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鹿山から猪だけを捜し、狩るーー本川系四国犬シロと髙橋忍

本稿は『けもの道 2020春号』(2020年4月刊)に掲載された特集記事「猟犬と歩く日本の実猟」を note 向けに編集したものです。掲載内容は刊行当時のものとなっております。あらかじめご了承ください。

狩猟を行なうには狩猟免許の取得、猟具等の取得・所持の許可、狩猟者登録などの手続きが必要なほか、狩猟期間や猟法、狩猟できる区域や鳥獣の制限等があります。狩猟制度に関する情報については「狩猟ポータル」(環境省)等でご確認ください。


写真・文|佐茂規彦

第2回猟犬猟能競技大会(吉野川猪犬訓練所)で髙橋忍さんはシロ号で優勝を飾ったが(下記リンク参照)、それは猪を獲ることが簡単であるという意味を含まない。猟場の状況は千差万別。誰しもが猪だけを狩るために創意工夫を重ねている。

髙橋忍さん(45歳)◯神奈川県在住、猟歴14年。飼っていたラブラドールレトリバーを連れて林道を散歩していたとき、レトリバーがヤマドリを出すことがあり、犬を使って狩猟をすることを思い立ち狩猟免許、猟銃所持許可を取得。現在は本川系四国犬のシロ(雄・3歳)ほか数頭の猪犬とともに猪を狩る

鹿山から猪だけを狩るための猟法「綱犬」

「猟を始めた十数年前は鹿なんていなかったんで猪を狙いやすかったんですけど、最近は鹿だらけになっちゃって、大変なんス」

髙橋忍さんの普段の猟法は、猪犬ししいぬ1頭だけを連れて歩く猪狙いの単独単犬猟だ。朝一番から軽トラックで林道を走りながら真新しい足跡や食み跡を探す「跡見あとみ」から始まる。

猟場は植林地ではあるものの下草が豊富で、山の中まで車で走れるしっかりした林道がついている。時折り、軽トラックの運転席の窓から顔を出しては、めくれ上がった土塊や、山肌から林道に出て来るケモノ道に残った足跡を見る。

ただ、髙橋さんが冒頭ボヤいたようにその多くは鹿の跡だ。

増え過ぎた鹿は猪猟師の天敵でもある。猪がいないわけではないが、鹿だらけの中で安易に犬を放せば、犬が追うのはまず鹿だ。彼らは群れている上に、逃げ一手の反応なので犬にしても追うのが面白いのだろう。

跡見の最中に林道を歩く鹿の群れと遭遇。鹿は車を怖がらず、なかなか逃げない

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