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スーパーブラザースを攻略せよ

あくまでブラザー「ス」である(笑)
そして例の超有名なあのゲームとは一切関係がない。
それがこのパチンコだ。


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1988年発売の羽根物であり、羽根物全盛期からやや下火になり始めた頃あたりだろうか?
各メーカーから次から次へと羽根物が発売され、見た目的には羽根物全盛期ど真ん中のように当時感じていたが、結果的にこの辺りからフィーバー台が幅を利かせはじめ、パチンコは遊戯からギャンブルとなる。

パチンコがこのままだったら、きっと今も賑やかで楽しいのほほんとしたゲームセンターのような場所でいられただろうに。
今となってはあとの祭り。


まあそれはともかく。
当時まだ学生だった俺は、いつもこのスーパーブラザースから始めるのが定番だった。
少ない投資で簡単にV入賞してくれ、すぐにある程度の出玉を確保できるからだ。
その玉を持って他の台へ行く。そこで玉が無くなればまたスーパーブラザースに戻って軍資金ならぬ軍資玉を稼ぐの繰り返し。

そんな面倒なことするならずっとスーパーブラザース打てばいいんじゃないか?と思うかもしれないがそれは無理。
すぐに出るには出るが、出玉が少なすぎて長々とやってられないのだ。

半日打って結局小箱2つなんてこともザラ。
600円で出て換金したら3000円。半日で2400円の儲けじゃ割りに合わない。
しかも残念ながら負けることもある中で、だ。所詮その程度の台。


それでも運が良い時にはダブルという現象が起きることがあった。
パンクや大当たり終了直後に役物内に残った玉がV入賞した場合、もう一度大当たり動作が最初から繰り返されるというものだ。
その映像があったので載せておく。

だがこんなのは所詮偶然の産物に過ぎない。
そもそも一度の大当たりの出玉自体少ないのだ。
店の方もこの現象ありきで釘の調整をしている。
今日一日の勝ち負けが左右されるほどの現象ではない。

もしこれを意図的に出来たなら、一日中大当たりが続くということになるがそううまい話はない。


そんなある日のこと。
大当たり中にV入賞口で玉が止まってしまうことがあるクセ悪台を発見した。
まあ次の玉が昇っていったり、上皿や盤面のガラスを軽くコンと叩けばすぐに動いて入ってくれるのでそこまで支障はない。

その大当たり中の様子を見てふと閃く。
これ、引っかかってる時にわざとパンクさせたらまた1ラウンドから始められるのでは?と。

そして早速2~3ラウンド目の大当たり序盤に玉が引っかかった。
意を決しハンドルの打ち出し停止ボタンを押す。
いくら出玉が少ない機種とは言え、大当たりを自ら放棄するのはなかなか勇気がいた。

しばらく羽根が開閉して大当たりがパンクした。
あとはこの玉をV入賞させるだけ・・・のはずだったが、実はこの台はすでに対策済みの機種で、大当たりが終了した時点で真ん中の回転体が逆回転するようになっていた。

そうだったすっかり忘れてた(笑)

ただ羽根の開閉チャッカーに入った瞬間に反転して元の回転に戻るので、まあ大丈夫。
ついでにその回転体の反転動作の刺激で、台をコンと叩かなくてもV入賞してくれることにも気がついた。

1チャッカーに入って大当たりが始まり、また何ラウンド目かに玉が引っかかる。
即座に打ち出しを停止しパンクさせる。パンク後1チャッカーに入賞してまた大当たりが始まる。

出玉自体少ないのと、1チャッカーにいちいち入れないとならないというワンクッションがあるため攻略しているという実感が全く湧かない。
なにせ三度これを繰り返してもまだ小箱に半分もないのだから。

10連チャンあたりからだろうか?タバコを持つ手が震えだしたのは。

決して早くはない。寧ろ遅すぎるほどに遅い。だが確実に出玉がジワジワと増えていく。
たまに役物内に玉が引っかからずに大当たりが終わったり、引っかかっていた玉が横にそれてV入賞しなかったりすることもあった。
しかしそれでも増えてゆく。

何より、今自分自身がパチンコ台を攻略しているという事実と実感。それが嬉しい。

初めての感覚。
出ているのではなく自力で奪い取る。

いや待てよ?
あの時だ!と思い出す。
ノボリのオッサンと手打ちの平台で出した時の感覚だ。初めてではなかった。


結果は丸一日打ってやや大きめの小箱に4箱程度だったか?
ドル箱にすれば2箱弱。
8000円ほどの勝利だった。

バブル全盛期で時給1500円のレジ打ちのバイトがあった頃なので割には合わない。
それでも俺は満足で、缶ビールを飲みながら地下鉄に乗り上機嫌で帰宅した。

これからバイトがない日はこれで稼ごう。
意気揚々とほろ酔い気分でベッドに潜り込んだ。


が、それが続くことはなかった。


なぜなら2度目はクッソつまらなかったのだ(笑)
結局俺は金も欲しかったが、一喜一憂するスリルが欲しかったんだ。
もうこれはただの作業。しかもあまりにも割りに合わない仕事。もっと稼げたなら違っていたのかもしれないが。

玉が飛んだ跳ねたをしながらVゾーンに飛び込んで、心の中で派手なガッツポーズを決めるためにパチンコ屋に通っているのだ。
それがなければパチンコじゃあない。

いつしかスーパーブラザースは軍資玉を稼ぐ台へと戻る。元の木阿弥。
ある程度の出玉を稼いでは、俺の大好きなロボスキーへと台移動。

咥えタバコで「クソッ!」と叫びながら出玉を突っ込んでいると、左にいた調子よく出していたオッサンに「箱取ってもらえます?」と話しかけられる。
その台狙ってたのになぁ。

ほらよと箱を渡した相手が俺の数学の先生であった。

全くお前は・・・という顔をしながら「頑張れよ」と一言。
しばし最高のスリルを味わいつつ退店。


追記
俺が打っていたスーパーブラザースはその後釘をコテンパンに締められてしまい見るも無残な姿に。
学校では相変わらずその先生に怒られていたが、パチンコ(とタバコ)の件は黙っていてくれた。
昭和の古き良き時代の話。

というか、今回の件ではない他の先生とスナックに酒を飲みに行ったりしてたのは、いくらなんでも古き良き時代にもあまりなかったことだと思う。



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