[無料]登山の行動中に飲酒してもいいのか問題
ヤマレコで沢登りの記録を調べていたところ、やたら行動中(登攀中)にお酒を飲んでいる人たちがいました。過去の記録だけかな?と思って最近(2021年)の記録を見てみたら、飲んでない山行は無いくらい飲んでいました。必ず行動中、山頂などで全員飲む。
行動中、こんなに飲む人が今どきいるんだ!と驚いた
直接リンクを張ると「正義ぶってやがる」とか「酒くらい自由に飲ませろ」とか「勝手に晒してる」とか言われてしまうので(言われていた)、ここではリンクは張りません。
登りの途中や下山中など、行動中でも全員で飲酒しており、下山後はそのまま車を運転して移動していたりしました。記録を見ると飲んでから3時間程度しか経っていないような…。人によっては飲酒運転になりそうです。
Twitterでアンケートを取ってみた
私は登山の行動中にはお酒を飲まないようにと教えられてきたので、大変にビックリしました。もしかして実は登山で酒を飲むのは一般的だったりするのだろうか?と思ってTwitterでアンケートを取ってみました。
Twitterアンケートの仕様上、選択肢が4つしか設定できず、設問もちょっとミスった感じがありますが830票の結果が得られました。ありがとうございます。
最も多いのは、泊地到着後や下山後に飲む方で52.4%でした。次はどんな山でも飲まない方で38.2%。この中には、下界ではお酒を飲むけど山では飲まない方と、元々お酒を飲まない方が混ざっていると思われます。このアンケートに限って言えば、約90%の方は行動中には飲酒しないようです。よかった。
高尾山など緩い山、つまりハイキングレベルなら飲む方が6.4%。どんな山でも飲む方が3%でした。怒らないからと書いたので怒りはしませんが、どんな山でも酒を飲んでしまう方は、一般的には『アルコール中毒』というのではないかと思います。
肝臓をお大事に。
登山中の飲酒は自己責任なのか?
登山は自己責任の遊びと言われています。
行動中でも飲む人は「登山は自己責任なのだから、行動中に酒を飲むのも自己責任で自由だろう」とでも言うのでしょうか。
法律で規制されているわけではないのだから好きにさせろ?その様な考え方も出来なくはありません。憲法は様々な自由を保証しています。
確かに、充実感を感じながら大自然の中で飲むお酒は美味しいものです。しかし、どうしたってアルコールは脳の機能を低下させます。
人によって酒に強い弱いはありますが、酒を飲めば誰でも脳が影響を受けます(だから酒を飲むんでしょ?)。当然身体の動かし方も影響を受けます。飲めば反射神経や判断力が落ち、バランス感覚は鈍くなります。それゆえ、アンケート結果の様に多くの人は登山中に酒を飲みません。
酔っ払った本人が転倒したり滑落するだけなら自己責任の可能性もありますが、本当は飲みたくなくて付き合っているパーティーメンバーからしたら迷惑です。『あーあ、やっぱ酒飲んじゃダメじゃん』と内心思いながら仕方なくレスキューすることになります。これでも自己責任?単独なら死ぬかも?
同じパーティー内ならマシですが、酔っ払いが落とした岩や、滑落した本人が他のパーティーを巻き込んでしまったら目も当てられません。自己責任超えてますね?
飲酒した結果怪我をして救助を呼んだら、当然自己責任ではありません。自力下山したなら自己責任に収まる?家族や友人にも迷惑を掛けずに完結させることは難しいのではないかと思います。
本当のところ、登山は自己責任では成り立ちません。登山が自己責任なんてのはウソなんですよ。どうしたって他人を巻き込んでしまう。それが人間の社会で行われている登山という遊びの正体です。
だから、リスクがある登山やクライミングを楽しみつつも、取り除けるリスクを減らして安全に留意するのが登山者の義務です。なんでも自由にやっていいわけではない。
山の事故が多いと「なんで山で遊んでる連中のために俺たちの税金が使われるんだ!自己責任なんだろ!自分で対処できないのなら登山なんてやるな!」と言われるようになってしまいます(現実にそういう人はいます)。登山が社会の敵にならないためにも、山岳遭難は減らしていかなければならないのです。
それに、酒を飲んで事故って救助要請をして助けてくれた人に酒臭い息を掛けたらどう思われるか想像してみましょう。いたたまれない…。
行動中の飲酒は、普通の人にとっては取り除きやすいリスクかと思います。普通ならそのくらいの飲酒は我慢できるから。
充実感を感じながらお酒を飲むのは、行動が終わってからでもいいのでは?
