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善人に更生した晃助

 彼は死んではいませんでした。その後も頑張って更生しました。

 俺様は黒服の男達に暴行され、バラバラに切り裂かれて死んだ・・・と思ったが、実際は死んではいなかった。
「俺様・・・病院にいるのか。」
 気がついた俺様は、病院のベッドで寝ていた。手足も全身も普通だった。俺様も普通に生きていた。
「頭痛え・・・。」
 俺様は頭痛を訴えた。頭が非常に痛い。
「晃助くん、お目覚めかしら。」
「俺様も気がついたぜ。」
 看護師が俺様にも目覚めたかと聞いた。俺様も気づいたとも言った。
「俺様・・・神谷家の家具を壊して、神谷家に火をつけて勘当されて、弟妹を殺しに行くと脅迫して、将人の金を盗もうとして反撃されて、優里奈に知らない男性と逃げられて、弟妹にも不審者と追い出されて、黒服の男達にベンツに乗せられて誘拐されて、殴り殺されたんだぜ・・・。」
「晃助くんは意識不明だった間に、悪夢を見ていたみたいね。」
 俺様が神谷家の家具を壊したのも、火をつけて神谷家が半焼したのも、神谷家を勘当されたのも、弟妹を殺しに行くと脅迫したのも、将人の金を盗もうとして反撃されたのも、優里奈に知らない男性と言われたのも、弟妹達に不審者と追い出されたのも、黒服の男達に誘拐されて殴り殺されたのも、現実ではなかった。すべて俺様の悪夢だった。
「晃助、目が覚めたのね。」
「俺様も目が覚めたぜ。」
 母さんも俺様を呼んだ。俺様も目が覚めたと応えた。何歳年を重ねても、やはり長男を思う母だ。
「晃助は家事が嫌だって怒って、壁に頭をぶつけて倒れたの。ずっと意識がなかったのよ。でも意識を取り戻してくれて良かったわ。」
「俺様、壁に頭をぶつけて意識不明だったのか・・・。」
 俺様は家事が嫌になってはいたが、現実には家具を壊してはいなかった。正しくは壁に頭を強くぶつけて、ずっと意識不明だった。その間に、俺様は極悪人に落ちぶれて、最後には黒服の男達に撲殺される悪夢を見ていた。
「だから頭が痛えのか・・・。」
 頭痛がするのは、俺様が頭を酷くぶつけたためだ。
「俺様、確か逮捕される少し前に慎也に怒鳴られたぜ・・・。」
 俺様は逮捕される少し前に、慎也に怒鳴られたのを思い出した。俺様が家族に乱暴を繰り返すのを、慎也も激怒していた。
「俺様、家族に乱暴しちまうんだぜ。皆も出て行きやがったぜ。」
 俺様は慎也にも聞いて欲しくて、家族に乱暴してしまうのも言った。
「なんで家族を傷つけるの!」
 俺様が言った途端に、慎也は怒った。
「お兄ちゃんが家族を平気で傷つけて、皆を家にも住めなくするのか!」
 俺様の乱暴な行為にも、慎也も兄貴が家族を平気で傷つけて、皆を家にも住めなくするのかと激高した。
「慎也!俺様は慎也には何もしてねえだろ!」
「嘘をつくな!俺の番号にしつこく連絡してきたのは誰だ!」
 俺様は慎也の番号にもしつこく連絡したが、何もしていないとしらばっくれた。だが、慎也も俺様にも嘘をつくなと怒鳴って、証拠として携帯の着信履歴を見せつけた。
「俺は家族を傷つける奴は知らない!お前なんか俺達の同級生じゃない!俺の名前を二度と呼ぶな!二度と連絡してくるな!俺の前に二度と現れるな!」
「慎也!」
 俺様に激怒した慎也は、俺様を名前で「晃助」ではなく「お前」と呼んで、同級生ではないとも、名前を呼ぶなとも連絡するなとも現れるなとも繰り返し罵倒しながら、立ち去ってしまった。
