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モーニングBセット/2月14日

住んでいる市が、消費喚起のために発行している「共通商品券」の期限が2月末で切れる。ちょっとお得にお買い物ができる券で、市内で使えるお店が決まっている。

家から歩いて5分ちょっとのところに、こぢんまりとしたコーヒー店があることを、随分前から知っていた。何度も前を通った。だけどこれまで、行かずじまいだった。
そこでその商品券が使えるらしい。どうせ遠くにも行けないし、よし、行ってみよう。思い立った日曜の朝。

個人経営の小さなお店に初めて入るのは、少し勇気がいる。
店員さんはどんな人か、座席の数は、とか、お客さんの雰囲気は、とか。
道に面している面はガラス張りだけど、外から中は少し見づらくなっていたから、なおさら。

ガラン、とドアを開ける。
「おはようございます!いらっしゃいませ!」
はつらつとした奥さまと、厨房の奥にいる旦那さま。優しそうな雰囲気のお二人。自分の親世代よりも、もう少しお年を召していらっしゃるだろうか。おふたりで切り盛りされているようだった。
新参者の私、どこに座ればよいかあたふたしていると、入口すぐの座席を案内される。着席。自分の居場所を見つける。メニューを差し出され、お腹を満たすために、少しボリュームのあるお得なモーニングBセットを注文。
フゥ、一息つく。

案内されるがままに座った座席は、思いがけず店内を一望できる席だった。
キッチンは思った以上に狭いようだった。職場の給湯室くらい。手際よく旦那さまが調理されている様子が遠目で伺える。
コーヒー豆を焙煎する機械(なんという名前なんだろう)は立派。奥さまが操作する。ガラガラガラ、と豆を挽く音が心地よい。
キッチンの向かいには、テーブル席がいくつか。お客さんは小さなお子さん連れのファミリーから、老夫婦まで(そして私)。まさに老若男女が集っていた。

こんなことを言っては大変失礼だが、パッと見た感じ、「コーヒー店」のくくりの中では、「おしゃれ」な部類でも、「純喫茶」な部類でもないこのお店(多分、私がこれまで素通りしてしまっていたのは、見た目に惹かれる部分がなかったから、というのもある)。
しかも、このお店から300m先には、おそらく相手の方が後出しなのだが、スタバがある。

だけど、負けない理由が、美味しいモーニングをいただきながらまわりを見回していると、なんとなくわかった気がしてきた。

店内からわかるコーヒーへのこだわり。いろいろな産地の豆が勢ぞろい。豆だけではなく、自宅で美味しくコーヒーを淹れるためのグッズも棚に並べられて販売されてある。さすが、「コーヒー店」。信頼できる。
そして、それだけではない。お子さんが元気いっぱいにおしゃべりしても、あたたかい眼差しで受け入れる雰囲気。デイリースポーツ(新聞の一面は阪神のキャンプ情報)を、思いっきり広げて読める気軽さ。たくさんのメニューの中に、街の名前のブレンドコーヒーがメニューに存在している、地元への密着性。
私の後に入ってきたお客さんへの対応は、「いつものでいいですか?」と。おそらく常連さんなのだろう。地元の方に幅広く愛されていることが、確信に変わった。

確かにスタバは近い。だけど「コーヒー店」という括りは極めて表面的なものであり、本質的な部分は全く異なる場所なのだ。だから両者は比べられるものではなく、混じり合わない存在同士なんだと思った。
ここは、カッコなんてつけずに、気軽に、美味しく、コスパよく、そしてあたたかく、朝を迎えられる「場所」。


私の後に来た常連さんは、モーニングBセット、厚切りトースト+100円を注文していた。
新参者、まだまだ経験値不足にござりました。今度はバターのジュワッとしみたそれを、サクッといただきたい。

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