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パチンコ屋がサービスデーを本気でやってきた話

今はもう出来ない。禁止されているからだ。
新装開店、サービスデー、ファン感謝デーとは名ばかりで、大幅に釘をいじることが禁止されている今、実のところイベントはただの回収日だ。

一昔前は確かにあった。
いや、一昔前でもサービスデーは名前だけだったりもしたか。
新装開店は、18時開店の時は店も本気で出しにかかってた。

なぜ18時開店だったのかというと、丸一日その釘でやったら店が潰れるからだ。

羽根物は釘ガバガバで開きっぱなし。
フィーバー台はもちろん、権利物なんかももう笑ってしまうほどガバガバ。
この時ばかりは客の負けは絶対に許されない。
店長も客がハマらないようにと祈るばかり。

その昔ふらっと寄った新装開店。
通りかかったら行列が見えたので一緒に並んでみた。完全に興味本位だ。
そもそもが開店プロではないし、この時ばかりは一般客に出してもらう日。
そうやって客がつくことによって普段プロが食っていける釘と店になる。

それはわかっているんだが、ちょっとどんなものかを見たかった。
まあ知らない街の知らない店だ。
それなら俺も一般客のひとりとして扱ってもらおう・・と。

打ったのはホー助くん。
役物振り分け5分の1、デジタル確率約9分の1の権利物。
出玉は約2000発強で、大当り後の電チューサポートにより連チャン率は高めの機種。ただし5分の1で1R大当たりというハズレがある。

1Rハズレのことと連チャンのことを考慮すると、ボーダーラインはいくつになるだろう?
とにかくこの役物の中に50発ほど放り込めば一回当たる計算。ってことは2.2円交換でも千円で10発弱放り込めれば勝てる可能性が高い。

そう思いながら適当に席が空いていたホー助くんに座る。
そして釘を見て驚愕。なんじゃこら?!
ガバガバどころの話じゃない。もはやパチンコとは言えないくらいの釘の開き具合。

玉が減らないくらい羽根が開き、役物の中は常に玉でひしめき合っている。

なるほどなぁ。こりゃ開店プロがいるのもよく分かる。
こんなの出ない方がおかしい。万札を配ってるようなもんだ。

そしてこの日、俺は一度も出せずに負けた。

マジか・・・。
あんなに入ったのに・・・あんなに回したのに・・・。
性に合わないことはするもんじゃないな。見事にバチが当たった。


新装開店でこれなのだ。
名前ばかりのサービスデーなんて尚更信用できない。
もう行ってたまるか。そう思っていた。

そんなポリシーを一発で捻じ曲げてしまう事を、自分のねぐらであった店がやってきたのだ。

ある日の店からの帰り際。
顔見知りの店員が俺の出玉をカウンターに流しながら話しかけてきた。
「明日スゴいよ」
「何が?」
「月に一回イベントやることになったから」
「へー」と俺は話半分に聞いていた。

次の日の朝、入り口にはいつもと変わらない顔ぶれ。
みんなも話半分に期待もせず並んでいた。
開店間際に一番乗りの人に打ちたい台を聞く店員。
どうやら超サービス台が数台と、普通のサービス台を並べた島があるらしい。
「じゃあそれで」と超サービス台を渋々選ぶ一番手。
二番手三番手も同様に選んでいき、俺が入店する頃には普通のサービス台しか残っていなかった。

ワニワニパニックだったかハクション大魔王だったか?
残念ながらちょっとそこまで記憶がない。
ただ最初の千円で80回転ほど回ったのだけは覚えている。

台に座る時手が震えた。
ゲーセンの100円パチンコでもこんなに釘は開かない。
正気の沙汰ではない。

いつも釘の渋いこの店が、突然本気を出してきた。

流石に最後までそのペースで回ることはなかったが、当然の大勝ち。
じゃあ一番乗りが打ってる超サービス台ってどんな釘なんだ?と台を見せてもらった。

いやいやこれは・・・当局に怒られるぞ(笑)

とにかくこれはもう次のイベントも並ぶしかない。
ポリシー?なんだっけ?余計な金はいらない?楽に貰えるなら貰っとけ。
最低だ(笑)

でも俺らは普段の日も打つ。
ここに通い続ける他のプロ達もそう。
時には負け、時には店のためのサクラのような存在になって他の客を呼ぶ。
持ちつ持たれつの中での、月に一度の店からのお礼だと・・・勝手に受け取ることにした。


月日は流れ、何度目かのサービスデー。
すでにこの驚愕のサービスデーは客達に浸透し、早朝から並んでいてはもう間に合わない。

なんと前日の営業中から並ぶようになっていた(笑)

