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[無料]家族が登山で遭難したら?そして、自分が行方不明にならない方法

家族が登山に行って帰ってこなかったらどうしたらいいのかをまとめます。え?低い簡単な山にしか登らないから関係ない?とんでもない!低い山でも十分人は死にます。標高300mの山だって落差10mの崖はいくらでもありますし、5mでも落ちたら怪我か死亡のリスクがあります。50cmの段差でも十分怪我をします。低山でも行方不明になったら探すのはとても困難です。遭難リスクが無い山などありません。


1.本人に連絡を試みる

帰ってこないのは心配だと思いますが、単なる下山遅れかも知れませんし、安全にビバークして翌朝帰ってくるかも知れません。まずは電話やメールで連絡を試みてください。連絡が取れないので心配して通報したら、とっくに下山してホテルで寝ていたという例もあります。

予備日が設定されているなら予備日が終わるまで待ってみる、本人が「これ以上遅れたら通報してください」とリミットを決めている場合は、リミットまで待ってみるのもよいでしょう。通常は、日帰りなら翌日の昼くらいまでは待ってもよいと思います。

2.登山者の情報を整理する

待っても下山連絡が無い、どうも遭難したらしいと言う事になったら、まずは状況の整理をしてください。いきなり警察に通報しても、なにも分からないのでは探せません。

  • どこの山のどのコースに登ったのか?メールやLINE、メモで残っていないか?

  • 誰と行ったのか?山岳会なのか友達同士なのか?連絡先は分かるのか?

  • ココヘリに入っているか?ココヘリのIDは分かるか?

  • 携帯電話の番号をキャリアはどこか?携帯キャリアの基地局から位置を推定できる場合があります。

  • 当日の使用装備や服は?家から無くなっているザックや靴は何か?可能なら朝の服装を写真に撮っておく。持っている装備の写真を撮っておくとよいでしょう。

  • マイカーで行ったのなら車種、色、ナンバー。

  • 本人の写真、身長、体型、性格など。

  • 登山SNSのアカウント。位置を取れる可能性もありますし、好みの登山形態を推測する手がかりになります。

  • 山岳保険や捜索保険に入っているか?(これは後でもいいけど)

この辺の情報は普段から意識して整理しておくとよいでしょう。

ココヘリは入会時にココヘリの受付用電話番号が書かれた紙が配られます。そこに自分のIDを書いて、私は冷蔵庫に貼ってあります。ココヘリに入っていて、正しく使えていたなら見つかる可能性が非常に高くなります。ココヘリに入っているのならココヘリに連絡してみてください。相談に乗ってくれるはずです。

もし家族が行き先も告げずに山に行ってしまう人なら、どこに行くのか残しておくように言ってください。それが分からないと探すのがとても大変です。

3.警察に通報する

本人が警察に通報できない状況なら、家族が警察に行方不明者として通報することになります。通報しないことには捜索も始まりません。最寄りの警察署に行って相談すると早いかも。

警察の対応は都道府県によって違って、捜索の方法も技術レベルも様々な様です。山岳県と山が無い県で違いが有るのは仕方ないんですかね…。

警察は、山に行ったのか分からないとまずは普通の行方不明者として捜査を始めるそうです。その場合、自宅やパソコン、車のトランクに血痕が無いかなどを確認されます(状況や警察官も依ると思うが、まず家族が疑われる)。山に行ったのが確定している場合は、おそらく登山計画書の確認などを行うかと思われます。家族が遭難した経験は無いので詳しくは知りません。

警察や消防の捜索は、基本的に72時間で打ち切られます。探し方や探す場所は色々だそうです。

4.民間救助団体に相談してみる

警察・消防の捜索が打ち切られると、頼れるのは民間の捜索団体となります。民間なので当然お金は掛かりますが命には替えられないでしょう。ココヘリに入ってる場合は、ココヘリの捜索チームが探してくれます(条件が揃わないと探せないこともありますが)。ココヘリに入っておくのはとても大事です。

民間救助を使った場合、捜索には多額の費用が掛かります。山岳保険に入っているか、支払い条件はどうなっているか確認してください。

5.SNS(インターネット)に頼る

TwitterやFacebookなど、SNSの力で救助された例もあります。SNSで情報提供を依頼する場合は、下記の情報を提供してください。

  • 捜索願を出した警察署の名前と連絡先。これらが無いと騙りの可能性を排除できないため、拡散されにくくなります。

  • 本人の服装、装備、出来れば全身が写っている写真。

  • 登山計画があるなら計画、概要しか分からないなら出来るだけ。

  • 捜索済みエリアの取りまとめ。地理院地図で作図出来ます。KML形式で保存できるのでファイル共有すると捜索の役に立ちます。拙作のジオグラフィカはKMLファイルのインポートと表示が可能です。

  • 携帯キャリアはどこか?キャリアが分かるとサービスエリアから捜索エリアを絞れる可能性があります。例えば、連絡がない場合は圏外の場所を優先的に探すとか。

  • 登山SNSのアカウント。家族が登山について知らないとしても、歩いているコースから好みや傾向が分かるかも知れません。バリエーションルートが好きな人と一般登山道しか歩かない人では進むコースが全然違います。

