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行政DXの現状と課題

仕事柄、行政のデジタル化に関わることがある。クライアントが自治体というところもあり、田舎の小さな町役場から、都会の役所レベルまで様々な場に立ち会ってきた。
デジタル庁が9月1日に発足した。それ以来、行政の手続きをデジタル化し、標準化しようという明確な目標が設定された。データは、ガバメントクラウドというクラウドに一括して、管理する。自治体ごとに違っている、システムを一括化しどの自治体でも同じシステムを使えるようにする。

デジタル庁が発足し、このような取り組みが行われようとしている昨今ではあるものの、そこまで急速なデジタル化は残念ながら起こりそうにない。コロナ禍で、課題として残った、行政のDX戦略はなぜ進まないのだろうか。

今回のトピックでは、私が仕事の中で感じた、自治体の行政DXの実態と、現状上げられる課題を含め、3つほど考えてみたい。

1. 画面共有ができない自治体

とある、打ち合わせの日。クライアントは小さな町役場。クライアントはDXを推進したいということで、引き合いをいただいた。

打ち合わせ終了10分前、クライアントが少し構築していただきたいことをまとめた資料があると仰った。その後、僕は「資料を画面共有いただけないでしょうか」と促す。
しかし、なかなか画面共有されない。まさか、と思い「資料は見つかりましたでしょうか」と聞く。すると先方から「画面共有の仕方がわかりません」と返された。

このようにオンラインツール上に画面共有すらできない自治体は一定数存在する。もはや、この手の自治体にクラウドを説明しても、話にならないと思うのだが、こういったことが自治体で発生する以上、デジタル化が進まないのも無理はない。

むしろ、スマホが使えない高齢者よりもこうした自治体のフォローが、まだまだ至上命題だ。

2. 契約上のリスク

クラウドサービスを使うとなると、当然業務委託でクラウドを民間で構築する必要が出てくる。ここで、避けられないのが契約上のリスクだ

クラウドやシステムはISMAPと言って、デジタル庁から公認されている企業がある。ISMAPの最大の弱点は、公認されている企業のほとんどが外資系ということだ。つまり、契約を結ぶとなると、外資系の企業と結ばざるを得なくなる。

こうなると、契約金額が為替レートで変動するため、自治体の予算請求がとても難しくなる。しかし、これだけではない。

自治体はアプリ開発の会社とも契約を結ぶ必要があり、二つ契約を走らせる必要がある。こうなると、契約不適合責任など、どの会社に責任を問うべきかわからず、ハイリスクになる。

3. セキュリティのリスク

クラウドに繋げるということは単純な話、様々な形で回線を繋げていかなければならない。クラウドと省庁、さらに民間、自治体とつながる線はますます複雑にり、それぞれが連動して、システムが動く形となる。

一見、画期的なシステムではある。ところがもし、どこかしらで回線トラブルが発生した場合、クラウドにためていたデータ自体を使えなくなってしまう。行政上の手続きもできなくなる。

さらに、マイナンバーや住所など、サーバーテロに遭う確率だって、増えて来るだろう。セキュリティの強化という一面は大きな課題となるだろう。当然、こういうセキュリティ会社を探そうとなるのだが、先ほど出てきたISMAPの中に、セキュリティ会社は存在しない。

セキュリティや回線リスクは、システムを語る上で避けらない事実であることは確かだ。それも、国民全体の情報が筒抜けになるような事態が発生すれば、国家存亡に関わってくるかもしれない。

4. こうした課題を受けて、どう動くか

こうした、現状と課題は今に露呈したことではない。デジタル庁発足前から、こうしたリスクは語られてきた。

そろそろ、国自体もセキュリティやリスクという面を無視できなくなりつつある。デジタルデバイドなど、高齢者とのデジタル格差とかが叫ばれるようになってきた。

誰も取り残さないデジタル化はどのように達成できるだろうか。デジタルを使って、持続可能な世界、すなわちSDGsはどう達成し得るのか。誰もが幸せになれるデジタル化、様々な形で誰も取り残さない世界を目指すことが、21世紀企業の目指すべき姿、なのかもしれない。

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