直前に、最終確認みたいなつもりで声をかけたりした。

「これはこういうことでいいんだよね?」

 よくある景色でしょ。教室で。試験前にわーきゃーやるやつ。で、僕がそういうノリでこのZ君に確認したら。

「キミはいまさらそんなことを言っているのかい?」

って素で言われた。キミっていうのは多分カタカナで言われた。

 Z君はかようにぶっ飛んでいて、ちょっと意味が分からないぐらいアタマがよく、なにを言っているかよくわからないような世界にいた。

 そのZ君が本領を発揮した事件があった。

 あれは中学だったかな、高校だったかな。僕らのいた中高(一貫校だったのよ)の卒業生が、教育実習で来たことがあった。先輩ってことですね。僕らの先輩が教員になるために学んでいて、教育実習ってことで母校にやってきたわけです。この先生の専門が化学だった。で、この先生が実施した試験が、鬼クソ難しいものだった。

 こういうのも変だけど、僕が行っていたのはそこそこ優秀な中高一貫の進学校だったから、まぁそこにいる連中はそれなりにちゃんと勉強のできるやつばかり、のはず。それがこの鬼クソ実習生(いつのまにか鬼でクソなのは実習生だということになりつつあるがテストである)がぶっぱなした試験は鬼クソ難しすぎて、平均点が30点にも満たないぐらいのことになった。

 僕の得点は、2点だった。

 そこでZ君ですよ。彼はなんと100点満点を採りやがった。もちろんたった一人。

 そして物好きが偏差値を計算したら、なんと100を超えたんですね。平均点が30点に満たないような状況でたった一人だけ満点を採ったZ君の偏差値は、3桁だった。

 この日から、Z君のあだ名は3σ(シグマ)になった。

※偏差値のシグマ空間についてはhttps://mathwords.net/sigumakukanをどうぞ。

 3σに入る人は全体の99.7パーセント。つまり、そこからはみ出すのは0.3パーセント。Z君はここ。(わかりにくいけど、はみ出してるのがZ君)

 やべぇ。とんでもねぇ。そりゃ「キミは今さらそんなことを言ってるのかい?」って言われるわ。グぅの音も出ねぇ。現代のアボガドロ。

 なお、このあいだ3σのZ君どうしてるかな、と本名をググったら、なんか読んでもさっぱりわからない分野の学者になっていた。

 人生でたった一人だけ出会った規格外3σ。たぶん今後も出会うことは無いと思われる。

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