「俺様が悪かったぜ・・・。」
 俺様の自業自得だが、慎也まで激怒させてしまった。
「明里は大丈夫か。」
 俺様は傷つけてしまった明里が心配になり、大丈夫かと聞いた。
「明里も入院してしまったわ。晃助も反省したなら、明里にも言うことがあるでしょう。」
 俺様も頭を打ってはいたが、起き上がるのも動き回るのも問題はないので、母さんと一緒に明里の病床に向かった。
「俺様が乱暴したから、明里も入院しちまったぜ・・・。」
 明里も入院してしまったのは、俺様が乱暴したためだ。明里は父さんも母さんも心配して神谷家を逃げなかったため、最大の被害者になってしまった。
「明里、俺様を許してくれ。」
「私も大丈夫よ。お兄ちゃんも次からは乱暴しないでね。」
 俺様も、明里にも許してくれと伝えたが、明里も次からは乱暴しないようにと許してくれた。
「俺様が神谷家の家具を壊したのも、火をつけたのも夢だったんだぜ・・・。」
「私が勝手に見た幻覚だったのよ。本物じゃないわ。」
 明里も俺様が家具を壊したのも、神谷家に火をつけて半焼したのも本物ではなく、幻覚と言った。だが、俺様が乱暴した結果、明里も幻覚を見るくらい苦しんでいた。
「俺様、明里も辛い目に遭わせてしまったぜ・・・。」
 俺様も、明里も辛い目に遭わせてしまったのも自覚して、うんと反省した。
「兄貴!」
「諒!」
 諒も仕事の合間にも、俺様を見舞いに来てくれた。
「皆に迷惑をかけたのも反省しろ。だが俺も兄貴が更生するって信じていたんだ。」
「俺様も反省するぜ。」
 諒も俺様にも、皆に迷惑をかけたのも反省しろとも注意した。そのくらい、諒も俺様の更生を信じてくれていた。
「晃ちゃん!」
「優里奈!」
 声優の仕事の合間を見て、優里奈が俺様も見舞いに来てくれた。
「優里奈、俺様を許してくれ。」
「二度と私に暴言をしないなら、諒ちゃんやたかちゃんとの関係も悪く言わないなら、私も晃ちゃんを絶対に怒らないわ。」
 俺様も優里奈にも許しを求めたが、優里奈も二度と暴言をしないのも、諒や孝彰との関係も悪く言わないのも条件に、俺様を絶対に怒らないと許してくれた。
「退院だぜ。」
「晃助も酷い事は二度としないのよ。」
 頭をぶつけて意識不明だった俺様だが、意識も健康も回復して退院が叶った。母さんも、俺様にも二度と酷い事をしないようにと念を押した。
 俺様はその後も、今までに迷惑をかけた皆にも許してくれと連絡した。
「慎也、俺様を許してくれ。」
「晃助も反省したな。俺達も仲直りだ。」
 慎也も俺様が反省したのも認めて、許してくれた。
「俺も怒って晃助の連絡先を消しちゃったけど、また登録したからな。」
「慎也と俺様の仲直りの証だぜ。俺様達は同級生だぜ。」
 仲直りの証に、慎也も一度消した俺様の連絡先を再び登録した。俺様達は同級生だ。
「俺も晃助を勘当したって誤解してしまいました。」
「私も間違ったことを言いました。晃助は勘当していません。」
 慎也も俺様達の母さんにも、誤解したのを反省した。母さんも慎也にも間違ったことを言ったとも、俺様は勘当していないとも言った。
「美咲、俺様を許してくれ。」
「私も家庭内暴力は絶対に許さないわ。でも晃助さんも頑張って更生したんだから、私も悪くないと思うわ。」
 俺様は美咲にも、許してくれと訴えた。美咲も、家庭内暴力を絶対に許さないと言ったところまでは怖い声だったが、俺様も頑張って更生したと言ったあたりでは優しい声だった。美咲も怒ると怖いが、普通の時は優しい。
「将人、俺様を許してくれ。」
