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[無料]山の水、そのまま飲むか消毒するか問題

登山では水が重要です。人間、多少食べなくても死にはしませんが、水が不足するとたちどころに動けなくなり、死んでしまいます。だから必要な分の水を担ぐのですが、当然多くの水を持てば重い。3リットルの水は3kgあります。

日帰りなら多くても2リットルほど担いで行けばいいのですが、何日もテント泊をするような場合は全行程分の水を担ぐのは無理です。途中の水場で補給することになります。

山の水場とは?

水場の場所は山と高原地図などに載っていますが、水場の状態や水が出ているか、出ている水が飲める水なのかどうかは行ってみないとわかりません。

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これは奥多摩の酉谷山避難小屋の水場。時期によって水量が変わります。上は2018年の4月で下は2015年の11月です。最近の水場情報を調べるには、ヤマレコなどの山行記録が役に立ちます。

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下の写真は酉谷山避難小屋の東にある一杯水の水場。涸れがちと言われていますが、2回行って2回とも水が出ていました。

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下の涸れてる水場は鴨沢から雲取山に向かう途中にある茶煮湯の水場。冬は涸れます。出ている時に行った水質検査では最近も有機物も検出されず、非常にキレイな水と分かっています。

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同じく雲取山に向かい途中にある七ツ石の水場。この水場が涸れているのは見たことがありません。とても美味しくて何度も水を汲ませてもらっています。

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下の写真は、川苔山の百尋の滝の手前にある水場。岩に刺さったパイプから水が湧いており、これも涸れたところを見たことがありません。非常においしい水が年中出ています。

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以上のように、基本的に山の水場とは、岩や地面に刺さったパイプなどを通して取水しやすいように作られていて、出てくる水は清水や伏流水です。有志や山小屋の方が整備してくれています。

沢の源頭では、整備されたものではなく地面の穴などから湧き出している場所を見ることが出来ます。

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沢の水も飲もうと思えば飲める?

これ以外にも水を得る方法として、流れている沢の水があります。沢登りでは水の中を歩いていくわけで、一見水は豊富にあり持っていく必要がないようにも見えます。

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ただ、一般的には上流に山小屋がある場合はトイレの問題から生では飲まないほうがいいとされています(最近のトイレは垂れ流しではないので気にする必要は無いのかもしれませんが)。

また、山頂が近い場所の沢水は大腸菌やアンモニアなどが多いという報告もあります。山頂近くで休憩して用を足す人がいるという事ですね。

下記リンクは2002年の調査ですが、都岳連が御前山で水質調査を行ったものです。

登山者が増えると水質が悪化する傾向があるという結果が出ています。もう20年前なので現状とは違うかも知れませんが、山頂下の水場や沢では水質を気にしたほうがいいかも知れません。

また、地表を流れている間に動物の糞や死骸で汚染されることも考えられます。北海道ではエキノコックスがあるのでまず沢の生水は飲まないでしょう。最近は愛知県でエキノコックスが見つかったという報告もあります。

山小屋で得られる水

無雪期の山小屋では、たいてい山小屋の前に水場があります。中には水場がちょっと離れている小屋もありますし、稜線など水が得にくい小屋では雨水(天水)を溜めて濾過したものを使っている小屋もあります。

主に冬ですが、小屋の水場が凍って使えない時期は山小屋に水タンクが置かれ、その水を飲みとして使えたりもします。中身は凍った池の水や、無雪期に貯めておいた湧水など様々、小屋によって違います。

私は小屋の水場の水はそのまま飲んでいます。雨水の場合はそのまま飲みたくないので煮沸か浄水器での濾過をしたいところですが、今のところ雨水式の小屋の水を飲んだことはありません。

丹沢の蛭ヶ岳山荘など水場が無い小屋では、飲み水はペットボトルの水を販売するのみだったりもします。2リットルで1000円とか、そのへんだったと記憶しています(500mが500円なので2リットルを買う方がお得です)。

雨水は無料で提供されていたので、浄水器で浄水して使うという手もあります。

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積雪期テント泊の水

積雪期のテント泊では水がなくなったら雪を溶かして飲み水にします※。考えてみれば雨水と同じ様なものですが、気にせずそのまま飲んでいます。

行程が短いときは水作りの時間やガスがもったいないので、多めに水道水を担いでしまうこともありますが、荷物を軽くしたいなら雪を溶かして水を作ることになります。

以前、モンブランを登るためにフランスに行った時、行動中に雪を食べたらフランス人のガイドに「公害で汚いからそんなもん食うな」と言われました。確かに…。

気になるなら浄水器を通すといいんじゃないでしょうか。私は、今のところ気にせず濾過せず飲んでいますが。

※…山小屋のテン場なら山小屋が提供する水をもらえたりもします。雪山では正規のテン場以外でもテント泊をすることがよくあります。その場合、水源は雪しかありません。

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山の水を生で飲むのか消毒するのか問題、個人的には

以上を踏まえて、山で得られる水を生で飲むか飲まないかを考えてみましょう。私個人はこのように判断しています。

水場で得られる湧き水
そのまま飲んでいます。消毒も浄水もしていません。ただ、実際に飲むときはスポーツドリンクの粉やクエン酸を混ぜています。クエン酸で酸性になるのである程度は殺菌されていると言えなくもありません。

