【猪犬閑話】ある猟人の思いで
文|八木進
ある猟人の思いで昭和40年代後半の春頃、バイト先の愛知県下の某大規模養鶏場の寮へ珍しく来客があった。とりついだ寮母さんが「方言が強くて言葉がよく判らないが、中年のおじさんが『アニぃ』(私をこう呼んでいた)に会いに来たらしい」とのことで表に出てみると、小柄な中年男性が少し緊張した様子で立っていた。話をしてみると、この人は方言ではなく吃音が強い様子で聞き取りづらいところが有った。
「俺は長野県木曽の猟師でHと言い、紀州犬を使って猪猟をしているが、長野県○○警察署