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バカの一つ覚えにワンチャンスを

この台の釘を見てる俺をずっと笑っていたのかもしれない。
それとも試されていたのかもしれない。
誰も打たない。見向きもしない。
放置され、死んだシマとなっていたソンブレロ。

そもそも他の店では見たこともない。
昭和の時代を引きずったかのような見た目とスペック。
羽根物15ラウンドが主流になっていた(羽根物自体廃れかけていたが)時代に最高8ラウンドの出玉の少ない羽根物。(8ラウンド完走で出玉600~700個)

ただし8ラウンド完走なんて滅多にない。(そもそも当時の俺は最高8ラウンドのものだとも知らなかった)
途中でほぼパンクする。この出玉の少なさはそれこそ言葉通りの遊技台。
運良く大量出玉なんてことは絶対にない、全てが釘次第の台。
昭和時代の羽根物というよりチューリップ時代の延長みたいなものだ。

これがソンブレロ。
誰も寄り付かない、店の一番端っこシマに十数台、ガッチガチの釘の状態で並べられていた。


初めはなんとなく。
見たことのない台があるなぁと思いながら釘を見て、あまりにもガチガチで笑ってしまった。
釘をここまでするということは簡単にV入賞してしまう台なのか、出玉が多い台なのか?
試しにいくらか打ったけども出る気配もなく終わってしまった。
無駄金使わされた。台にも店員にも笑われた気分。

ただまあ一度打ったことだしついでに釘も覚えておくか・・・と。

そこから毎回、他の台の釘を見終わった後にソンブレロの釘を見るのが日課となった。
釘を見るのはあとからで大丈夫。いつ行ったところでどうせ誰もいない。

しかしそのまま一週間、全台ひとつも釘がいじられることはなかった。
一週間どころか一ヶ月、一ヶ月どころか一年以上、全く何にも動きがなかったのだ(笑)

わかった。
これはもう店の飾りだ。オブジェなんだ。
他の台は入れ替えになるのにソンブレロだけはそのまま。
釘もそのまま。

それでも馬鹿の一つ覚えのように釘を見る俺。
その頃になるともう店員に笑われているような気がするんじゃなく、実際に笑われていた(笑)

そりゃまあ打ちも打てもしない台をあれだけ毎日見てりゃ笑われもする。
絶対にシャッターが開かない店に一年以上毎日通い詰めているようなもの。
自分でも何のためにやってるのか意味がわからない。あまりにも不毛な暇つぶし。


ある日嫁と二人で別の店へ。
そこでちょっとしたトラブルというか勘違いがあったため、結局いつもの店に移動することになった。

店には来たものの、この日は全ての台の釘が締められていて打てる台がひとつもない。
なので暇ついでに嫁に釘の見方等をレクチャーしていた。
嫁がフンフンと頷きながら釘を見てる間に、少しでも打てそうな台がないかと店の中をもう一周。
やっぱりない。そんなはずはないと更にもう一周。

もう完全にお手上げ。
まるで年末年始のような釘。
近々新台入替があるのだろうか?
そんなことを考えつつ、最後に日課であるソンブレロの釘チェック。

いつものように右端から釘を見ていくが、どうせいつも同じ面構えだ。
一台に2~3秒、明日はどうしようか?と思いながら、おざなりな釘の見方で左に進んでいく。

そして一番左端まで到着した瞬間、俺はタバコとライターを上皿と下皿にぶち込んだ。

自分の目を疑った。
寄り釘から落とし、何から何まで開いている。
何のいたずらなのか?店が俺の釘の目利きを試したのか?
俺が今まで釘を見てるフリでもしてると思ったか?

見逃してたまるかバカ野郎!この日のために俺は見てきたんだ。
全てはこのワンチャンスのために。

どれだけ出るかはわからない。
台のクセもわからない。
わかるはずもない。出たことすらないんだから(笑)
出てる人も見たことがない。それ以前に打ってる人も滅多に見ない。

ただ今日はこの台を打つしかない!