酒に強いから大丈夫?
酒の強い弱いは、たしかに人によって違います。しかし飲酒運転の規定で『酒に強い人はこのくらいならOK』なんてものはありません。酒に強かろうが弱かろうが同じ条件で飲酒運転になります。
だいたい、酒を飲んで酔ってないと思ってる時点で酔ってるんですよ。酔っ払いの自己認識ほど当てにならない物はありません。いいですか?人類は酒を飲めば酔うように出来ているんです。酔うから酒を飲むんです。酔わないなら水を飲んでりゃいいでしょう。
ビール1本じゃ酔わないと言うのなら、ノンアルコールビールだっていいでしょう。結構おいしいですよ、最近のノンアルコールビール。
例えば350mlのビールには14gのアルコールが含まれています(350x0.05(度数)x0.8(比重)=14)。キリンビールのWebサイトで計算すると、男性なら14gのアルコールを分解するのに2時間48分掛かるとされます。
サントリーのサイトには、目安として摂取したアルコール量(g)を4で割った時間程度は運転しないようにしましょう、と書かれています。
14gのアルコールを4で割ると3時間半となります。体質の違いはあるにしても、最低限このくらいの時間はあけた方がいいのでしょう。
自動車の運転は命に関わる行為だから法律で飲酒運転が禁止され、アルコールの分解時間も目安が出されています。
登山も命に関わる行為と考えるのなら、運転と同じくらいは飲酒に対して敏感になったほうがいいのではないでしょうか。法律で規制されているかどうかは別にして。登山者の良識として。
飲酒運転と同等に考えるなら、ビール350ml缶を飲んだら3,4時間程度は休憩してから行動したほうがよいでしょう。無理?そんな時間ない?だったら行動中には飲まないほうがいいんじゃないですかね。
そんなに酒が飲みたいなんて、わけがわからないよ。
水分補給の点でもよくない
ビールなどアルコール飲料は利尿作用がある点でも登山に不利です。ビールなんて飲めば飲むほど利尿作用で水分が失われます。やはり、下山してお風呂に入った後などに飲んだほうが気持ちよく安全に、美味しく飲めます(ビールを飲む前や同時に水分も補給しましょう)。
やっぱりもう少しだけ我慢しませんか?
ちなみに私の山仲間は、
私の山仲間、友達、先輩、ガイドさんなど多くの関係者で行動中に飲酒する人は一人もいません。相当な酒飲みもいますし、私も2020年までは家でもお店でもよく飲む方でしたが、行動中の飲酒はしません。
みんな、飲酒に関してはケジメがしっかりしており、泊地に着いて小屋なら受付、テントなら設営など済ませて安全が確保されたら解禁となります。
下山後も、林道など全て歩き終えて山行が完了するまで飲酒しませんし、車で帰る場合は全員家に帰るまで飲みません(ドライバーに気を使いますよね、普通)。
運転に関しても甘い方がいるようで…
ついでに、『缶ビール350mlを1本飲んだあと、何時間後に車を運転してもいいと思いますか?』という質問もTwitterでしてみました。
ほとんどの方はこの飲酒量でも6時間以上空けると回答しましたが、すぐに運転する方が1.8%で、この人たちは完全に飲酒運転です。マジで?選択ミスじゃなくて?500票の1.8%なので9人はここに投票したようです。
3時間で運転する方も7.2%いますが、人によっては飲酒運転になる可能性があります。安全を考えたら4時間程度は空けたほうがいいんじゃないでしょうか。6時間空ける91%の人は安全志向が高く、とても良いと思います。
上記のように、350mlのビールを飲んだら、少なくとも3時間~3時間半は運転しないほうがいいとされています。昭和じゃないんですから、飲酒登山も飲酒運転ももう少し気をつけたほうが令和の人類らしいと思うのですがいかがでしょうか?
