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「顧客の欲求を深く掘り下げることから、どうやって新しい商品・サービスの企画につなげるのでしょうか?」とお客さまから訊かれたときの話

「ドリルを買いに来たお父さんが本当に欲しいものは何でしょうか?」

そう尋ねても、「そりゃあドリルだろうよ!」と答えられてしまったことがこれまでに何度かあります。
私としては、セオドア・レビット先生の逸話のように「穴」と答えてほしかったのですが、逸話をご存知でない人にとっては「穴」と答えるほうが不自然ですし…。

穴を開ける目的があるにしてもお客さまが買いに来たのはドリルなので、欲しいものがドリルであると答えるのも全然アリと言えばアリです。

でも、お父さんの欲求をそこからさらに深く掘り下げれば、今までとは違う答えをつくることができます。
要するに、新しい商品・サービスの企画につながるということです。

今日はそんな話をしたいと思います。

なぜ、顧客の深い欲求を捉える必要があるのか?


くどいようですみませんが、ドリルを買いに来たお父さんが欲しいものを「穴」とさせてください。

ですが、なぜ「穴」が欲しいのでしょうか?

たとえば、
「壁に写真を飾りたい」
「テレビ裏の配線をスッキリさせたい」
「モノの置き場に困っているので棚を作りたい」
・・・等々、穴を開ける理由はお父さんによって違います、きっと。

ひょっとしたら、中には、日曜大工でカッコいいお父さんを演じたいがためだけにわざわざドリルを買いに来る人だっているかも知れません。

捉える深い欲求によって、お父さんにとっての最適な解決策は異なります。

新商品・新サービスを企画するにあたって、顧客の欲求を理解することはとても大事なのですが、ここで私はお客さまから、「深い欲求を理解したら、なぜ新しい発想が浮かんでくることにつながるのかがわからない…」と言われてしまったことがあります。

私の答えは至ってシンプルです。
「解決すべき顧客の問題」に着目すれば、その手段として新しいアイデアが出やすくなるからです。


どうやって新しい商品・サービスを企画するのか?


以下のスライドをご覧ください。
「娘にカッコいいお父さんと思われたい」という深い欲求を捉えた、新しい商品・サービスを考案するとしましょう。

そこで私は、解決すべき顧客の問題を「いかにして『日曜大工の達人』に見られるか?」と設定しました。
つまり、カッコいいお父さんとはどういうことか?、カッコいいお父さんになるためには何をすればよいのか?、と考えただけです。


「いかにして『日曜大工の達人』に見られるか?」

その解決策を自由に想起して、「何を(What)」と「どのように(How)」で定義します。

私は上図のとおり、ドリルの学習コンテンツを提供して、お父さんに学習プログラムを通じて寄り添っていけたら、お父さんは『日曜大工の達人』になれるんじゃないかと考えます。

ドリルメーカーがこんなサービスを提供したとしたら、もしかしたらそれは、これまでのドリルメーカーにはなかった新しい商品・サービスの企画になるかも知れません。


そんなサービスで本当に我が社の製品は売れるのか?


上記のアイデアに対して、「そんなサービスなんか提供しても、我が社のドリルの売上げに貢献できないよ!」と、お叱りをいただきそうですが、案外そんなこともありません。

サービスの提供によってモノが売れるなんてケースを以下にご紹介します。


多くのプロミュージシャンから愛される、アメリカの老舗ギターメーカーのフェンダー社は、このドリルの例と同じように、ギターの弾き方講座をオンラインで提供したことから爆発的にギターが売れたそうです。
何十年も続く老舗ギターメーカーが、まさかのオンライン講座がきっかけで創業以来のベストセールスを叩き出したそうですが、これはつい近年の出来ごとです。

なぜ、そんなサービスがきっかけでギターがたくさん売れたのか?

その理由は、次のとおりです。
憧れのギターを手にしたティーンエイジャーの多くは、買った後に難しくて弾けなくて挫折してしまうそうです。
企業にとっては顧客との付き合いがそれっきりになっていたそうですが、ギターを弾くことをサポートしたことで挫折しそうな顧客が救われ、そこでリピ買いニーズを獲得できたことで、ギターがたくさん売れるようになったそうです。

つまり、離脱理由は顧客側にあったのです。

それが、「フェンダー社が解決すべき顧客の問題」だったということです。


むすび


ものづくり企業では、自社の技術や設備投資に自信を持つと、顧客がなぜ自社の製品を評価してくれているのかを深く考えなくなってしまうケースがあります。
これだけモノ余りの時代と言われていても、です。
売れるのも売れないのもモノのせいだと考えてしまいがちなのです。

老舗のフェンダーギターは以前からよいギターです。
ギター市場が大きくなったわけでもないし、売り先を変えたわけでも、もちろんギターを改良したわけでもありません。
ですが、近年に爆発的に売れました。
モノのせいではありません。

やっぱり私は、顧客理解がすべてだと思ってます。
顧客理解のスキルを磨くことで新たな価値創造の機会をつくり、現状の停滞から脱却する。私はそんなお手伝いを頑張ります。


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