カタールW杯 準決勝 フランス×モロッコ
皆さんこんにちは。今回、Windtothさん主催のワールドカップアーカイブ化計画という素敵なイベントに参加させて頂くこととなりました、keitaです。
担当国がモロッコということで、モロッコ視点で準決勝を振り返っていこうと思います。
スタメン
ここまで4-3-3を基本布陣としていたモロッコは5バックを採用。
ここで軽く、モロッコ5バックを採用した理由を僕なりに推測すると、バックラインのに入るサイスとマズラウィの負担軽減。サイスは怪我を抱えながらの出場。マズラウィは初戦の怪我以降、コンディションが上がってない/まだ怪我を抱えている(?)。これらを考慮すると、彼らをプロテクトしつつ戦える5バックが賢明だと踏んだのでは?と推測。
モロッコの守備設計
この日のモロッコは5-4-1の撤退守備。相手CBがボールを持つのは許容、エンヌシリがチュアメニを監視。相手CBが運んできたらCHが出ていく。相手WGには時間とスペースを与えないよう、予めWBが近い距離でマークしておく。
ボールの奪い所は2つ。1つはライン間。楔に対してHVが積極的に前に出て潰しにかかる。近くのCHやWGのプレスバック意識も高め。
もう1つは相手WGのところ。ボールが仮に入ったらWGがプレスバックしてWBとサンド。中に逃げられないようにボールサイドのCHが逃げ道を封鎖。
フランスの攻撃
対するフランスの攻撃。保持時は2-3-5が基本形。( 時にクンデが右HV化する3-2-5または3-1-5-1も )。
左サイド、動く三角形、距離感が近め。右サイド、動かない三角形、距離感遠め。
左サイドの距離感を近くしてるのは、テオ-エンバペのユニット効力を活かすためでもあり、相手の守備ブロックを寄せて右アイソ役のデンベレやライン間のグリーズマンに少しでも時間を分配するためでもあり。
先制点は後者の部分から生まれた。しかも、初めて落ち着いて保持ができたタイミングから得点を取ってしまったもんで。降りてボールを受ける動きから瞬時に反転してベクトルをひっくり返したグリーズマンが流石すぎた。実は先制点前の4'10~に同じ動きをやっていて、それが布石となったもんだから、拍手喝采でしかない。
フランスのボール保持で個人的に目を引いた選手がいて… どうせグリーズマンだろとか言われそうだし思われそうだけど、僕はヴァラン。
CBが放置される状況の中、ゆっくりと相手を見ながらプレー。ボールをゆっくりゆっくり運んで、引き付けてリリース。クンデに預けて列上げして相方CBへのパスルート創出。
テンハーグがマンチェスターユナイテッドの監督に就任した今季から定点観測をしているけども、シーズン頭よりもはるかにボールプレ―の質が向上していて感激なんですよ。何はともあれ、代表でも成長した姿が垣間見るのは素晴らしきことよ。
フランスの守備設計
続いてフランスの守備設計。
エンバペは右HV-WB間に立ってパスルートを封鎖しつつポジトラ待機。サイスとエルヤミクにボールを持たせ、ジルーがアムラバト、グリーズマンがウナヒを監視。
ポジトラ待機させているエンバペの背中を使われた時の対応方法が2つ。
①テオが縦スライド、出て行ったテオの背中の広大なスペースはコナテが守る。
②フォファナが横スライド、合わせてチュアメニがボールサイドに寄り、グリーズマンが6番化して4-4-2に。
各々の管轄のデカさ、それを難なくこなしてしまう選手たちのフィジカルエリートっぷり。
特に、周りのスライドに合わせ続けてはボール狩りができるチュアメニは凄かった。
モロッコのボール保持から見る選手たちの特徴と攻撃の狙い
モロッコの選手たちを見て抱く僕の感想。
試合を見返していて改めて思ったことを書くと、相手を引き付ける意識がめちゃくちゃ高い。半端なく高い。ギリギリまで釣ってリリース。ひっくり返すことに全てを注いでる感じ。
という特徴を踏まえた上でモロッコの攻撃の狙いを整理する。
