見出し画像

孫子から考える、危機感、緊張感がない理由

こんな人は周りにいないでしょうか。このままでは大変厳しい状況になるのに、のんびりしている。計画を立てて、実行しないといけないのに、計画を立てない。一緒に計画を立てても、時間が経って「あの計画やっている?」と聞いたら、「まだやっていない」と涼しい顔。
 
こんな光景に出くわすと、「孫子」の次のような一節を思い出すのです。
 
「孫子いわく、兵とは国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。故にこれをはかるに五事をもってし、これをくらぶるに計をもってして、その情をもとむ。」
 
(戦争とは、国家の一大事である。人の死生を決める分岐点であり、国家の存亡を左右する道でるから、これを深く洞察しないわけにはいかない。だから5つの事柄でよくよく検討し、7つの計で比較分析し、敵味方の実情を求めるのである。)

 
戦争において、なぜ様々なことを検討したり、分析したりして、敵味方の実情を知ろうとするのか。
 
それは、戦争が「死生の地、存亡の道」だから、なのです。
人間、
死にたく、ありません。
滅びたく、ありません。
だから、必死になって検討したり、分析したり、敵味方を知り、深く洞察しようとする
のです。
 
一方で、「死生の地」でも、「存亡の道」でもなければ、どうなのでしょうか。
どうしても、「まあ、のんびりやろう」ということになりがちなのです。人間は弱い生き物ですので。
 
もちろん、そんな中でも、使命感や義務感から必死に考え、取り組む人もいます。しかし、残念なことに、人間はみんなそんなに立派ではありません。また、そうした気持ちがあっても、生死をかけるほどの気持ちの人と比べた時の迫力ではどうなのでしょうか。
 
もちろん、本当に生死をかける必要はありません。平和であることは絶対に素晴らしいことです。また、「このままだと生きていけなくなったり、存在することができなくなる」と過度に恐怖感をもつことも望む姿ではありません。それで精神的におかしくなるのは、本末転倒です。
 
しかし、「このままの状況を続けたら大変な状況になる」と適度な緊張感をもつことは大事です。そうした緊張感が、深い洞察のもとに計画を立て、きちんとした実行に繋がるのではないでしょうか。
 
かつてよりは経済が落ち込んでいるとはいえ、生きたり食べたりするのに困らない日本では、どこかで緊張感とは逆の力が働きかねません。適度な危機感からくる緊張感も大事ではないでしょうか。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?