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社員の意識を変えるには

社員の〇〇意識を変えたい、という相談はコンサルティングを行っているとしばしば耳にする経営者や経営企画の悩みである。例えば経営参画意識やコスト意識が代表だ。経営コンサルティングとしては、組織文化や社員意識といった類のものは扱いにくい面がある。時間がかかるからだ。

クライアントからすると、コンサルタントと契約した以上、成果はある程度早く欲しい。経営者であればまだしも、担当社員にとってはコンサルタントを使っても成果が出ていないじゃないか、無駄な金を使いやがって、となってしまいかねないからだ。

良くも悪くも、短期の成果は短期で消失してしまう側面もある。なぜなら、短期的な取り組みはクライアントというよりもコンサルタントが主導してプロジェクトを取り回し、ある程度確立されたノウハウをクライアントの状況に合わせ微調整しつつ集中的に投入して一気に成果を出す、ということが必要なので、プロジェクトが完了してコンサルタントがいなくなるとなんとなく元に戻っていたりする。
手法の背景にある思想までクライアントに浸透したわけではないことと、ノウハウを会得する時間がないことが主な理由かもしれない。

文化や意識はどうか。実際に意識変革を試みると、派閥間の摩擦や離脱する社員が発生することが往々にしてある。そして、新たに入った社員は比較的受容性が高い傾向にあり、「〇〇に向けた意識変革」を吸収しやすい(しやすそうな人を採用するという理由も当然ある。)。

つまり、個々人の意識が変わるのではなく、在籍する人が入れ替わることにより、自分たちが望む意識を持つ人が残り、新たに加わり、やがて多数派になっていくのだ。

意識変革を成功させるためには、経営層が率先して変革を推進する姿勢を示すことは重要である。指示だけではなく、自らがモデルとなり、社員に変化の必要性とビジョンを明確に伝えることで、社員は経営層が本気であることを理解し、自らの行動にも反映させるようになる。

さらに、組織内のコミュニケーションを強化し、定期的なミーティングやワークショップ、トレーニングを実施することも有効かもしれない。これにより、社員は変革の進捗状況や具体的な取り組みを共有し、互いにフィードバックを行うことで、共通の目標に向かって一致団結することができる。これを繰り返していくと、意識変革はいずれ文化の醸成につながっていく。

いろいろな組織を支援していると、それぞれの組織は驚くほど異なり、それぞれに特徴があることに気づく。中の人はほぼ意識しないが、発言や行動がちょっとしたパターンの様相を帯びることもあれば、匂いや音などの五感でそれを感じることもある。
人間は環境の産物であり、こうした違いが在籍するほどに個々人の行動に影響していく。

ところで、このように考えると、変革を推進するためのインセンティブは必要なのだろうか。変革に貢献した社員に対して報酬や表彰を行うことで、モチベーションを高めることができる。これにより、社員は自らの行動が組織全体にどのように貢献しているかを実感し、積極的に変革に参加するようになる。
しかしそもそも変わらない人は変わらない、人の入れ替えの効果の方が大きいとなれば、インセンティブは何に対するインセンティブなのかという疑問が湧く。

いずれにしても、意識や文化の変革には(マジョリティが入れ替わるほどの)時間がかかることを理解し、長期的な視点で取り組むことが大切である。経営層が一貫したメッセージを発信し続け、共鳴する社員が安心して変革に取り組む環境を整えることで、組織全体が徐々に変わっていく。

つまるところ意識や文化の変革とは、それぞれの社員の根底にある意識に思いを馳せて、適切な選抜をすることなのかもしれない。

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