0センチメートルの誘惑
絶対に勝てないパチンコ屋がススキノにあった。
恐らく日本一釘はガチガチ、スロットは全て設定1なのは間違いない。
ここはまともなパチンコ屋ではないと断言できる。
怪しげなススキノの裏通り。
風俗店と客引きとぼったくりバー。
今でこそほんの少しばかり健全な雰囲気になっているものの、2~30年前は観光客が絶対に近づいてはいけない場所であった。
そんな中にポツンと一件のパチンコ屋。
出す気がないのは一瞬でわかる。とにかく回らない入らない。
なのに夜な夜な客が集まってきていたのだ。
なぜこんな場所のこんな店に客が集まってくるのか?
寧ろなぜこんな営業形態でやっていけるのか?
エロい格好の店員でもウロウロしているのか?
いるのは普通の女性店員だ。
エロくも何ともないしエロいサービスもなにもない。
その日もただの時間つぶしでなんの気なしに寄っただけ。
別のところで呑んだ後、例のバドガールの店が開店するまで一服するだけの目的。
パチンコは回らないのは知っている。
だからこそここに寄ったのだ。打ちたい気持ちが全くわかずに済むからだ。
時間は17時過ぎ。
客もまばらで何もかもやる気が感じられない。
2階に上がってスロットに行くと多少客はいたものの、誰ひとり出てる様子はない。
何もせずに座っているわけにはいかないので千円だけ貸出機にツッコミ、ノロノロとスロットを打ち始めた。
その時ふと気がつく。
ほぼ全員が同じようにノロノロとスロットを打っていたのだ(笑)
三枚機械に突っ込んではレバーを叩き、タバコに火をつける。
時間切れで勝手にドラムの回転が止まるのをみんな見ている。
それはとにかく異様な光景。
そうこうしている内に店内は客でびっしりとなった。
トイレに行ったついでに1階のパチンコの様子を見ると客はやっぱりいない。
2階の薄暗いスロットコーナーだけがびっしりなのだ。
みんな俺と同じようにどこかの店の開店待ちなのか?
それともサービスタイムでもあるのだろうか?
ノロノロやっていると運良くBIGボーナスを引いた。
よくわからんがこのまま取り替えて今日の呑み代にしてしまおう。
そう思ったその時である。
18時になり店員達が消えたと思った瞬間、入れ替わりでとんでもない格好の女性達が現れたのだ。
股下0センチメートルのミニスカートを穿いた女性店員達。
胸元はガバガバで前かがみになる度中身が見えそう。
(この写真はイメージだけど、大体こんな感じ)
やはりそういうことか。やっぱりそうじゃないか。
さすがはススキノ。
みんなこれが目的だったのだ。
こんな秘密があったとは。
この女性店員達の接客態度は、とてもじゃないけどまともなパチンコ屋のそれではない。
「吸い殻片付けますよぉ」と客の俺を押しのけるように台の隙間にギュッと割り込んでくる。
これが兎にも角にも最高なのだ(笑)
お尻をギュ!お胸もムニュ!
いちいち押し付けてきやがってしょーがねーなぁ。
そして落ちた物を何とも下品なしゃがみ方で拾ったり、わざわざお尻をこちらに向けて拾ったり。
ずり上がるスカート。股下0センチメートルどころかもはやマイナス。
気がつけばBIG1回分のメダルはあっという間に消えて無くなった。
恐るべし股下0センチメートルの誘惑。
2時間位で彼女たちは去っていったが、すっかり鼻の下は伸び、財布は軽くなってしまった。
後日。
他の店でパチンコを打つも17時位になると気持ちはソワソワ。
目的はもちろん例のアレだ。
こんなものは別のきちんとしたお店(?)に行けばいくらでも見られるのに、パチ屋で見られるという非日常感の興奮にどうしても気持ちが抗えない。
18時前に小躍りするように裏通りに入り、客引き達に謎の挨拶をしながらパチンコ屋に飛び込み、スロットのある階にスキップしながら一目散。
脚に障害があるとは誰も信じまい(笑)
すでにおねーちゃん方は登場していたものの空き台がない。
後ろ髪を全力で引かれながら渋々退店。
更に後日。
今度こそはと早めに前の店を出る。
いたずらに1階のパチンコを打ってみたものの、ものの見事に0回転で終了。
仕方ないなとまた鼻の下を伸ばしてスロットに向かう。
しかし待てど暮らせど例のおねーちゃん方が登場しない。
「おい!店員が普通の店員じゃないか!」とも言えず、もやもやしながらスロットを打つ。
もしかしたら時間が変更になったのかもしれないと粘ったものの、結局現れることなく金だけ取られた。
更に更に後日。
いい加減にしてくれ。
俺が何のために他所で金を稼いでここに貢いでると思ってるんだ。
もう18時だぞ!あのねーちゃん方を出さんかい!と心で叫ぶ。
しかし現れない。
こんなことをやってるから客も飛ぶんだぞ?
もうすっかり誰もいないじゃないか。
次に来た時はしっかり頼むぞ!店のために言ってるんだ俺は。全く。
そんなことを何度繰り返しただろうか?
もういい加減付き合いきれない。
呆れながらも習慣のようにスロットに向かう。
その時ふと目に入った文字と写真。
「○月のイベントは連日大盛況でした」
みたいなやつ。
はっきり言って何が書いてあったかは覚えていない。
あまりのショックで。
文字通り頭を抱えた。
あれは期間限定のイベントだったのだ。
どうやら後ろ髪を引かれながら退店した日が最終日だったらしい。
それも知らずに毎日ではないけれど2ヶ月近く通ってはお金を捨てていた。
男ってやつはなんて馬鹿なんだ。
馬鹿だな本当に男って。
いや、他の奴らはさっさといなくなっていたんだ。
馬鹿なのは俺だけだ。
ショックを受けながら一応18時過ぎまでスロットを打つ。
当然何事もなく(ねーちゃんが現れることもなく)ただ負ける。
それを更に数ヶ月、回数は減ったものの通い続けた。
もしかしたらまた急にイベントをやるかもしれないし・・・。
客足が鈍い店は看板娘のスカートを数センチ短くすればいいだけだと、本当か嘘かよくわからない話を以前聞いた。
そんな単純なもんじゃねーだろよとその理論を小馬鹿にしていた俺を、半年後、このパチンコ屋の話を俺から聞いた股下数センチメートルのバドガール達が笑い飛ばすこととなった。
追記
このパチンコ屋もまたしてもコンビニとなってしまった(扉の画像参照)
パチンコ屋は潰れるとコンビニにしなくちゃならないルールでもあるのだろうか?(笑)
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