彫るテクニック - 修復
紙の伸縮といえば、こんなことがありました。
那須高原の美術館で個展をさせていただいたときのこと。
新作と、完成から何年か経過した作品も含め、100点ほど展示しました。
期間は学校が夏休みになる8月を中心に3か月間。
栃木県の那須高原は、雨が降ると霧が発生し高湿度状態が続きます。
夏場はそんな状態が美術館をすっぽり覆う日が多く、紙にとっては厳しい環境でした。
会期が始まって1か月ほど経過したある日。
美術館を訪れると、懸念していた伸縮と波うちが待ってましたとばかりに
現れたのです。
それは全てではなく、わずかな数でした。
B全の作品を4点展示したのですが、そのうちの1点が大きく波うち。
他にB3とA4に伸縮が…。
展示の位置や大きさには関係なくです。
B全の波うちは、会期の後、ボンドで止めた下辺を開放して、左辺にボンドを付け替え無事修復できました。
ボンドで止めた作品は、伸縮があっても修復しやすい利点があります。
伸縮した紙までをブロック(ひと塊)で剥ぎ取り、伸縮した1枚を微調整して完了。
微調整が無理ならば、そっくり1枚彫りなおす。
ひとつの作品に同じ現象が複数カ所起きたら、その方法を繰り返せば
修復ができます。
厳密に言えば、左右、天地どちらかはわずかにズレが修復できない場合もありますが、何十枚も重ねた作品は、ほとんどわからないほどになります。
大きな作品(B2以上)を彫るとき、私は次ぎのような彫り方をすることがあります。
その彫り方とは?
次回をお楽しみに。
林敬三
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