出ようが出まいがそんなことは知らん。
馬鹿の一つ覚えで通っていた、いつも閉まっている店のシャッターがついに開いたのだ。
何が売っているのかわからなくても中に入るだろうよ。

嫁を座らせすぐに打たせ、俺は後ろからその様子を見ていた。
そんな二人を店員たちが見ていた。

最初の500円はほとんど鳴きもしなかった。
大丈夫。こいつはまだ眠っているだけだ。
久しぶりに玉が打ち込まれ、台もハンドルのバネも驚いたのだろう。
次の500円でバッカバカ開いてあっさりV入賞。

おはようソンブレロ。お前が目覚めるのを待っていた。

パンクしまくるも、すぐにV入賞を繰り返し出玉はじわじわと増えていく。
あとはもう嫁任せ。
好きにしてくれ。俺はもう満足だ。


結局5箱ほど出して2万ちょっとの勝利。
だが金額の問題じゃない。
賭けたのは俺の意地とプライド。

なぜあの時ソンブレロの角台だけ釘を開けたのかは、今となってはわからない。店は15年も前に無くなってしまった。
この翌日には完膚無きまで釘は締められていて、それから釘が開くことは二度となかった。
それはまさしくワンチャンスだったのだ。


以下はその時嫁がホームページに書いた日記である。
まさかこんなものが残っていたとは・・・(笑)
先日閉鎖されたジオシティーズの自分(というかほぼ嫁)のホームページを閉鎖前に丸ごと保存したら、その中にこれを見つけた。変換ミスもそのままで貼り付けておく。


私の勘違いから・・(謎)

11月6日

今日もP店へ行くつもりで朝早く起きた2人・・。
でも、ハッとあることに気がつきました。
それは・・今日はパチンコの新台入れ替えで、
午後からの開店である。
しまった!そのことを彼に伝えるのを忘れていたのである。(笑)
しかも自分もそのことを忘れてて早起きをして「失敗したもっと寝ていれば・・」と思うくらいでした。(整理券は昨日の内に配られている)

あ-今日は休みか・・と思いつつ、ご飯を食べゆっくりとしていた私でした。

が、突然昼頃彼は、「さ-行くぞ-」と。
「???」・・よし行くか!と私。

P店に着いたのは、12時頃・・
??・・なんか様子がおかしい。
新台入れ替えって何の台?
午後からの開店のはずなのにみんなたくさん箱つんでるし・・。
???の嵐・・・・。

どうやら私の勘違い。たぶん開店はいつもと同じ時間で、
「新台」はスロット・・だった・・(笑)

そしていつものレディ-ス台はとゆうと、混んでいて台が開いていない状態・・。
「コリャだめだ」と思い、2人はF店へと向かうことにしました。

F店はやっぱりいつもの様にいい台は見つからない・・。
なんとなく釘の見方を習いつつ、彼の後についていく私・・。
(ちょっとだけ見方わかったかも♪)
店内を何度見渡してもいい台は見つからない様子・・。
今日はもうだめか。
「あ~私の勘違いで・・」とおもいウロウロ・・

しかし、彼は見つけてくれました♪いい台を。
それはなんと、

「平台」です。

機種は「ソンブレロ」
とにかくいい釘をしているらしい・・。フムフム
「よし打ってみよう」と5000円札を両替し、まず500円と・・
え?・・1回しか開かない・・だめなのか?
いや、もう500円・・
な~んだ!よく開くじゃないか♪そしてVへ・・
そのとき2人はちょっと興奮気味・・
私ははじめて打つ台だし、彼はこの台は15Rまで継続すると思っていたから・・

だがしか-し!この台ちと、くせものだった。
5RからはなかなかVへ入らずパンクしてしまう。
ほんとに15Rまで継続するものなのか?不安でした。
でもその後、トントンとVゾ-ンへ入る入る・・で持ち玉を増やすことができ、
今日はこの台にかけてみることにしました。

そして、途中で最終Rまでパンクせずに持ってゆくことに成功!
なんと最終8Rまでのものでした・・(笑)

2箱までは調子よく、ズンズン増やすことが出来ました。
それからがけっこうきつかった・・。
飲まれては出て、飲まれては出ての繰り返し。
それでも増えているので、私は6箱を目標に一生懸命打ち続けました。
う、腕がいた~い・・

そして、5箱になったのは6時ごろ。
それからがまた長かった。
なんと2時間たっても増えることはなく5箱のまま。
玉が減るより、すごくいい事なんだけど
目標6箱って決めたのが良くなかったのかな?
もうやめることにしました。

彼にはすご~~~~~く待たせてしまって。
その上、6箱までいかなかった。
ごめんよ---。

途中で変わってもらおうとも思ったんだけど、今の調子が変わってしまったら・・とおもい1人でがんばってしまいました。

ほんと、2人ともお疲れ様♪の1日でした。

今日の収支   +23600円


以上が嫁の書いた日記。
結構スランプに捕まってたんだな・・・
嫁なりに頑張ってた様子。ありがとう頭が下がるよ。

嫁も苦労はしたが楽しかったらしく、後日の日記を見るとソンブレロをまた打っていたようだ。
いやもう出ないから(笑)



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