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【猪犬訓練競技大会レポート】平成30年度徳島県猟友会

本稿は『けもの道 2019春号』(2019年4月刊)に掲載された記事を note 向けに編集したものです。掲載内容は刊行当時のものとなっております。あらかじめご了承ください。


文・写真|佐茂規彦

安全狩猟のための訓練

猟期開始1ヶ月前の平成30(西暦2018)年10月7日、吉野川猪犬訓練所(徳島県)では恒例の猪犬ししいぬ訓練競技大会が開催された。

猪犬に関する競技会が少なくなる中、この大会は全国でも珍しく県猟友会主催で毎年、猟期前に行われている。猟師の減少に伴い、競技会の規模も縮小傾向にあるものの、今回も実猟犬たちが大猪を前に立ち回り、猟期に向けて弾みをつけた。

徳島県吉野川市にある吉野川猪犬訓練所
約50m四方を金網フェンスで囲った訓練場があり、その中で猟師や猪犬が自由に動ける猪を相手に訓練や経験を積むことができる

開会前には徳島県猟友会の濱口靖徳会長が参加者たちに、猪犬による咬傷事故防止を強く呼びかけた。徳島県では平成30年3月17日、猪猟中に1頭の猟犬が住宅敷地に入り込み、小学生の女児ら3人に咬みつくという痛ましい事故が発生している。猪猟における最優先事項は猪を獲ることではなく、安全に事故なく終猟を迎えることであることは言うまでもない。

開会前に挨拶する徳島県猟友会の濱口靖徳会長。後ろに並んでいるのは審査員を努める役員たち

猪猟師は訓練を通じて犬に対猪の経験を積ませるだけでなく、安全に猟を行うために自分の犬の性格や行動を知り、コントロールする技量や手段の研鑽にも努めなければならない。

競技は成犬の部のみで、先に小さめの猪相手に若犬による訓練が行われた。訓練では複数掛けもOKなのだ

採点方法

本大会はベテラン猟師でもある猟友会役員の審査員3名、それぞれ持ち点30点ずつ、合計90点満点で争われた。審査は猪犬の猟芸のポイントとなる次の3項目(各10点満点)について行われる。

  1. 捜索
    「捜索」とは猪を探そうとする行動であり、偶然の場合を除き、猪猟において「捜索」行動無しに猪を獲れることはあり得ない。
    審査のポイント …… 高鼻、地鼻などの鼻の使い方、ラウンドしてからの発見なのか、鼻による捜索なしでの目視による発見なのか、など。

  2. 鳴き
    発見した猪に対する行動の1つ。「咬み」一辺倒の犬では猪を走らせるだけであったり、犬自身も受傷する確率が高くなるため、実猟では「鳴き」の態様が重視される。
    審査のポイント …… 吠え込み時の猪までの距離(直前・相当の距離・遠方)、鳴き声の迫力の有無、そもそもの鳴きの有無、など。

  3. 止め(咬み)
    猪の逃走を阻止するための「止め(とめ)」(※「とどめ」ではない)の猟芸こそ猪犬の真骨頂だ。派手に「咬み」さえ入ればいいというものではなく、その部位や頻度、「鳴き」との絡み具合に見どころがある。
    審査のポイント …… 咬みの部位(鼻・耳・頚部・脇下・前脚・後脚・その他)、そもそもの咬みの有無、など。

出場犬と大会結果

結果は出犬20頭中、ベテラン猟師の十河隆史さんのヤマ号が78点(90点満点)で優勝した。若手の上野浩嗣さんがムク号で惜しくも70点の第2位に選ばれた。そして紅一点の出犬者である宍戸優美さんはキング号で65点の第3位につけるという、昨今の狩猟界を反映したかのように、若手・女性の存在感がキラリと光った大会結果となった。

※名前は複数頭出犬のため重複

【迫真!】優勝・ヤマ号のフットワーク

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