  • 当日の山行記録を登山SNSで探すと、第3者の記録に本人が写り込んでいることがあります。見つけたらその記録の作者に連絡を取って見てください。写り込みがない場合でも、通過時刻が近いユーザーに情報提供をお願いするとよいでしょう。

解決したら

SNSに頼った場合、解決したなら速やかに発見の報告と拡散の停止(拡散希望で書いた投稿の削除など)を行ってください。停めないと延々と拡散が続いてしまいます。その結果、解決済みなのに捜索に出かけた人が二次遭難してしまうかも知れません。状況によっては気が回らなくなってしまうかも知れませんが、依頼者本人からの確定情報が必要です。拡散の停止を忘れないでください。

また、後日でもいいので出来れば救助された場所や状況、遭難の経緯、原因なども投稿してください。生きて救助されたのなら本人による手記がベストです。今後の登山者の遭難防止に役立ちます。インターネットを利用したのなら、インターネットに還元してください。

SNSで捜索情報を拡散、反応する側の留意点

  • 拡散する情報の真偽には常に気を使ってください。デマや拡散してはいけない情報かも知れません。真実だと思ったらリツイートなどで拡散してください。多くの人の目に触れれば有用な情報が集まるかも知れません。

  • 解決したら速やかに情報発信を停止しましょう。リツイートを削除する、解決した旨をツイートするなどしてください。解決したことを知らない人が暴走することもあります。解決した旨も発信してください。ただ、本当に解決したかどうかも真偽の判断が必要です。

  • 有用な情報提供をしましょう。遭難者の家族が本当に求めているのは「自分が遭難者を見かけたなどの有用な情報」で、素人考えのアドバイスや励まし、お祈りの言葉ではありません。「励ましのお言葉嬉しいです」とは言うかも知れませんが次第に負担となりますし、有用な情報が埋もれてしまうかも知れません。リプライを送るべきかはよく考えましょう。

  • 素人が考えるような事は警察や民間救助隊は知っていますし、対応しています。送るべきアドバイスなのかよく考えましょう。

  • まして、家族のアカウントに罵詈雑言を送りつけるなんて人道から外れてます。徳が低い行為はやめましょう。そういう心根で生きていると、いつか代償を払うことになります。今からでも間に合うので、他人に罵詈雑言を浴びせない人になってください。

行方不明にならないために、登山者本人がやっておくべき準備

一番大事なのは、登山をする本人がしっかり準備して遭難しないこと、遭難しても自力によって短時間で解決することです。

  • 自分の情報をまとめて家族に伝えておきましょう
    捜索を開始するときの負担を減らしましょう。

  • どこの山のどのコースに行くのか、文字情報で残しましょう
    登山計画を出しましょう。余裕のある無理のない計画を作ってください。コンパスで提出し、緊急連絡先を登録しておけば下山しない場合に自動でメールが送られます。特に一人暮らしで行方不明になった事が気づかれにくい方はコンパスで計画書を提出しましょう。どんな低山に行くときでも、絶対に計画を提出し、家族と共有してください。下山したら速やかに下山連絡をしてください。

  • ココヘリは必須です
    単独で山に入る人、特にベテラン中高年男性は全員、今すぐココヘリに入ってください。単独で登山をしない人もココヘリに入りましょう。パーティからはぐれる事もあります。jROと合併したことにより捜索費用も550万円まで補填される様になりました。100万人が入っていてもおかしくない神サービスです。登山が趣味なのにココヘリに入らないのは、ちょっと意味がわからないレベルです。

  • Googleマップなどで位置共有をしてください
    電波が通じる場所ならピンポイントで位置が送られます。下記の説明通りにやれば出来ます。共有したらスマホの位置情報サービスは切らないでください。常にオンにして居場所を家族と共有しましょう。オフにすると、絶対にオンにするのを忘れます。

ヤマレコのイマココなど、登山用のアプリによって位置情報を送ることも出来ます。Googleマップは登山をしない人のスマホにも大抵入っているので私は推奨していますが、登山アプリの機能を使ってもよいでしょう(ただし使い方をよく教えておいてください)。家族と位置共有をしておけば行方不明時に絶対役立ちます。

  • 機内モードにしない
    上記のGoogleマップの位置共有など、位置を送信するためにはインターネット通信が必要です。位置送信をするなら登山中はスマホを機内モードにしないでください。機内モードを切るのを忘れて連絡が取れないと、家族が心配します(そのまま捜索願を出されてしまうこともあります)。

  • モバイルバッテリーを必ず持ちましょう
    山中では機内モードにしないとスマホのバッテリーがよく減ります。モバイルバッテリーは必須装備です。充電忘れ、ケーブル忘れ、ケーブルの種類間違い、ケーブルの断線に注意してください。予備を持っておくとベター。おすすめモバイルバッテリーはコチラです↓

  • 登山についてよく学んでください
    錚々たる有名な高峰を登ってるような人でも地図が読めない、コンパスが使えないという方がいます。無知で登山を続けていると、初見の地雷を踏み抜いて死にます。

