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【みんぱくゼミナール体験記】映画フィルムは金カム、ビネガー、ペットボトル

「みんぱく」ときいて民泊を想起しましたでしょうか?
違います。
国立民族学博物館のことです。

大阪万博公園の一角にあるこの博物館は、
日本の民俗博物館の中でもかなり大きい部類の施設であり、研究機関としても活躍しています。


▶みんぱくそれ自体がオススメ

僕はこの博物館が結構好きで、ちょっと遠いんですが、今回で3回目の訪問でした。
何がいいかというと、

  • 世界中の民族に関する資料がところ狭し展示されており、ほとんどがガラスケース無し(!)の陳列

  • 解説文や映像資料なども豊富で圧倒的な情報量の多さ

  • ちょっとした世界旅行気分が味わえるくらいの充実感

  • ミュージアムショップも充実していて、世界中の民芸品が購入可能

  • 観覧料一般580円(!)、大学生250円(!)、高校生以下無料(!)

ちょっと太っ腹すぎやしませんか?といつも思ってしまう。
アクセスも大阪モノレール万博記念公園駅からすぐという立地もかなりえぐい。暇な大学生とかは行っておけ。

遠方の方は、バーチャルミュージアムが無料(!)で閲覧できるのだが今は調整中のようです。


▶みんぱくゼミナール体験記

先日、土曜に時間があるので、エキスポシティで買い物もしつつみんぱく行くか!と思い立ったところ。
「みんぱくゼミナール」という催しがあるらしいとの情報をキャッチした。

参加無料(!)なんと当日券も用意されているらしく、
前日に参加を決意。
当日券の受付開始時刻11:00に到着し、無事当日券と整理券をゲット。
事前予約の人も整理券が必要みたいで、この時受け取った整理券順に入場できるようだ。

開場自体は13:00~、講演開始は13:30だったので、展示を見て回ることに。
いつもの如く、情報量の海に投げ出されながら、時間が迫っているので飛ばしながら見学する。

開場の時間になり、整理券番号も若かったのですぐに入場できた。
思ったより大きい会場で400人以上入るのではないかという大きさ。
そこに、たぶん200人~300人弱は入ってきた。
もっとこじんまりしたセミナーを想像していたが、存外規模が大きかった。


講演題目「博物館の舞台裏――資料の保存を考える」

この講演で知ったが、「保存科学」という学問があるらしく、それを専門にしている園田教授が講演していただけるという豪華講演。
無料でほんとにいいんですか?

前述の通り、みんぱくはガラスケースに入れずに展示している物も多いので、保存科学の知見を用いて管理しているそうだ。
90分にわたる講演には情報量がかなりあったのだが、
映像資料の保存の話が特に興味が惹かれた。

金カム、ビネガー、ペットボトル

今のようなデジタル記憶媒体が登場するまで、映画は当然のことだがフィルム撮影するしかなかった。(今でもフィルム撮影にこだわる監督もいる。ノーラン監督とか)

そのフィルム材質にも変遷ががあり、
黎明期はニトロセルロースフィルムといういかにも発火しそうな名前で、ほんとに発火しやすいフィルムで撮影されていたので、よく焼失してしまったらしい。
なんと劣化が進むと自然発火するらしいので恐ろしい。
この話は、今話題の「ゴールデンカムイ」のなかでもあったな~と知識がつながる瞬間が心地よかった。

ゴールデンカムイでは、アイヌの口伝伝承の物語を映像として残していこうとアシリパが杉元一行に演じさせ、フィルムに残していく。
しかし最後にみんなで試写鑑賞しているときに発火してしまい、撮影は無駄になってしまう、という話。

次に登場したのが、発火しない材質でつくられたアセテートフィルムで、セーフティフィルムと呼ばれたらしい。
こちらは焼失のリスクが大きく下がったので、みんぱくにも多く保存されているらしいのだが、これはこれで問題がある。
ビネガーシンドロームという興味惹かれる名前でありながら、困った問題を抱えている。
アセテートフィルム材質は、トリアセテートセルロース(TAC)≒酢酸セルロースであり、加水分解(空気中の水分と結びつくことで、組織のつながりが壊されれる)して、酢酸になってしまい、ビネガー=酢のにおいを発するようになるようだ。

このビネガーシンドロームを完全に防ぐことはできないようで、延命措置しかないようだ。
なので、劣化具合を定量的に判定する技術を発展させて、優先順位付けして順次デジタル化など、別媒体にコピーするほかないようだ。

最後に登場したのがポリエステルフィルム。
このフィルムの材質は、ペットボトルと同じ、ポリエチレンテレフタラート(PET)。
これも燃えないのでセーフティフィルムと言われるらしい。

ポリエステルフィルムでビネガーシンドロームも克服したのだが、全てのものは移ろうもの。
保存条件を管理しなければ、やはり劣化は抑えられない。
JISで長期(500年)と中期(10年)で保存できる条件を定めているようだ。

マメ知識として覚える場合には
金カム、ビネガー、ペットボトルで覚えておこう。

連想でニトロ、酢酸、PETが出てきたらもう勝ちです(?)。


次の講演内容もかなりそそられるので行ってみたいと思っている。



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