『つばさの党』代表・黒川敦彦容疑者と大津綾香氏の関係性 ~自宅前街宣の容認から排除への変遷~
はじめに
2024年4月に行われた衆議院東京15区の補欠選挙において、政治団体『つばさの党』が他陣営に選挙妨害を行ったとして、党代表の黒川敦彦容疑者(45)、幹事長の根本良輔容疑者(29)、組織運動本部長の杉田勇人容疑者(39)の3名が公職選挙法違反の疑いで5月17日に逮捕されました。
黒川容疑者らが逮捕されたという報道を受け、直近の上司でもあった『みんなでつくる党』(略称:みんつく党)代表・大津綾香氏(31)は以下の声明文を発表しました。
この声明文の中で大津氏は、黒川容疑者が行っていた街宣活動について「政治家女子48党(現:みんつく党)とは無関係な活動」であると主張し、「到底受け入れ難い」と糾弾しています。しかし、この声明文の内容は、これまでの大津氏の言動と矛盾する部分が多く見受けられるため、本記事では大津氏と黒川容疑者の関係性を時系列でまとめたうえで、大津氏の街宣活動に対する考えについて検証していきたいと思います。
代表就任、黒川容疑者による影響
2023年3月8日、大津氏は立花孝志氏から後任を受ける形で『政治家女子48党』の代表(党首)に就任することとなります。しかし、その直後から大津氏が黒川容疑者に感化されている様子が色濃く見えてくるようになりました。
3月12日、大津氏は板橋区役所駅前にてオレンジのつなぎを着用し、メロンパンを食べながら街頭演説を行います。これは黒川容疑者がこれまで糾弾してきた参政党を挑発するための行為でした。
また、3月15日には参議院会館前で黒川容疑者が主催するガーシー除名反対デモに積極的に参加し、シュプレヒコールを叫んでいます。
さらに大津氏は、NHK党がこれまで否定してきた政治資金パーティーを黒川容疑者らと共に画策し、3月26日に政治家女子48党の公式YouTubeチャンネルで参加の呼びかけを行っています。
黒川容疑者と大津パパの接触
前述の政治資金パーティーをきっかけに、債権者から党に返金依頼が殺到し、2023年3月29日には支払不能状態に陥ってしまいます。同日に行われた緊急会議の席で、大津氏は責任を取って「代表を辞める」と約束しますが、翌日以降、大津氏は代表を辞任することも、代表としての責務を果たすこともせず、1週間ほど雲隠れを続けました。後に、元つばさの党の落合ひとし氏の証言により、黒川容疑者が会見の直後に大津氏を実家まで送り届けていたことが判明します。
大津氏は黒川容疑者が実家に来たことについては否定をしていますが、黒川容疑者が3月31日のNHK党の記者会見において、「お父さんとか本当に怒ってますよ」「娘、傷物にしやがったって本当に怒ってますよ」と発言していることからも、細かな状況の違いはあれど、黒川容疑者が大津宗則氏(通称:大津パパ)と接触していたことはほぼ確実と思われます。
山中氏との出会いと決別
前述の緊急会議の後、大津氏は黒川容疑者が一緒に居るとイメージが悪くなるという理由で、「黒川さんとの距離を置きたい」と伝えたところ、黒川容疑者から山中裕氏を紹介されます。2023年4月4日には、大津氏と山中氏は一緒にりそな銀行へ出向き、党の口座の名義変更を行うなど行動を共にしていました。しかし、山中氏から「幹事長を自分の母親にしろ」という要求を突きつけられたり、立花氏との和解交渉の内容について事後報告もしなかったなどの理由により、1ヶ月も経たずに決別状態となってしまいました。
黒川容疑者との再連携
山中氏との決別後、大津氏は頼る相手が居なくなったからか、再び黒川容疑者と行動を共にするようになります。大津氏は2023年4月の目黒区議会議員選挙に立候補していましたが、杉田容疑者によると、その際にかかった選挙費用であったり、立花氏と戦うために雇った弁護士費用はつばさの党やその支持者が出資したとされています。