モロッコが狙っていたのはエンバペの背中。ここを起点に前進したい。
が、スライド構造が成されているので、簡単には前進させてくれない。
ということで、モロッコは左サイドから作っていく。可動範囲が広いグリーズマン周りでボールを回し、フランスの守備陣形を寄せつける。集まったらエンバペに背中へ展開。スライドが間に合う前にスピーディーに進む。
( Goodシーン : 42'45~と46'25~ )
エンバペサイドで押し込み状態まで行けた時は、ハキミ-シエシュのユニット+ブファルの出張で崩しかかる。
また、左サイドのマズラウィ-ウナヒ-ブファルの3人称もGood。ウナヒが斜めサリーして左サイドの三角形を回転させるorマズラウィがリアクトして2-8移動。( Goodシーン : 9'30~ 25'00~ )
ウナヒとマズラウィのプレス耐性の高さ。マズラウィはタッチライン際からボールを逃がす力が世界一だと思う。
サイスの負傷交代によって変わったもの
試合を語る上では一応触れたほうが良いトピックではあるかなと思って見出した(笑)。個人的にはサイスの交代で変わったものは特にないように思っている。5-4-1でも4-5-1でも、奪い所にしてる場所は変わらなかったし。1つ言うなら4-5-1の方が中盤の選手のタスクが多くて運動量も増すぐらい。まあスコアの影響でモロッコの守備機会が多くなかったにすぎないのかもしれんが。
エンバペサイドの攻防
モロッコは後半からウナヒを右IHに置いて、徹底的にエンバペサイドを攻略にかかる。ハキミ-ウナヒ-シエシュ、モロッコのロマン集めましたユニットの3人称攻撃、時にブファルが出張してきて4人称攻撃。
後半の半分はモロッコの攻撃が続く一方的な展開となる。ポジトラ待機の為に守備を免除されていたエンバペも位置を下げざるを得なくなった。
位置が低くともトランジションで脅威なことには変わりないが、脅威度自体は流石に落ちる。
( それでも50'25~、エンバペの自陣からのぶち抜きビッグゲイン、何ならチャンスクリエイト?には引いた。そんでエンバペの神速についていってカミソリタックルをかますアムラバトにはもっと引いた。)
次第にポケットまで侵入でききてきて、クロスまでいける回数も増えてくるモロッコ。しかし、最後に立ちはだかるフランスの選手が2名。コナテとグリーズマン(え?)。
コナテはポケット侵入されそうとなるや否や、颯爽と現れてカバーリング。カバーが早いからクロスもなかなか上げさせない。
そしてグリーズマン。なんでマイナスクロスの管理してるのがキミなの?と思わず言いたくなりますわ。てか言ってましたわ。
デシャンの的確な交代
エンバペサイドを攻略されてきてるフランスは、ジルーを下げてテュラムを投入。エンバペをCFにしてポジトラでの脅威度をまた高め、テュラムを左WGにおいて明確に4-5-1ブロックに。
これによってマークがある程度明確化された。特にテオは対面のシエシュに殆ど仕事をさせなくなったのが印象的だな。
テュラム、プレスバックを怠らない献身性。守備意識が高くて高くて。流石、父リリアンの子って感じだった。
総括
とても戦術的な試合。モロッコとしてはやるべきことを全部やった感が強い。最終ラインのコアメンバーが怪我を抱える中での出場を援助する5バック採用からエンバペサイドの攻略まで。ただ、リスクを受け入れて最終局面を消化できてしまうフランスが一枚上手だったに尽きる。
今大会のモロッコを振り返ると、個人的には4-5-1ブロックに可能性を感じたというか、これから採用するチームが増える気がする。
IHとアンカーの負荷が高い+バックスのある程度の守備力が求められるが、4-4-2にシームレスに変えられて、後ろに不必要に重たい状況になりにくく、ポジトラで前に出て行きやすい。
ドルトムントがCL 対シティで4-5-1を採用して苦しめた例もあるので、何となくの予想をここに書き留めて、字を打ち止めようと思う。