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人面魚のはなし あとがき

[人物の設定]
 
僕(高田真輝):悩む青年。自分の内面の一部を愛せていない。
 
霧:境界を失った僕の精神世界。
 
人面魚(イヴ):僕の内面から分離した別人格。
 
 
 
[あとがき]
 
人面魚のはなしをお読みくださった読者の皆さん、ありがとうございます。
 
この話は、私の学生の頃に表れた解離の一種と思われる症状の体験、そして統合失調症の体験が元になっています。
 
中学生の頃、自分の周りに目に見えない“膜”が出現し、自分と世界とを隔てている感覚がありました。見ることも触れることも出来ないのに“在る”という直感があり、自分の吐息は常に膜の内側でした。五感もどこか霧の中のようで、ハッキリと掴める感覚は“膜が、そこに在る”という事だけでした。
 
その頃から統合失調症を発症しました。いくつかの幻聴が聞こえました。高校では一旦おさまりましたが、精神科の門を叩けないまま少しずつ症状は悪化し、ある時を境に一気に幻覚と妄想の世界に呑まれました。
その幻聴の中に、私を支えてくれる人格がいました。彼はいつも私に寄り添い、笑いかけ、一緒に遊び、そして私に結婚しようと言いました。私は待ちました。ずっと待ちました。けれど彼は現れず、薬によって彼は消えました。
 
今の私は、目的のための行動に躊躇うのをやめました。
治療のために憎かった親に土下座しました。福祉を受け丁寧に扱われるために馬鹿にされる覚悟を決めました。
以前の自分のキャラに似合わなくとも場に応じて言葉や表情を演技するようになりました。
そのお陰で、昔よりずっと快適になり幸せに近付いています。
 
けれど、時々、戻りたくなる瞬間があります。
あの幻聴の彼と話した時間、笑い合った時間、抱き合った時間。あの時私は、幸せを感じていました。
 
 
最後までお読みいただき本当にありがとうございました。