4月下旬頃には党幹部限定のLINEグループチャットを作成し、以下のメンバーで連絡を取り合うようになりました。
大津綾香
大津宗則(大津パパ)
黒川敦彦(幹事長)
大川宏洋(秘書)
日本武尊(広報官)
この幹部チャットの内容は、後に宏洋氏の内部告発により全て公開され、大津氏の裏の顔が世間に知れ渡ることとなります。
川端しんじ候補への選挙妨害を絶賛
2023年4月22日、立花氏はNHK党から目黒区議会議員選挙に立候補していた川端しんじ候補への応援演説を行いますが、そこには黒川容疑者らつばさの党の面々が待ち受けており、50分以上に渡り選挙妨害を受け続けます。
この妨害行為は、2024年の東京15区衆院補選でつばさの党が行った選挙妨害と同等か、それ以上に悪質な行為でしたが、その状況を見た大津氏は前述の幹部チャットにおいて、「間取りシンジ(※川端候補の蔑称)の落選活動?は胸がスッとしました。ありがとうございますw」と発言し、黒川容疑者が行った選挙妨害を絶賛していました。
立花氏の自宅前街宣を容認
大津氏は2023年6月前後からつばさの党が主催するTwitter(現:𝕏)のスペースに参加するようになり、その際に街宣を容認する発言をいくつか行っています。
黒川容疑者は、6月9日に立花氏の自宅マンション前で抗議街宣を行うことを宣言しましたが、大津氏は6月7日のスペースにおいて、立花氏の自宅前街宣について以下のとおり肯定的に語っています。
また、黒川容疑者が自宅前街宣を行うことについての私見を求められると、大津氏は「止められる可能性はあるが、別にやってもいいと思ってる」という旨の回答をしています。
さらに、大津氏と杉田容疑者はスペースで以下のような会話もしています。
こちらについては冗談交じりではあるものの、街宣のことを「受け入れ難い活動」と考えている人物からは決して出てくることのない発言だと思います。
6月9日には実際に立花氏の自宅前街宣が決行されてしまいますが、その際に杉田容疑者は以下のような演説を行っており、つばさの党と大津親子の関係性の深さを物語っています。
青汁ヒルズへの街宣を黙認
青汁王子こと三崎優太氏は、大津氏の言動についてTwitter上で時折批判を行ってきました。これを見た黒川容疑者は、大津氏のことを庇うため、2023年6月16日に三崎氏の自宅マンション(通称:青汁ヒルズ)前で抗議街宣を行うことを宣言します。
そのことを知った三崎氏は、大津氏に対し「大津氏の権限で街宣を止めてほしい」という旨のDMを送りますが、大津氏は「私はつばさの党に対して強制力もありません」として、黒川容疑者の街宣を止めることをしませんでした。最終的には大津氏から「これ以上話すことはありません」と会話を強制終了されてしまい、予定通り黒川容疑者らによる青汁ヒルズ前街宣が決行されてしまいます。
しかし、その裏で大津氏は、黒川容疑者に「制御不能と言っておきましたw」というLINEを送っており、青汁ヒルズ前での街宣を止めるどころか楽しんでいる様子が窺えます。
なお、大津氏はこれまで、黒川容疑者の活動を止める権限がない旨の主張を続けていますが、5月9日に黒川容疑者から「せいら(※井前せいら氏)をイジメても良いか」「質問しても良いか」と伺いを立てられた際には、強い口調でNOを突きつけ、妨害を中止させたという実績があります。
黒川容疑者を解任
その後もしばらく大津氏とつばさの党との良好な関係は続き、2023年7月16日につばさの党主催で行われたBBQイベントの二次会では、「立花孝志をぶっ壊ーす!」という乾杯の音頭まで取っています。
また、7月26日には大津氏からつばさの党へ佐賀牛が送られており、黒川容疑者も「なんだかんだ食材をいただいて生きていけてますね」と発言しています。
しかし、8月14日に突如、大津氏から黒川容疑者の解任が発表されます。同日、黒川容疑者が公開した大津氏との通話音声の中で、大津氏は「街宣などつばさの党がやったことで常に私が責められる」「陰謀論めいてると思われるようなことはしたくない」などと述べており、これらの話し合いが平行線に終わったことから、最終的に解任に至ったものと思われます。