小屋で得られる水
これもそのまま飲んでいます。水をどこから取ってきたかは小屋次第ですが、山小屋を信じています。

雪を溶かした水
そのまま飲んでいます。ガスで沸かしてお湯にしてもいいのですが、雪の場合気になるのは細菌やウイルスではなくチリやホコリです。それらは沸騰しても消えないので意味がないと思います。気になるなら布や浄水器で濾しましょう。

地上をだいぶ流れてきた沢の水
飲むなら浄水器を通します。遭難などして、どうしても飲まざるを得ないのならそのまま飲みますが、基本的には浄水器無しでは飲みたくありません。

沢登りの本を読むと、沢の水で素麺や蕎麦をすすいていますが、私の感覚からすると気持ち悪いので避けたい食べ方です。プールの水で素麺食べるようなもんじゃないですか(細菌などの数からしたらプールの方がキレイかも)。

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Twitterで聞いてみた

山の水について、みんながどう思っているのか気になったのでTwitterのアンケート機能で聞いてみました。24時間で457票の結果を得ることが出来ました。ありがとうございます。

多数派は、私と同じ『湧いている水なら飲む』が約45%でした。意外だったのは、どんな水も消毒する人達で、約40%でした。少数派は地上を流れてきた沢の水でも飲む人で、本流(流れが多い)と支流(水が少ない脇からの流れ)の水を飲む人を合わせて15%程度でした。

私は、湧き水ならそのまま飲んでも平気だろうと思っていたので、湧き水も生で飲まない人が4割もいたのはちょっと驚きました。が、気にする人もいるんだなと気づくことが出来てよかったです。

浄水方法

沢の水を飲水にしたり、湧水でも気になる場合は煮沸や浄水をすることになります。煮沸は沸かして冷ましてという時間的な手間もありますしガスも使うので、一般的には浄水器がお手軽でしょう。

私はスーパーデリオスという小型の浄水器を持っています。沢登りの途中で使ったことがありますが、安心して飲める水をいくらでも作れるので重宝しました。

ボトルに入れた水をフィルターで浄水するタイプの浄水器です。

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フィルター部分はペットボトルと互換性があるため、実質的に必要なのはフィルター部分だけ。

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重さは40g程度です。軽いし、これで安心して飲める水が手に入りやすくなるのであれば軽いものではないかと思います。使い終わったら水ではなく空気を通して水抜きをして乾燥させればしばらく使えると思います。なにも入れていないペットボトルなどをセットして押せば水を抜けます。

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浄水器以外の方法では、ピューラックスやミルトンなどで消毒する方法もネットで紹介されています。

1リットルの水に数滴垂らして30分程度置けば殺菌できるとされています。浄水器を通すより手間が掛からず、良い方法かと思います。

が、水に混じったゴミなどは漉せないのと、ピューラックスなどの次亜塩素酸ナトリウムは徐々に分解されて濃度が変わってしまうため管理が面倒ではあります。

ピューラックス自体は家にあるのですが、今のところ山で使用して水を飲んだことはありません。

上記のように、煮沸、浄水器、消毒薬などで山の水を浄水できます。湧き水でも気になる方、沢の水を飲まなくてはいけなくなりそうだけど飲みたくない方は参考にしてください。私は、沢登りには浄水器を持っていくことにしています。40gなら十分軽いと思います。

飲水とは別に小さいペットボトルに水道水

最後に。私は飲水とは別に小さなペットボトルに水道水を入れて登山に持っていきます。なんのための水かと言うと、傷を洗うための水です。

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中身の水は毎回入れ替えています。

湧水や沢の水で洗えばいいじゃないと思うかも知れませんが、どうしたってそれらの水には細菌などが含まれます。特に沢の水は傷を洗うには汚すぎます。飲める湧水でも大きな傷を洗うには不適切です。傷を洗う水は殺菌された水道水が適しています。

洗浄用の水と、穴を開けたペットボトルのキャップがファーストエイドキットに入っていて、洗浄するときは穴あきキャップを付けます。

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穴あきキャップだと小さな穴から勢いよく水を出すことが出来るので、少ない水でも傷を洗うことが出来ます。

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この水はどんな山行でも可能な限り最後まで飲みません。下山してから家で捨てて次回はまた新しい水道水を詰めて持っていきます。本当に水が無くなって死にそうなら飲むかも知れませんが、今のところ途中で飲んだのは1回だけです(それでも全部は飲みません)。

まとめ

水に関する価値観は様々です。私は湧き水はそのまま飲んで、沢の水は浄水器を通したいのですが、湧き水も消毒したい人を否定するつもりはありません。安心して飲める水はとても大事です。物理的衛生も精神衛生も大事。各自が好きなように安心して飲める水を求めればいいと思います。

「え?この湧き水ならそのまま飲めるよ?飲まないの?神経質だね」なんて言わないように注意していきたいと思います。

わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。