「俺も許すぜ。今までの優しい晃助でいてくれ。」
 俺様も将人にも、許してくれと訴えた。将人も優しく、今までの優しい晃助でいてくれと許してくれた。
「竜馬、俺様を許してくれ。」
「俺も乱暴な兄ちゃんも弟も要らないって怒り過ぎたの。お互いに許し合おう。」
 俺様も竜馬にも、許してくれと訴えた。竜馬も乱暴な兄ちゃんも弟も要らないと怒り過ぎたのも反省して、お互いに許し合った。
「沙織、俺様を許してくれ。」
「私も晃助さんを許すわ。人の迷惑にならないように気をつけてね。」
 俺様も沙織にも、許してくれと訴えた。沙織も俺様にも、人の迷惑にならないようにと注意したが許してくれた。
「葉月、俺様を許してくれ。」
「私も晃助くんを許すわ。次からは皆にもしつこくしないのよ。」
 俺様も葉月にも、許してくれと訴えた。葉月も俺様にも、次からは皆にもしつこくしないようにと注意した。
「皆、俺様を許してくれ。」
 俺様も神谷家の弟妹にも、許してくれと訴えた。
「私もお兄様を許すわ。ずっと心配していたのよ。」
「穂香も許してくれたぜ。俺様を心配してくれてもいたぜ。」
 真っ先に応えた穂香も、俺様を許してくれた。同時に、穂香も俺様をずっと心配してくれてもいた。
「健ちゃんが亡くなって、お兄様に乱暴されて私もずっと辛かったの。でも皆がいたから立ち直れたの。」
「菜月もまた元気になれたぜ。」
 健太を亡くして、俺様に乱暴されてずっと辛かった菜月も立ち直って、再び元気な姿を見せてくれた。
「反省したみたいね。また晃助お兄様と私、諒お兄様と菜月で過ごしたいわ。」
「瑞穂、俺様を大切に思ってくれるのか。」
 瑞穂も俺様が反省したと認めて、また俺様と瑞穂、諒と菜月で過ごしたいとも言った。瑞穂も俺様を大切に思ってくれている。
「兄貴、二度と弟妹に乱暴するなよ。」
「諒も言うように、俺様も乱暴しないぜ。」
 諒も二度と弟妹に乱暴するなと念を押したが、俺様も乱暴しないと誓った。
「怖い思いは二度としたくないわ。」
「暴れ狂う猛獣はもういないみたいね。」
 香穂も怖い思いは二度としたくないとも、陽菜子も暴れ狂う猛獣はもういないとも言う。
「香穂も強くなったぜ。陽菜子も動物への気持ちは変わらないぜ。」
 俺様が思う以上に、前はおとなしいばかりだった香穂も強くなっていた。俺様に何を言われても、陽菜子も動物への気持ちは変わらなかった。
「また兄ちゃんと俺でも勇者の話をしような。」
「俺も優しい兄ちゃんが良いな。」
 晃太もまた勇者の話をしようとも言った。魁も優しい兄貴が良いとも言った。弟達もやはり元気だ。
「私も退院したの。」
「明里!」
 俺様も呼んだ先には、退院した明里も来ていた。神谷家の息子と娘は、退院した明里を歓迎した。
「俺様も明里も、皆でこのアパートで暮らすぜ。」
「私達も皆で暮らせるわ。」
「困った時は私達にも言うのよ。」
 俺様も明里も、皆がいるアパートで仲良く暮らすと決まった。穂香も皆で暮らせると嬉しそうだ。母さんも困った時は神谷家にも言うようにとも言った。
「悪人の晃助は最期を迎えたが、善人の晃助に更生したぜ。俺様も神谷家の兄貴としても、次の仕事も早く見つけて、皆とも仲良く頑張るぜ。」
 俺様も、悪人の晃助は一度最期を迎えたが、善人の晃助に更生したと感じている。俺様も神谷家の兄貴としても早く次の仕事も見つけて、大切な皆とも仲良く頑張っていきたい。


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