見出し画像

人面魚のはなし #4

第4話 齟齬

それからというもの、人面魚は事あるごとに現れる。

1人で昼食をとっている時も、歩いている時も、親との会話中や、授業中までも。いちいち僕の行動や周りの反応に口を挟んでくる。そしてやはり、それは自分以外には聞こえない。

放課後に人気の無い教室を選んで窓から中庭を眺めていると、また彼女が霧から出現した。

「貴方、しょっちゅう休んでるのね」
僕の左脇に並び窓の外に目を遣りながら呟いた。
「別にいいだろ」
「ええ、いいと思うわ」
「じゃあなんだよ」
「私も一緒に休んでいいかしら」
「1人で好きな事でもしてろよ」
「なら貴方も好きな事をもっとしましょうよ。嫌な事ばかりだから疲れるんだわ」
「別にいいだろ」
「貴方は良くないでしょう?」

「いいんだよ!正論ばっかり言いやがって!そんな簡単な話で解決できるかよ!」
僕は声を荒らげた。僕に密着していた彼女の体が少し後ずさった。
「もう口を挟むな!帰れ!二度と出てくるな!」

彼女は悲しそうな顔をして、すうっと灰色の闇の中へ溶けていった。