マガジンのカバー画像

うつ病家族の知恵袋

93
家族がうつ病になると、思いがけない出来事や悩みと次々に直面します。 そんな時どうやって取り組むか、立ち向かうのか、あえて逃げるのか。 経験者+カウンセラー+精神保健福祉士がアドバ…
運営しているクリエイター

#家族支援

うつ病回復期の準備と注意点

復帰へのスムーズな道のり うつ病が少しずつ回復してくると、一気に「治った」と思って失敗する、を繰り返してしまいます。 それは本人だけでなく家族も同様です。ずっと心配や不安を抱えていたからこそ反動が出ます。 うつ病の回復期とはどんな状態でしょうか。その後も続く再発予防も含めて考える必要があります。 職場に戻る・戻らないの判断に縛られず、家族自身の意見も含め、広い視野から今後を考える視点を持ちましょう。 1.うつ病回復期とは、不安定さが大きく出る時期①気分が安定し、エネルギー

うつ病急性期の症状と治療・サポート

-家族に出来ることのポイントを解説- うつ病は発症直後が一番状態が悪いです。一番しんどい時に家族も何をしていいのか分からず戸惑います。 うつ病が増えていることを頭では分かっていても、いざ家族がなるとすぐに対処出来ないのが現実です。 家族がうつ病になったときにやるべきノウハウの中から、今このタイミングで出来ること・やるべきことを知りましょう。 それが分かれば不要に慌てることなく、対応することが出来ます。 1.うつ病急性期とは①うつ病回復までの3段階 うつ病は発症から回復ま

共感しすぎて辛い!家族のネガティブ感情への対処法と共感疲労防止のポイント

うつ病家族の落ち込みやネガティブ感情に引きずられて辛い、という経験があるケアラーは多いと思います。 人は他者の感情に無意識に共感します。それが病気の家族であれば尚更です。 共感しすぎは多くのデメリットがあります。共感しないスキルもまた必要です。 家族のネガティブ感情への共感疲労への対抗策は、「課題の分離」「役割の明確化」「キャパシティの再認識」です。 1.近くにいる人に共感しすぎてしまう仕組み扁桃体 扁桃体は、他者からの情報発信の中から、特に感情に関する意味を読み取る役割

精神疾患家族との関わり方

3つのタイプ別アプローチと家族ができる4つの取り組み 精神疾患の家族との関わり方は、繊細さと柔軟性が求められるため難しいです。 日によって、状態によって、家族側からの関わり方を変える必要があるからです。 今回は精神疾患本人のタイプを3つに分けて接し方をご提案します。 家族に出来ることがどこまでか、を認識し、本人を尊重しつつ前向きに関わっていきましょう。 1.関わり方を考えるときの3つのタイプ①タイプA:未自覚タイプ まだ自分の精神疾患を自分事として受け入れ切れていない

家族の相談先の見つけ方

~精神疾患で苦しむ家族への支援ガイド~ 「家族が精神疾患になったことで起きている家族側の悩み」は、一体どこへ相談したらいいのか分からない、という悩みを耳にします。 私もそうでした。思い切って相談しても「家族だから頑張って」でおわってしまったこともあります。その時はそういうものかとも思いました。 ですが今自分が専門家になって、家族側の相談窓口が無いことがどれほどのデメリットか、を痛感しています。 家族目線の相談先も絶対に必要です。 それは公的機関、家族会、家族自身がカウンセリ

精神疾患の家族に共感する:メリットと向き合い方

と思っているケアラーは少なくないと思います。 精神疾患になると心と思考のパワーが激減するので、以前とは別人のような言動をして家族を困らせます。そうなると一緒に暮らす家族は振り回され、理解や共感を示す余裕がなくなります。 しかし「共感」は、家族にとって、特に精神疾患を患う人にとって何より重要な関わり方です。 相手に共感することと自分の意思表示は相反するようで両立します。そのコツをご紹介いたします。 1.共感とは何か①定義 共感とは、コミュニケーションの基盤です。自分と相

<メンタルケアラーが危ない!>燃え尽き症候群と予防対策

「家族のうつ療養生活を支えてきたが、もう疲れた。何もできない」 そう思ってしまうことは少しも不思議ではありません。私もそうでした。 それでも頑張ろうと自分を奮い立たせているのかもしれません。 ですがそれを続けていると、いずれ燃え尽きてしまう恐れがあります。 「燃え尽き症候群」は、頑張った人が壊れてしまうとても悲しい状態です。避けたい事態です。 燃え尽きないためのポイントと予防策を身に着けて、ご自分のこともしっかり守りましょう。 1.頑張るケアラーが燃え尽きてしまう理由①燃

