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モーラナイフ(MORAKNIV) 〜 進化する北欧の伝統。その特徴と実用性

本稿は『けもの道 2018春号』(2018年4月刊)に掲載された記事を note 向けに編集したものです。掲載内容は刊行当時のものとなっております。あらかじめご了承ください。


スウェーデン中部ダーラナ地方に位置する森と湖の美しいモーラ市。そしてスウェーデンを代表する生活刃物(生活全般、林業から工芸、狩猟など一般的なものから専門的なものまで)を製造する世界的なメーカー、それがモーラナイフ(MORAKNIV)だ。

この数年日本でも人気を博し、正規代理店の登場で安定的に供給されるようになり、年々ユーザーが増えている。ハンター、アウトドアーズマンはもちろん、キャンプ初心者を含め、子供から大人までの幅広い層に支持されており、旧来のナイフファンではないユーザーも確実に増加している。

そして、ブッシュクラフトという北欧発祥と言われるアウトドアスタイルも同時に日本に入って来たことにより、モーラナイフの存在感はさらに増して来た。

文|越山哲老(モーラナイフジャパン公認インストラクター)
写真|佐茂規彦

モーラナイフとは?

ではそんなモーラナイフとはどんなナイフなのか。特徴を追ってみたい。

コンパニオン(オレンジ) 刃素材:ステンレススチール■柄素材:ラバー■サイズ:刃長104mm / 全長219mm / 刃厚2.5mm■2,310円(税込)■アウトドア用のモーラの中でも、最もオーソドックスなナイフの1つ。軽く、小さく非常に扱いやすい。価格の想像を遥かに超えるパフォーマンスが期待できる。狩猟から釣りまで獲物の解体などに重宝する

モーラナイフはスカンジナビアンスタイルと言われるデザインで、ブレードがV字・くさび型のエッジであり、全体の1/4から1/3分をベベル(※1)が占める構造になっている。

※1 ブレードに対し刃をつけるために削ったり、研磨して斜度をつけた部分のこと。

また、厳冬期に露出した金属が手に凍り付かないよう鋼材をラップしたグリップが特徴で、伝統的プーッコナイフを背景として作られている。

その伝統的スタイルに対し実は意図的かつ確信的にモーラナイフが行ったことがある。

創業ファミリー3代目トーマス氏によれば、それは旧来のストレートなブレードバックはそのままにポイント(切っ先)を少し下げたこと、である。

伝統的プーッコの多くはブレードバックがリカッソ(※2)からポイントまで直線であるのに対し、モーラのそれはブレード先端がドロップしているのだ。いわゆるラブレスタイプのドロップポイントではなく、若干クリップ気味にブレード先端が下がっているとでも言えばいいだろうか。

※2 ベベルストップラインと、ヒルトまたはハンドルの間の平らな部分のこと。

このポイントの優位性は、ナイフの切っ先が伝統的スタイルのそれよりも内側に向くため小回りが効き(逆にエッジの長さは失われるが)、先端部がストレートブレードよりも早く対象物に到達する点だ。もちろん解体時におけるドロップポイントとしての本来の意味でももちろん有効な役割を担う。

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