『Remember the name』
自分は人の顔と名前を覚えるのが苦手です
昔から超絶に苦手でまったく覚える事ができない
どうやったら覚えられるのかが全くわからない
一回会っただけで覚えてしまえる人もいますよね
自分にはその能力は皆無のようです
今までに何度も人の顔と名前を
間違えてしまった経験があり
その度にピリついた空気になったり
嫌な顔をされながらも、なんとか生きています
顔と名前が覚えられない原因は
おそらく自分の覚える方法が悪いんだと思う
例えば細田さんという名前の人がいたとします
細田さんの体型はやはり細くあってほしいと思ってしまうのです
もしくは逆にブクブク太っている細田さんであってほしい
そんな細田さんだったら細田さんを覚えられるのですが
細田さんが中肉中背の体型だと
もう覚えることはできない
そんな中途半端な細田さんに対して
『太るか痩せるかどっちかに寄せてよ!』と
とても勝手なことを細田さんに思ってしまいます
もう一つの悪い覚え方があって
例えば内田さんという人がいたとする
内田という名前はあまり引っ掛かりのない名字ですよね
そんなインパクトの少ない名字だと
途端に覚えることは難しくなってしまう
なので内田さんのいちばんの特徴を見つけて
それを覚えるという方法をとっている
例えば『内田さんの靴は汚い』それを脳内にインプットする
『靴が汚い〜内田さん』という流れで内田さんを覚える
こうすると割と名前を覚えることができる
しかしここで問題なのが内田さんが
もしも新しい靴を履いてしまうと…
内田さんはもう内田さんではなくなってしまうのです
自分の中では内田さんは靴が汚くてはならないのです
そんな事に戸惑っていると知らず知らずのうちに
内田さんという名前はどこかへ消えて無くなってしまいます
こんな覚え方は非合理だとわかっていても
他に覚える方法がわかりません
それだけ人の名前を覚えるのが苦手なんです
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
先日、新しい職場で働くことになった
約50〜60人程の社員がいる会社です
これは困った…
仕事も覚えなければならない上に
全員の顔と名前も覚えなくてはならない…
みんな当たり前のように〇〇さんは〜と
会話の中に色々な人の名前が出てくる
持ち前の人見知りオーラを出して
なるべく会話量を少なくしながら
誤魔化してなんとか乗り切っています
しかし、先日ある問題が起きてしまった
それは
『2階にいる内藤さんに書類を持って行ってほしい』
と言われたのだ
内藤さん…これまでに何度か登場した名前です
しかし内藤さんの顔がまったく出てこない
困った…これは困った
『内藤さんってどんな方でしたっけ?』
と正直に聞けばいいじゃん!と思いますよね
しかし『内藤さんってどんな方でしたっけ?』
というカードはすでに昨日も使ってしまったのです
内藤さんお尋ねカードは1回までという
暗黙の国際ルールがありますよね
2日連続で内藤さんを聞くのは
ルール違反だと思ったので聞けませんでした
その人から内藤さんに渡せばわかるという書類を受け取り
顔のわからない内藤さんのもとへ書類を届けに
足取り重く2階へと向かった
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1階と2階の踊り場でしばらく立ち尽くした
どうしよう…何か良い策はないだろうか?
なんとかしてスムーズにこの書類を内藤さんに渡したい…
2階のドアを開けて大声で
『内藤さーん!書類を届けに来ましたー!』
と馬鹿なフリをして叫べればいいのだが
入社時にファンキーなキャラクターの
初期設定にはしていなかったので
そんな行為はできるはずもない…
どうしよう…早く良い策を見つけなくては…
焦る。
いっそのこと発想の転換で内藤さんを探すよりも
さっき自分に書類を渡した奴を
この世から抹殺してしまえばいいのではないか?
と無茶苦茶なことまで考えてしまった…
ダメだダメだ…焦れば焦るほど良い案が出てこない
どんどん時間だけが過ぎていく
ここで考えていても仕方がない
解決策が見つからないまま
覚悟を決めて2階にある地獄への
内藤エリアへと向かった
✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎
2階の扉を開けると沢山の人が働いていた
全員が内藤さんに見えるし
全員が内藤さんには見えない
まさに内藤だらけの内藤地獄
どうしよう…
ドアの前で困って立ち尽くしていると
『どうしたの?』と声をかけられた
おぉ…これは助かった!
