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[無料]2020年の『山岳遭難の概況』の感想

毎年6月に警察庁から発表される『山岳遭難の概況』が出ました。近年は6月の第3木曜日か金曜日に出ているようです。

↓下記リンクから見られます。

遭難件数、遭難人数

件数は2294件、遭難者数は2697人でした。

前年が2531件の2937人だったので、およそ10%の減少となりました。新型コロナウイルスの影響で登山者が少なかったはずなので(実際の登山者数の統計はまだありませんが)、その影響で減ったものと思われます。

が、もっと減ると思っていたので予想より多かったなと思いました。

小まとめ:山岳遭難は昨年比1割減った。

死者・行方不明者

241人の死者と37人の行方不明者が出ました。合計278人。

前年は死者267人に行方不明者32人で合計は299人。遭難者数の減少と比べると減少幅が少なく7%減。遭難者数ほど死者が減らなかったということです。行方不明者に限って言えばむしろ増えています。単独行者が多かったのでしょうか?

小まとめ:死者・行方不明者は昨年比7%減った。

都道府県ごとの比較

登山者減によると思われる遭難者減があった都道府県もあれば、逆に増えている都道府県もあります。増減が多かった(30%程度の変化があった)のは下記の都道府県です。

3割以上遭難件数が増えた都道府県
宮城県 25→38件 1.5倍
茨城県 11→28件 2.5倍
神奈川県 104→144件 1.4倍
福井県 10→15件 1.5倍
愛知県 25→38件 1.5倍
大阪府 6→15件 2.5倍
山口県 5→10件 2倍
高知県 4→7件 1.75倍
福岡県 33→44件 1.3倍
鹿児島県 18→33件 1.8倍

3割以上遭難件数が減った都道府県
山形県 77→55件 0.7倍
福島県 80→54件 0.67倍
新潟県 109→76件 0.7倍
山梨県 165→111件 0.67倍
長野県 265→183件 0.7倍
静岡県 90→34件 0.4倍
富山県 147→74件 0.5倍
石川県 32→24件 0.75倍
島根県 12→9件 0.75倍

傾向としては、東京から遠く、北アルプスや南アルプス、富士山などの高山を持つ都道府県の遭難件数が減って、丹沢や筑波山などの低山を持つ神奈川県や茨城県の遭難が増えています。大阪、愛知、山口、高知、鹿児島などもかなり増えていますが、低山の登山者が増えたりしたのでしょうか?

奥多摩を持つ東京都の遭難件数も増えたのかと思ったら、これは106件→110件と微増でした。奥多摩は普段から登山者が多いし、去年もさほど登山者が減らなかったのかも知れません(想像ですけど)。

小まとめ:高山での遭難は減ったっぽいけど低山では増えた。

目的別

登山目的で登った人の遭難が75%程度と、これはいつもと変化ありません。

小まとめ:山岳遭難の75%は登山目的。

遭難態様別

転倒、滑落、転落などの遭難態様は件数も割合も減ったのですが、代わりに道迷い遭難が1142人から1186人に増え、割合も44%に増えました。

従来は38%程度だったので、割合の増加率としては16%増です。スマホのGPSアプリが普及すれば道迷い遭難は減ると思っていましたが、なかなか予想通りにはいかないものですね。

遭難のニュースを見た感じだと、地図も読めないしGPSアプリも使っていない、存在も知らないような登山者が気軽なハイキングのつもりで山に入って道に迷ってしまったというケースが多そうです。

小まとめ:道迷い遭難の件数は変わらず、割合は増えた。

お願いですから、スマホのGPSアプリを活用してください。

地図を読めない人が山に入るのはとても危険です。最低限の知識は身に付けましょう。

年齢別遭難者

従来通り、50代以上で66%、40代以上で78%の遭難を占めており、中高年が遭難の主体となっています。2020年は特に70代が13%増、20歳未満が12%増と、年齢層の上と下が増えています。

遭難者数としては前年から少し減っていますが、70代の遭難者は636人と遭難の23.6%を占めており、60代と70代を合わせると42.5%を占めます。やはり中高年、特に『動けてるつもりで動けてない60代と70代』の方はご注意ください。いつまでも自分の体力を過信してはいけません。

今後も遭難者の高齢化は続くと予想され、団塊の世代が登山を引退するまでその傾向は維持されると思います。

死者・行方不明者は70代が34.5%、60代が24.8%で合計59.3%。80代の13.3%を足せば実に7割以上を占めます。70代以上の方は山で死なないように、余裕がある計画を作ってください。

小まとめ:山岳遭難の多くが中高年、死者・行方不明者の7割が60代以上。

単独登山者の遭難

単独遭難者は1086人。前年は1117人なので3%減です。遭難者が10%減っているのに単独遭難者は3%しか減っていないという事は、全体の傾向より減らなかったという事です。

全遭難者に占める単独遭難者の割合は40.3%。前年は38%、その前は37.4%、更に前は34.4%、33.7%なので毎年割合が増えています。コロナの影響で単独行者が増えてたりするかも知れません。

全遭難者の死者・行方不明者は278人で、単独遭難者は172人なので、死者・行方不明者の62%が単独遭難者ということになります。単独で遭難するととても死にやすいので注意してください。

単独遭難者は全員ココヘリに入ってください。登山計画を出していれば短時間で正確な位置を特定してくれます。生存率がかなり高くなるはずです。

小まとめ:単独遭難者はあまり減らなかった。

ココヘリ無しで単独行は今どきあり得ません。特に単独での遭難はベテラン男性に多いと言われています。単独中高年ベテラン男性はココヘリ必須です。

通信手段

79.1%が携帯電話からの通報で↓。年々携帯電話の割合が上がっており、来年は80%を越えるかも知れません。

携帯電話は電池が切れたら役に立ちませんから、登山の際は必ずモバイルバッテリーを持ってください。充電忘れ、ケーブル忘れ、ケーブルの破損に注意してください。

小まとめ:通信手段として携帯電話が重要

2021年の遭難予想

・今年もまだコロナの影響は残り、高山での遭難は減ると思いますが、低山での遭難は増えるでしょう。低山での道迷い遭難にご注意ください。

・2020年の人出と比べると今年は山にも街にも人が出ているので、遭難件数は増えると思います。2019年と同水準の2500件、3000人弱に戻るのではないかと思います。

・まだまだ単独中高年ベテラン男性の遭難、特に死亡や行方不明は減らないと思われます。該当する方はココヘリに入ってください。

まとめ

・登山者が減ったので遭難者も減ったけど、10%減にとどまった。

・都道府県別から推測すると、高山での遭難が減って低山での遭難が増えた。

・道迷い遭難が増えて態様別の割合も大幅に増えた。

・単独中高年登山者がヤバイのは従来の傾向のまま。

あまり「山を舐めるな」という言葉は好きではないのですが、山はミスをすればケガをしたり運が悪ければ一発で死んでしまう場所です。低山でも高山でも危険な場所は多くあり、標高300mの山でも10mの崖から落ちれば死にます。

そういう、危険な場所で遊ぶのが登山です。登山は非常に楽しい遊びですがリスクもあります。正しく山の事を勉強すればリスクを減らせます。

痛い思いをして家族や友人を心配させ、救助隊にも手間やリスクを負わせるのは本意ではないでしょう。遭難なんてしない方がいいに決まってます。無知で山に登ってはいけません。

最低限、このくらいは読んでおいてください。

今年は残り半分。残りも安全登山を心がけて、来年の統計はもっと減った結果を見られるとよいのですが。

わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。