この大津氏の行動に不信感を抱いた根本容疑者は、8月16日に投稿した動画の中で、大津氏の街宣に対する考えについて以下のように暴露しています。
また、黒川容疑者も同日の夜に行ったライブ配信の中で以下のように暴露しています。
【補足】
(※1)粟飯原美佳氏:NHK党・政治家女子48党時代の役員(監事・会計担当者)。大津氏が職員の給与を保証しなかったことにより対立。2023年6月28日に大津氏から解任を発表される。大津氏からは「金庫番の女性」と揶揄されている。
(※2)松浦華子氏:政治家女子48党時代の候補者。当初は大津氏とは友好関係であったが、乗っ取り騒動以降は大津氏を批判する立場となる。批判内容は事実に基づいたものであり、根本容疑者の言うような「執拗にアンチコメントを飛ばした」という事実はない。詳しくは『はなこノート』参照。
解任後も続くつばさの党との関係
前述のいざこざもあり、大津氏とつばさの党との関係は修復不可能かと思われましたが、2023年12月に朝霞市議会議員選挙が行われた際、大津氏は黒川容疑者の内縁の妻でもある外山まき・朝霞市議会議員の応援に来ており、黒川容疑者とも楽しげに写真撮影をしています。
杉田容疑者に至っては、黒川容疑者の解任直後から「大津さんに対して目に余る誹謗中傷があれば俺は勝手に駆逐します」「大津さんへ攻撃はしません」として、今後も大津氏を守っていくことを宣言し、大津氏もこれに感謝の意を示しています。
また、大津氏は記者会見を開く際、マスコミ関係者やフリーライター(報道系YouTuber含む)の参加を呼びかけていますが、大津氏が認めないYouTuberについては「報道機関の実態が伴っていない」などと理由をつけて排除しています。しかし、杉田容疑者に関しては、2023年11月6日、2024年1月26日、同3月19日の記者会見において「フリーのジャーナリスト」もしくは「さくらフィナンシャルニュース」という名義で出席を許可しています。
2024年3月23日に行われた『民主主義ユースフェスティバル2024』にみんつく党が出展した際にも、杉田容疑者はわざわざ現地まで出向き、大津氏と親しげに交流しているため、現在においても友好関係が続いているものと思われます。
まとめ
ここまで紹介してきた内容からも、大津氏は立花氏やその関係者に対する自宅前街宣や選挙妨害については好意的に評価していた反面、自身に理がない街宣については否定的で、その批判が自分に向けられることが苦痛だったことから黒川容疑者を解任したものと考えられます。
3名の逮捕後、前述の黒川容疑者と根本容疑者の暴露について説明を求められた大津氏は、「彼らのポジショントークです」として両者の暴露を一蹴していますが、これまでの大津氏の言動(「間取りシンジの落選活動は胸がスッとしました」「立花氏が困る姿を見たい」「制御不能と言っておきましたw」など)を見る限り、この件に関しては黒川・根本両容疑者の言い分の方が辻褄が合っているように思います。
そのことを補完するかのように、大津氏の元秘書であった大川宏洋氏も「自宅前街宣を大津さんは容認してた」「『いいぞもっとやれ』と言っていた」と語っています。なお宏洋氏は、黒川容疑者や宏洋氏が活動をする際には、最終的に大津宗則氏の承認を得る必要があり、宗則氏が実質的な支配者であり最終決裁者であったとも語っています。
こうした背景を持つ大津氏が、「黒川容疑者の活動は自身とは無関係」という旨の声明文を発表し、黒川容疑者の糾弾に転じる姿にはとても違和感を覚えます。今後の捜査次第では、大津氏と黒川容疑者の関係性がより明らかになる可能性もありますので、引き続き状況を見守っていきたいと思います。
以上となります。
ここまでお読みいただきありがとうございました。