  • よく地形やコースを理解して歩きましょう
    事前に登る山について地図を見て、自分がどういうコースを歩くのが概要を頭に入れてください。行動中もこまめに現在地を確認して、先の地形を想定しながら歩いてください。登山道を歩いていればそれほど酷いことにはなりませんが、登山道を外れると遭難リスクが跳ね上がります。違和感に気づくために事前の読図や現場でのナビゲーションを行うのです。

  • 最低限3日間は生き延びられる装備や技術が必要です
    ココヘリに入っていても、遭難時点から捜索が始まるまでには24時間程度かかると思ってください。行った山域が分からなければ尚更時間が掛かるか探せません。雨具はもちろん、ツエルト、ヘッドランプ、ファーストエイドキットは持ちましょう。持つだけでなく、使えるようにしておきましょう。登山当日が晴れでも3日後は雨や雪かも知れません。天気が悪ければ救助のヘリも飛べませんし、人間が登って救助するのも困難になります。そういう状況でも生き残れるようにしてください。

  • 笛や鏡も有効に使いましょう
    笛を吹けば捜索隊や近くの登山者に届くかも知れません。ザックの胸ベルトが笛になっている場合もあります。ヘリが飛んでいるなら、鏡やスマホの画面で太陽の光を反射させて位置を伝えられるかも知れません。

  • 携帯電話が繋がるなら自分で通報してください
    携帯圏内で遭難したのなら、遭難者が自分で110番をしてください。スマホの位置情報サービスはオンにしてください。警察に通報すれば自動でスマホの位置情報が送られて現在地が判明します。ただし、位置を絞り切るにはある程度の通話時間が必要です。だからモバイルバッテリーは必須なのです。

  • 基本はセルフレスキューですし準備が大事です
    どうしても行動不能なら仕方ないですし、現在地もわからないし地図も持ってない、読めないのならどうしようもありません。助けを呼ぶか待つしかない。しかし、登山の基本はセルフレスキューです。助けが来なくても自分の力で生き延びられる装備や技術を持ちましょう。他人に命を預けてはいけません。危機的状況にならない様に準備し、慎重に行動し、遭難しないように努力しましょう。雨の日は登山をしないという人もいますが、雨の山を歩く経験も必要です。遭難して翌日雨が降り、それが初めての雨天登山では対応出来ません。普段から備えて、条件が悪い場合でも安全に登山できる人になりましょう。

  • 尾根やピークは携帯が繋がる可能性があります
    携帯の電波は意外と遠くまで飛びます。ただし地形の影響は受けて、谷や斜面では通信しづらくなります。遠くまで見通せる尾根やピークは通信出来る可能性が上がります。下山は出来ないけど歩ける場合は地形を見ながら上を目指してください。携帯が繋がれば通報や家族への連絡が可能になります。

  • 登山中は風景と一緒に他人も写しておきましょう
    人がたくさんいる場所では人間も写すようにしてください。SNSに載せるためではなく、行方不明者の捜索用として撮っておくと、後で誰かの役に立つかも知れません。すれ違った人、追い抜いた、追い抜かれた人についても服装などを覚えておいてください。

  • 挨拶をしましょう
    すれ違った人と挨拶をするのは、お互いに顔や服装を覚えておくのに役立ちます。挨拶は人の為ならず、自分を覚えておいてもらうためと思って積極的に元気よくしましょう。

まとめ

登山は危険な遊びです。だから楽しいのですが、死ぬ可能性がある遊びをしているのだと自覚しましょう。常にリスクを想像してください。登山関連の本をよく読んで勉強してください。

講習会、ガイド登山、山岳会などで学ぶのもおすすめです。やはり実地で学ぶと効率が良い。悪天候の講習なんて、受講する側としたらチャンスです。講師が悪天候にどう対処するか現場で見られるわけですからね(講師側としてはとても気を使って疲れますが…)。

登山者は自分が遭難しないように、遭難しても生き延びられるように努力してください。雑な登山をしてると事故りますし、事故ったときに死ぬ可能性が高くなります。丁寧な登山をしましょう。

丁寧な登山とは、計画作成、情報共有、装備、行動などについて基本通り安全寄りの選択をすることです。「まぁいいか」と言いがちな人は雑な登山をしている可能性があります。

家族が登山をする人は、普段から登山者本人の情報を把握してください。どの山に行くのか言わずに行ってしまう人なら、どこに行くのか残すように言ってください。それらの情報が無いと探すのがとても大変です(あっても大変なんですけど…)。

捜索が難航すれば登山者本人だけでなく、探す側も大きなリスクを背負うことになります。一般登山道で見つからなければ、崖や沢にロープを使って降りては登り返して何度も何度も探します。捜索隊員や救助隊員にも家族がいます。そういう人達に負担を掛けないために、登山者は最大限の努力をすべきです。

※有識者の方は、上記内容で気になる点、間違っている点、追記したほうがいい点などありましたらコメント欄で教えてください。どうぞよろしくお願いいたします。

わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。