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狂った王国・ブラボーキングダム

狂っている。
この台を初めて打った時の素直な感想。
そして俺自身も狂っていった。


今から25年以上前、1992年に発売・発表されたブラボーキングダム。
大当たり確率は225分の1。
はっきりとした連チャンなどはなく、緩やかな数珠つなぎ連チャンがあるらしい・・・と噂がされた当時としてはおとなしめのスペック。

こいつがとんでもない曲者だったのだ。

何があったのかは後に書くとして、まずは台の説明をしたいと思う。
この台は9つのモードに分かれている。
ひとつが大当たり確率25分の1の今で言うところの確変の天国モード、残りの8つがなんと大当たり確率ゼロの地獄モードだ。

モードの移行条件はランダムではなく、保留玉3つ以上点灯した場合に第一のトリガーが引かれ、その保留玉消化時にリーチがかかった場合のみモードが一つだけ移行する。つまり図にするとこうだ。

モード移行させたいならばまずは保留玉3つ以上を点灯させる。
そしてリーチがかかるのを待つ。かかればモードが一つ移行する。
保留玉が全て消化したら第一のトリガーの権利消滅。
要するに次に保留玉が3つ以上点灯するまではリーチが掛かってもモード移行しない。

これがブラボーキングダムの大まかな流れだ。
大当たり直後は当然天国モード。当たったのだから当然。
で、だ。

リーチがかかればモード移行するということは、リーチがかからなければモード移行しない。
つまりは大当たり後の保留玉4回転でリーチがかからなければ天国モードのままなのだ。

保留玉でリーチがかからないだけで確変継続。保留玉が3つ以上つかないように打つだけ。
これだけでも強烈だが、万が一リーチが掛かってしまったとしても安心していい。
天国モードの場所がわかった時点で、保留玉を3つ以上つけた後にリーチを8回かければ天国モードに戻るのがわかっているのである。

だから初当たりを引いた時点で勝ちは確定。
丸一日、確変状態を自分の手で維持できるということだ。

この仕組みさえわかればあまりにも簡単な台。
この仕組みを知らなければ下手すりゃ一日中地獄を見る台。
なにせ保留玉が3つ以上点灯しない回らない台なら地獄モードのまま大当たり確率ゼロなのだ。

初当たりも実は簡単だ。
まず保留玉を3つ以上点灯させないようにして50回転ほど回す。
当たらなければ3つ以上点灯させてリーチを掛けて、モードを一つ移行させる。で保留玉を3つ点灯させないようにしながらまた50回転。
あとはその繰り返しだ。


この台を攻略した人ならわかると思うし、打ったことがないという人でもこれを読んで「これなら儲かりそう」と思ったと思う。

儲かるどころの話じゃないんだなこれが。

本気を出せば10日で新車が買える。
それほどの威力。しかもほぼノーリスク(止め打ち禁止の店じゃない限り)

プロが自重するレベルで玉を吐き出してしまう。
まさに狂気だ。


だから十数箱出したらモードをわざと地獄モードにして台を開ける。
すぐに飛びつく攻略法を知らないハイエナが首を傾げる。
他のプロがそれをこっそり見ながらモードの位置を確認する。
ジジババ・・いやハイエナが去った後にまた誰かが出す。この繰り返し。

はたまた、顔見知りがいたら天国モードのまま台を渡したり、逆に譲ってもらったりもした。
「あと4つ」
保留玉3つ以上点灯させてから4回リーチかければ天国モードだということを伝えてくれたのだ。

出しすぎず、でもギリギリまで絡め取る。
この台で長く稼ぐためには、こうやって台と店の寿命を延ばす他ない。


前回お金のことについて書いた。
安易に手に余るほどのお金を得るとろくなことが起きないと。
他人の宝くじの当たった話を書いたけれど、実は自分の身にも起きていたんだ。

この狂った台に、俺は完全に狂わされてしまった。

当時はまだプロではなかった。
脚の障害と身体の不調に耐えながらもまだ真面目に働いていたのだ。
その中で葛藤が生まれていく。

働けば働くほど収入が減っていく!と。

一ヶ月働いて手取りで十数万。
休んだ数日と早番の仕事終わりの数時間で稼いだお金が百万以上。
街にお金が落ちているのに拾いに行けない。なぜだ?働いているからだ。

お金をあまり稼がないために働いているのだ。
どういうことなんだこれは???
気持ちが一気に歪んでいく。
狂ってゆく。


その後ブラボーキングダムの攻略法がかなり浸透していき、釘をガチガチに締める店や台を外す店が増えてきた。
仕事が休みの日に地方にまで車を走らせ、まだ生きているキングダムを見つけては玉を、いや金をぶっこ抜いた。
それも数ヶ月も持たなかったか。そうして狂った王国は消えて無くなった。

狂った人間だけを残して。

甘い蜜を一度吸った人間は簡単に元には戻れない。
次の攻略出来る台を探して見つけてはまたそれにすがる。
それの繰り返し。

因みに稼いだお金は酒と女と競馬にほとんど消えた。相変わらずだ。
残った金も当時の彼女に車を貸したら事故ってしまい(幸い怪我はなし)、その修理代が80万で結局全部消えた。


そしてこの狂った人間は人生の分岐点に差し掛かる。
体調を崩し仕事を辞めた時だ。
あとは知っての通りパチプロになってしまった。

楽に稼げる。楽しんで生きられる。
馬鹿な奴だ。
攻略法がある。釘も読める。
それがどうした。

あの時狂った歯車は、未だ狂い続けて現在に至る。
いくら反省しても、もう時は戻らないのだ。


でもね。
時を戻せる機械がもしあったとしても、俺は戻さない。
今の子供達とお別れをするくらいなら狂ったままでいい。
もし時が戻ってしまったとしても、もう一度嘆き悲しみ狂いながらまたこの子供達と出会い、このnoteに同じことをきっと書く。それでいい。


そんな子供達を今日お祭りに誘った。
今日はたくさん遊んでたくさん笑おう。

で「行かない」って言われた(笑)


頂いたサポートはお酒になります。 安心して下さい。買うのは第三のビールだから・・・