セルフネグレクトとケアラーのリスク

~精神的なセルフネグレクトの理解と予防策~ 「セルフネグレクト」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。 ネグレクト、は広まっていますね。主に児童虐待などで育児放棄として問題になる、放置や無視のことです。 それがセルフ、つまり自分へ向いた状態のことです。 セルフネグレクトとは何か、特に精神面でのセルフネグレクトとは、その原因と対策を、ケアラーへのリスク警鐘として考えました。 1.セルフネグレクトとは人は衣食住+睡眠+他者との交流をバランスよく保ちながら生活を営みます。

理想像を描くことでメンタルを前向きに変える方法

悩みや問題があってメンタルが後ろ向きになっているときに「どうなりたい?」「目標は?」と聞かれても考えづらいですよね。 それでも理想像があるかないかで、今後は大きく変わってきます。 1.どうして理想像が描けないのか「~になったらいいのに」は、心のどこかで考えているでしょう。 けれど思い浮かんだとしても諦めてしまいます。 諦める理由は色々あると思います。 だけど××が解決しなければ無理だよね きっと叶うことはない と考えてしまったり、 思い浮かんだ理想像がリアルじゃな

家族関係と役割:家族たちの相互の結びつきと機能

家族とは、その中に病人やケアラーを含まなくても、関係性やコミュニケーションが大事です。 何故大事なのでしょうか。 家族が相互に結び付きあい、役割を果たすためにはどんな要素が必要で、毎日の生活で何が出来るでしょうか。 1.家族同士は依存し合って生活している依存というとあまり良くないイメージかもしれませんが、ここでは「お互いが影響し合っている」ことを指します。 例えば夫婦は、こどもにとっての両親です。母⇔子の直接的な影響だけでなく、母(妻)・父(夫)同士がどのように影響し合って

エンパワメント: 家族が力を発揮するためのアプローチ

「エンパワメント」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。 福祉の用語ですが、源流はアメリカの黒人差別撤廃運動から生まれました。 と聞くと「あまり自分には関係ないのでは…」と思われるかもしれません。 でも私は、悩んだり苦しんだりしている人にこそ必要だと思っています。 ではエンパワメントとは何でしょう。なぜ必要で、どうやったらエンパワメント出来るのでしょうか。 1.エンパワメントとはエンパワメントとは、一言で言うと「個人が自分の力を発揮できるようになること」です。 そんな

ケアラーに役立つピグマリオン効果

「ピグマリオン効果」と言う言葉をご存じでしょうか。「教師期待効果」とも言います。 人は期待されると少なからず気持ちが前へ向くものです。その心理を活用した教育・コミュニケーションの態度です。 今回は、ケアラーと要支援家族との間で役に立つピグマリオン効果の使い方を考えてみました。 1.ピグマリオン効果とは教育や育成の場で使われることが多い言葉です。 相手に対して効果的な期待を持って接することで、それに沿った成果を出してくれる、と言うものです。 教育、というより、コミュニケー

家族ケアラーが未来のために出来ること

頑張って家族をケアしているのは、今とこれから先の未来のためですよね。 もういい、ここまで、と思うならこんなに頑張らない。 でも疲れちゃうと「何で頑張ってるんだろう」ってわからなくなる時があります。 家族ケアラーが頑張るのは未来のため。 じゃあ、どんな未来のために、今何を頑張るのでしょうか。 1.「どうなるか」<「どうなりたいか」家族が病気など何かを抱えると、「これから私たち家族はどうなっちゃうんだろう」と考えます。 予期していなかった出来事に流されてよく分からない場所に連

普通と偏見

普通、という言葉は、外国語はどうか知りませんが、日本語にはいろんな意味や意図が含まれているように思います。 言っている側の意図もあるし、受け取る側の状態によっても意味が変わってくる。 そして自分が「普通」にこだわることで「内なる偏見」を育ててしまうこともあります。 優しい「普通」と傷つける「普通」、普通が生み出す「偏見」について考えてみました。 1.普通とはつまり、大多数、一般的、ということですよね。多数派、ということです。 しかしそれは何か統計を取った上で、いわゆる「エ