これは天からの贈り物だ!
この人に内藤さんの居場所を聞けばいいではないか!
内藤さんへの光のルートが一気に射した
あっ…でもちょっと待てよ…
もしもこの人が内藤さんだったとしたら…?
これは大変失礼な事態になってしまう…
内藤さんに内藤さんの居場所を聞けば
とてもおかしな空気になってしまうではないか…
どうしよう…
しかし変な間があいてしまってはダメだ
ここはギャンブルに出るしかないと思い切って
『あの〜内藤さんはどこにいますか?』
一世一代の大博打に出てみた
すると…
『あ〜内藤?内藤はね〜さっき休憩室にいたよ』
やった!やったぞ!ギャンブル成功!!!
脳内では内藤ドーパミンやノル内藤アドレナリンが出た!
そしてラッキーなことに内藤さんの居場所まで
聞き出すことができたではないか!
サンキュー!誰だかわからないベルトのサイズがブカブカな白髪のおじさん♡
あ〜良かった!これで内藤ミッションは解決する
扉を閉めてとても軽快な足取りで階段を駆け上がり
3階にある内藤が潜伏する休憩室へと向かった
※ちなみにそのとき生まれて初めて
階段の踊り場で踊ってやろうかと思った
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
3階に到着。休憩室の扉の前で心躍る
この扉の向こうに念願の内藤がいる
待ってろよ内藤!書類を届けてやるからな!
意気揚々と休憩室の扉を開ける
すると…
2人の男がタバコを吸っていた
えっ?やばい…予想外の展開…
どちらの男も見たことがあり
どちらも内藤に見えた
そうです!
内藤ミッションはまだ終わりではなかったのです
さぁどっちが本物の内藤なんだ…?
内藤である確率は50パーセント
内藤でない確率は50パーセント
内藤と内藤の丁半のせめぎ合い
どうする?もう一回内藤ギャンブルに出るか?
それともフワッと2人に言ってる感じで話かけてみるか?
さぁどうする?俺?
あっそうだ!忘れていた
自分の手には書類があるではないか!
内藤に渡せばわかると言う書類を持っていたことを思い出した
勝利の女神は自分を見離さなかった
俺の手には内藤へのパスポートがある
これを押し出していく作戦で行こうと決めた
そして2人に『お疲れさまで〜す』と言いつつ
その書類を2人に見えるように
全面的に押し出してやった!
どうだ…? わかるか…? わかるのか…?
この全面的な押し出しで察してくれ…ナイトウ…
早く反応してくれ… ナイトウ… 早く……
すると…
『おぉ〜持ってきてくれたんだ〜ありがとう!』
右にいた内藤が内藤だった
やった!やったぞ!
お前が内藤か!やっと会えたな!内藤!
念願の内藤との感動の再会を果たす
やっと辿り着いた!
『千里の道も一歩から』『内藤の道も内藤から』
内藤への道は果てなく険しい道のりだったが
諦めなければ夢は叶うものだ!
ありがとう内藤!そしてよくやったぞ!俺!
脳内では映画アルマゲドンのエアロスミスの
あの名曲がゆっくりと流れた♪
こうして内藤への長い長い冒険が終わった
そして今後絶対に内藤の顔を忘れることはないだろう
こうしてkenに平和な日常が訪れました
そんなミッション内藤インポッシブルな
とある午後の出来事でした。
➖完➖
※内藤という名前は仮名です。
しかし自分が書類を渡した職場の人は
限りなく内藤という顔をした内藤顔の人だったのは事実です。
【後記】
『名は体を表す』という言葉がありますよね
自分は小学生の頃から現在まで
一貫してずっと皆にkenと呼ばれてきています
たぶん、もの凄くkenっていう
kenな顔をしてるんだと思います
響きだけでkenという名前をつけた父親に感謝したい
それではまたCiao!
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