(まぁ、飲むことをやめられない人は「うるせーよ」とか思うのでしょう。ガチの飲酒運転はホント、やめたほうがいいっすよ)
一緒に登ってる人が行動中に飲む人だったら
そういう人と一緒に山に行くのはやめることをオススメします。とりあえず「行動中のお酒はやめませんか?」と提案してみましょう。それでやめてくれれば一緒に登ってもいいと思いますが、言っても聞いてもらえないのなら一緒に登るのはやめた方がいいです。いつか事故に巻き込まれます。
登山はパーティーメンバーお互いの命が掛かっています。大げさ?いえいえ、高尾山だって奥多摩だって遭難して死ぬ人はいます。命が掛かってる遊びを一緒にする人はよく選んで、嫌だなと思ったら一緒に行かないほうがいいです。大丈夫、山の仲間なんてすぐ見つかりますから。
あなたが飲酒登山をする人だったら
やめたほうがいいですよ。登山か、行動中の酒かどっちかを。
仲間も行動中に酒を飲んでいる?山頂で?その人たち、みんな本当に飲みたいと思って飲んでるんでしょうか?中には、断れなくて仕方なく飲んでいる人もいるかも知れません。だって、9割の人は行動中に酒を飲まないんですから。
嫌々かも知れませんよ?飲みたいと思ってるのはあなただけだったりして。
ヤマレコの質問箱から『山行中の飲酒』
詳しくは下記リンク先を読んでいただくとして。
多くの方は行動中の飲酒をNGとしています。まぁ、普通ですね。逆に、自由な登山や愚行権を理由に、行動中の飲酒を禁止するのは反対という意見もあります。
『(引用)山頂ビールを取り締まったり禁止したりしてしまい、そのような圧力が当たり前になってしまうと、登山自体がタブーとなってしまいかねません。非登山者にとって登山は愚行意外の何物でもありませんから。』
考え方が逆です、逆。登山自体がタブーにならないために、登山の事故は減らさなくてはいけません。飲酒に限らずですが、登山で事故が起これば登山をしない人は「迷惑だ!規制しろ!自己責任なら救助費用も負担させろ!」と言い出します。
登山の事故は、出来れば起こらないほうがいいのです。事故さえ起こらなければ非登山者が「迷惑だ!」なんてことは言わないでしょう(言う理由も機会もない)。飲酒による山岳遭難が起きているなんて発覚したら、本当に法律で規制されるかも知れません。
事故を起こさないために、行動中の飲酒くらいは我慢してください。
愚行権や自由と言っても、何をしてもいいわけではありませんよ。法律で規制されないと我慢できませんか?
まとめ
登山の行動中にお酒を飲むのは、登山のリスクを無駄に高めてしまいます。
登山に自己責任なんてありません。出来るだけ迷惑を掛けないように、リスクを取り除きましょう。行動中の飲酒は意志の問題なので取り除きやすいリスク要因です。
酒に強いとか弱いとかは関係ありません。どんな時でも飲みたくなってしまうのは、すでに自制心を酒にやられてます。アル中です。
せめてノンアルコールにしませんか?
350mlのビールを1本飲んだら3、4時間は運転をしないほうがいいとされています。登山も同様です。命が掛かっている遊びをしているのだと忘れないでください。登山の事故はなんてことない登山道でも起きています。むしろ、なんてこと無い道のほうが多いくらいです。
故・宮田八郎さんも同様のことを書いてます。
もし、一緒に登ってる人が安全管理や飲酒などの点で合わないなと思ったら、一緒に山に登るのはやめましょう。命を掛ける遊びを一緒にする人はよく選びましょう。
もし、飲酒習慣について知らずに一緒に山に登った人が山頂などで酒を飲み始めて、指摘してもやめないとしたら、私ならもう二度と一緒に山には登りません。今どき※、それくらい飲酒登山は非常識ということ。
飲酒登山なんてやめたほうがいいっすよ。
※『今どき』と書きましたが、聞いてみると昔の山屋さんも行動中にはお酒を飲まなかったそうで、時代の問題ではなさそうです。もうちょい古い山屋さんに聞いてみようかな。
わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。