第9話

   毎日毎日、ケンカに明け暮れてた・・・・・・。


 怖いものなんて何も無かった・・・。
 「いつ死んだって構わない」そう思って今まで生きてきた・・・。

 気付けばいつしか、オレは裏社会の住人になっていた・・・。

 いくつかの「組」がオレに声をかけてきたが、全て断わった・・・。

 オレが望んでいたのは、ギリギリ崖っぷちのスリルだけだった・・・。
 命のやりとりの中でしか 『生』 を実感できなくなっていた・・・。

 そんな一匹狼のオレが辿り着いたのが、・・・そう、地下ギャンブルの世界だった・・・。

 今までに、2,3度、自分の「命」を賭けて勝負をしたことがある・・・。

 当然だが、今までそれで負けたことは無い・・・。 

 意外に少ないだろ・・・?

 みんなオレが本気だと分かると、勝負を降りてしまうんだ・・・。

 勝負を受けたのは、オレと同じ様に、頭の狂った連中だけ・・・。

 『B.B.C.(ブラック ブラック クラブ)』の奴らの様なナ・・・。 
      


 ・・・そんなオレが、今、本気で生きようとしている・・・。

 フッ・・・笑い話だぜ・・・。

 「オレもヤキがまわったぜ・・・」


 ・・・だが、今度ばかりは死ぬワケにはいかないんだよっっ!!

         ≪セレブ in Love ~パリスの恋~≫


 第9話 <真夜中の輪舞曲(ロンド)>


 「出口だ!!」

 ケンタロウは階段を駆け上がり、屋上へのドアに手をかけた。

 ガチャッガチャッ・・・!!

 しかし、扉はカギがかかっていた。

 「クッソォォ・・・!!!!」

 バップは渾身の力を込めてノブを回したがドアは開かなかった。

 その時、後ろから声がした。

 『・・・どけ!』

 「え!?」

 チュイーーーン!!!  ボンッ!


 ライフル銃の音と共にドアノブが壊され、扉が開いた。

 バップは驚いて後ろを振り返ったが、そこには誰もいなかった。


 (今の声は・・・)


 『やった! ヘリよ!!』

 パリスは喜びのあまり、バップの背中から降り、足を引きずりながらヘリの方へ走り出した。

 「オ、オイ! ちょっと待て!」

 『どこかに、ジョーイが準備してくれた操縦士がいるはずよ・・・』

 その時、ヘリの方から声がした。

 「お、お嬢様! お嬢様!!」


 『バ、バネッサ・・・!!』

 そこにいたのは、通訳のバネッサだった。


 『バネッサ! 無事だったのね!』

 「お嬢様こそ・・・」

 『一緒に逃げましょう!!』

 「・・・いいえ、それは出来ませんわ・・・」

 『大丈夫、助かるわ! あのヘリで脱出するのよ!』

 「でも、“一緒”に行く事はできません・・・」

 『・・・何故?』

 「ナゼなら・・・・・・お嬢様にはここで死んで頂きますから・・・」

 『・・・・・え?・・・・・』


 バネッサの手には銃が握られていた。


 「・・・なっ!?」

 気付いたケンタロウはパリスの元へ駆け出した。

 (クッソォ・・・間に合わねぇ・・・っっっ!!!)


 「お嬢様・・・サヨウナラ・・・」

 チュイーーーーーン!!!  

 「うっ!!」

 その時、あの時と同じライフル銃の音がバネッサの銃を弾き飛ばした。


 「だ、誰だ!?」

 その方向に目をやると、そこには一人の人影があった。
 

 『やれやれ、危ないとこだったなぁ・・・。』


 その声にケンタロウは驚いた。

 「・・・!!! そ、その声は・・・!!!」


 『よぉ、ケンタロウ、久しぶりだな。』


 「タ、タカシ・・・!!!?」


                第10話へつづく・・・ 

2006.09.04
 

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