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「新商品・サービスの検討はどのように進めればよいでしょうか?」とお客さまから相談されたときの話

「新商品・サービスの戦略立案をコンサルしてほしい」とお客さまからご相談いただきます。
発想力、すなわちアイデアが活発に出てくる方法が求められるのですが、その根幹には「知識量」と「視野・視座・視点」を組織が備えることがあります。

それらをすぐに補完するのは難しいのですが、まずは「知識量」を増やす方法のひとつとして、顧客理解をとことんやってみることをオススメしています。

今日は、顧客理解から新たな発想に結びつけて商品・サービスを構成する方法について、お話をさせていただきます。

既存顧客に向けて新たな商品・サービスを考える


既存の顧客理解を深めることによって新たな事業機会の獲得に成功した代表例には、街の至るところにある「お店プリント」を挙げられます。
みなさまよくご存知の、大手写真フイルムメーカーの看板を背負ったお店です。

以下の図は「アンゾフの成長マトリクス」というフレームワークで、私の解釈で作った大手写真フイルムメーカーの商品・サービス戦略イメージです。

ここで着目していただきたいのは、左上の赤い枠です。
マトリクスの縦軸は「製品・サービス」で、横軸は「市場・顧客」ですが、左上の赤い枠は「新規製品・サービス」×「既存市場・顧客」の象限になります。

富士フイルム株式会社様の商品情報をもとに筆者独自の解釈で作成


デジタルシフトによって「写真現像」のニーズが失われていく中で、大手写真フイルムメーカーは、パートナーである写真現像のお店に対して、デジカメやケータイ、スマホで撮った写真をプリントするという新しいサービスを提供する仕組みづくりをサポートしました。

今でこそ当たり前に思えてしまうようなデジタルシフトでしょうけど、写真現像のお店の立場からしてみたら、おなじ「プリント」でも、アナログ(銀塩フイルム)からデジタルシフトに伴う店舗のノウハウはゼロに等しく、これまでとは明らかに異なる「新サービス」と言えます。

デジタルシフトによって、エンドユーザー(消費者)の生活習慣が変化すれば、新たな欲求や悩みが生じます。
その悩みに着目したからこそできた「お店プリント」です。

ここで挙げたデジタルシフトはわかりやすい変化ですが、デジタル云々に拘らず、常日頃、世の中では様々な変化が生じています。
自社がいちばん得意とすべき「顧客理解」を常日頃からちゃんと実行していたら、社会構造の変化に伴う顧客心理の変化に誰よりも早く気づく洞察が働き、新たな事業機会の獲得につながるのです。

こうして自社の顧客を中心に知識量を増やしていければ、発想力アップにつながります。


新規顧客に向けて自分たちの経営資源から提供できる商品・サービスを考える


アンゾフの成長マトリクスを使って、話を進めます。
下図の赤い枠をご覧ください。
今度は「新規顧客」に対してどんな商品・サービスを提供できるか?を考えるステージに取り組みます。


新規顧客なので、先ほどとは勝手が違って自社の既存の顧客理解がそのままでは通用しません。
ですが、顧客の欲求をどのように洞察するかについてのノウハウは同じです。
なのでやっぱり、まずは既存顧客の理解を深められるようになることが肝要なのです。

新規顧客なので、そもそも「誰」のことを理解すればよいか当然ながら見当もつかないのですが、その見当をつける前にやるべきことは、自社の経営資源の強みを理解することです。
つまりこの象限では、新規顧客に対して、既存の経営資源の提供を考えます。

そこで、経営資源の強みをどのように認識するかという問題が発生します。
くどいようですが、既存顧客からの評価・フィードバックを活用してください。
ジョハリの窓というフレームワークがあります。

図の出所)Wikipedia

ジョハリの窓とは
自分をどのように公開ないし隠蔽するかという、コミュニケーションにおける自己の公開とコミュニケーションの円滑な進め方を考えるために提案された考え方。

引用元)Wikipedia

自分たちで強みと思っていることがすべてではなく、周囲から教えてもらう「自分の強み」ってけっこうあるんじゃないでしょうか?
むしろ、周囲からの声で自信を持てたりしますよね。
既存顧客からの評価・フィードバックは、上図の「開放の窓」や「盲点の窓」などの理解につながります。
さらに、外からはわからない「秘密の窓」も出てくるとよいでしょう。

強みがわかって、周囲の声に耳を傾けていたら、自分たちの強みを売りたい新たな顧客像が見えやすくなります。
見えるかどうかの確証はありませんが、少なくとも市場の変化に対して敏感にはなるので「見えやすく」なることは確かです。


自由に発想するための環境をつくる


顧客理解からの発想力アップの極みは、下図の「誰に・何を・どのように」の活用です。(過去のnoteにも書きました → 詳細はこちらこちら
「誰に」の欲求やお悩みの設定ひとつで、「何を・どのように」は柔軟に変わってきます。

ドリルを買いに来たお父さんへの価値創造の例
ジョギングをする女性への価値創造の例


この「誰に・何を・どのように」は、自由な発想をするための環境づくりに役立ちます。
ここでも、顧客への深い理解が前提にあることを忘れないでください。
その理解をもとに、自由にその解決手段を発想してみて、その中から自社が取り組むべきことを選び抜けばよいかと思います。

さらに、その「自由に」をどれくらい広げられるか?については、世間で言われる発想法のフレームワークが活かされます。
その説明についてはまた別の機会に触れたいと思います。


むすび


同じ商品・サービスを提供し続けてうまくやっていける会社もあるでしょうけど、変化の激しい現代ではなかなかそうもいきません。
ここで事例として取り上げた銀塩フイルムの話だけではなく、たとえば今日はスマホを作っている会社の民事再生法適用の記事を見ました。
生き残りの厳しさをひしひしと感じます。

アンゾフの成長マトリクスは、自社の経営資源を未来に向けてどのように展開していけばよいか、それを俯瞰して検討することのできる、有用性の高いツールです。

今日はアンゾフの成長マトリクスの使い方について説明しましたが、顧客理解や自社の強みに対して高い意識を持っている組織は、このマトリクスを使えばけっこうすんなりとアイデアが出てきます。
アイデアが置かれる場所が整理されて俯瞰して見やすく、それによってまた新たなアイデアを出しやすくなることにつながります。

くどいようですが、すべての出発点は顧客理解です。


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