その当時の嫁の日記があった。


うまくいきすぎ!こわいぜ~

12月22日

今日はF店のサービスデー初日。
前の日から並んだおかげで、1番乗りをゲット出来た。
私たちは最近寝不足が続いているので、朝までぐっすり車の中で眠ってしまった。

そして9時開店。私は打てば必ず5万勝てる平台(ソンブレロ)をもちろんゲットした。
彼はサービス台の「CRコマ道楽」へ・・。

今回も平台は定量2万発と決まっていたので、とにかくひたすら打ち続け、午後1時には定量となり終了。

で、なんとなくスロットの「ジャグラー」へ・・。
2000円位打ったところで目をつけてた台が空いたので直ぐ様そこに移動。

5000円使ったとこで、ビッグを引きそのまま無くなることなく1箱まで増やすことに成功!!
後は彼を待つだけ・・

本日の収支   +101600円


以上。
あ、こいつまたソンブレロ打ってやがる!(笑)
というか、一番乗りはいいけど北海道の12月22日であることも注目して欲しい。死ぬぞ?整理券貰って車に避難できたけど。
浅ましいとはまさにこのこと。
結局俺は金の亡者だった。

それにしてもこの収支の凄まじさ。
これぞ本物のサービスデー。
そしてサービスデーはこの翌日も続き、当然ながら俺らは帰りもしないでそのまま並ぶ。
ただしこの二日目のサービスデーは毎回それほど出さない。後夜祭のようなものだ。

この日の嫁の日記もある。


緊張の一日・・

12月23日

さて、F店サービスデー2日目。
2人とも今日はサービス台の「モンスターハウス」

いやいや・・これにはまいった。まわらないっす!!
それでも、そんなにお金を使わない内に単発だけど当たりを引けた。
まぁ・・これからこれから・・・と最初は余裕の構え。

いや~・・当たらない!!
はまりはもちろん、なにがつらいかって「確変」が引けない。
当たっても、単発だらけで玉はいっこうに増えない。
追い金を重ね、私だけで4万近く使ってしまった・・。
リーチがかかるたびに緊張が続く。

時間は夕方過ぎ・・ある常連のお客さんがみかねて「この台打ってみない?」と・・確かにいまの台よりは回りそう。でも、もうこれ以上お金は使えない。
迷った・・とにかく悩んだ。でも、彼がけっこういい線いっていたので余っているカード分だけ打ってみることにした。

それは、「笑ゥせーるすまん」もうけっこう当たりを引いている台。
いやいや~しかし良く回る・・
この台を教えてくれた方はとてもいい人♪そして隣の人も。
確変中の玉をわんさかとわけてくれた。
その玉のお蔭でカードがなくなる寸前に確変をあてることが・・

そしてトントンと増えてゆく・・私はもう、興奮状態でよく覚えていないけどとにかくこの台は「出来」が良かったらしい。
自分でも途中思わず「この台おかしい!!!」と叫んでしまった位・・。
11箱半になった頃にはもういい時間。で、半端飲ましたらやめにしようと思ってたら・・・またまたまた・・確変!!!

最後は3連チャンしておわり。なんとも、奇跡の大逆転だった・・。
そしてこの台を紹介してくれたあのお客さんにも大感謝・・・

本日の収支   +148600円


以上が翌日の日記。
なんと前日より勝ってしまった。
というより2日でなんと25万プラスだ。

この日のことは覚えている。
俺の台は嫁よりは回っていたんだけど、いきなり千回の大ハマリ。
書いてあるとおり、嫁は当たるものの単発まみれで飲まれては追い金。
ようやく当たった俺は5箱ほど一気に出て一安心してたら、なんとそこから2千回以上の大ハマリ。

出玉をほぼペロッと持って行かれてイライラし、床に残り一箱になった出玉をぐしゃっと踏んづけて「ふざけんな!」と怒り心頭。
それを顔見知りの店員に見られてしまい、急にものすごく申し訳ない気持ちと恥ずかしい気持ちでいっぱいになり「ごめん」と平謝り。

この時のことは一生の恥だ。ダメ絶対。

その後、全てが飲まれる寸前にようやく当たった大当たりが大爆発を起こす。
20何連チャンだったか??とにかくもう止まらない。
確変が終わっても時短で引き戻す。
2500発入るドル箱が20箱以上。

嫁は嫁で顔なじみの常連さんにアホほど出玉を分けてもらっていたらしい(笑)
おおらかにも程がある。
換金したら20万を楽に超えていて、結果約15万プラスというわけだ。


これが昔のパチンコ屋の本気のサービスデーの全容。
こうして甘い汁を吸った俺らは、負けることに対して抵抗が無くなってきてしまった。
どうせサービスデーで取り返せばなんとかなると。

勝ちに対する執着心を失った俺はこの翌年、パチプロを廃業することとなる。

そしてこのサービスデーを行っていたF店も、甘い汁を吸わせて一時的に客は増えたが、通常営業時の釘に客が耐えられなくなり、あっという間に客が飛んでいってしまった。
勝ち負けできる釘でも一般客から見たらもうガチガチに見えてしまう。あの時より回らないと。
一度甘い汁を吸った弊害。

こうしてこの店もついに潰れてしまった。さらば俺と嫁の思い出の店。

うまくいかないもんだね。
スーパーなんかもそうだけど、無茶な安売りを続けたら普段が売れなくなる。半額シールを貼り過ぎたら普通の値段では売れなくなる。
それと同じようなもの。

なんでも地道にマジメに・・・が一番だ。


だから毎回それをお前が言うなっての(笑)



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