吉祥寺の深夜

深夜の吉祥寺は昼間の健康的な賑わいとはまるで違う、混沌とした姿を見せてくれる。

井の頭公園のベンチでは人々が酒の缶を何本も飲み干し、

暗がりでは何組もの恋人たちが睦みあう。

宿無しか、あるいは酔いつぶれて終電を逃したらしき人々が物陰で寝息を立て、

そのすぐそばを気にもせずに深夜のランナーたちが走っていく。

一方駅を抜け、商店街へと出ると

閉じたシャッターの前に

怪しげな占い師やマジシャンやミュージシャンやアマチュア絵描きが、

めいめい夜の露店を出している。

私はそんな通りの片隅で、辻オセロ打ちと対局しながら

何でもない世間話をする。

その隣では酔い潰れた辻将棋指しが

将棋盤の前でいびきをかいていた。

これが吉祥寺の深夜である。

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