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研修講師の役割とは

ダラダラとしゃべり続ける研修講師。良いことを言ってるんだけど、すでに頭の容量はパンクして、声が音となって右から左に流れていく。

そんな経験、誰しもお持ちではないだろうか?

私は研修講師は、学校の先生や学者ではいけないと考えている。あくまで、組織人としての成長や行動変容をサポートする伴走者であるべきだ。


気づきを与え、行動変容を促せ

研修とはOff-JT。普段働いている職場は、何か気づきを得てきてほしい、行動が変わってほしい。ひいては、それによって組織に良い影響を与えてほしい、と思っている。(「研修」にそこまで期待してない方もいらっしゃるとは思いますが・・・)

研修講師は、そんな期待を背負ってくる受講者に、できるだけ期待に沿う結果を提供するのが仕事だ。人はどうすれば「気づき」を得て、行動が変わっていくのか。

「たくさんの知識を与えててやるから、自分で考えてみろ」。受講者が優秀な人ばかりであれば、そういう指導の仕方でうまくいくこともあるだろう。しかし、そんな人は自分で参考書を読めば、勝手に成長していく。研修講師に求められるのは、自分でできない人にも「気づき」を与え、行動を変容させていくことだ。

「分かる」と「できる」は違う

どうして一を聞いても十まで分からないのだろうか?それは間を自分で埋めることができないからだ。だからこそ、そこに講師の仕事がある。

誰でも難しい理論を聞いて、それが社会にどうやって生かされているかをすぐにイメージすることは難しい。会社の新入社員研修でもPDCAサイクルやコミュニケーションについて教えると思う、ただ、教えるだけでできるようになるのであれば、世の中にこんなに研修会社は存在しない。

「分かる」と「できる」には大きな隔たりがある。PDCAサイクルを例にとって考えると、PDCAサイクルを理解した後には、自分の職場での仕事に当てはめて考えてみる。そうすると、できている部分もあれば、できていない部分もある。

できていない部分の原因を分析する。真因が分かれば、今学んだPDCAサイクルの考え方を使って、対策を考えられる。もし対策が見つからなければ、講師に質問することもできる。

こうして、課題を疑似的に解決する経験を作ることで、「できる」に限りなく近づき、現場での行動変容につながるのである。

それでもまずは「分かる」がスタート

講師の役割は大きく分けて以下の3つである。

  1. 知識を授ける

  2. 意識を研修室の外に連れ出す

  3. 連れ出した先で疑似的な成功体験を積ませる

まずは、知らなかったことを分かった状態にまでもっていく。そこがスタートだ。

その次からが重要で、受講者の意識を研修室の外側に連れ出す。連れ出す先は、受講者一人ひとりの現場であったり、講師が体験した場面だったり、想像を絶するような修羅場だったり、といろいろなケースがあっていい。

考えるべき内容に応じた場所で良いが、意識を連れ出すには、受講者が想像できる、できれば没頭できるほどリアルな描写が必要だ。講師は様々な経験や知識を積んできている必要があり、さらにそこに引き込む話術も大切だ。

失敗し、気づくことが「できる」の第一歩

意識が連れ出した先で受講者は、与えられた知識を使って課題を自分の力で解決しようとする。そこで、思った通りに行かないことを通じ、自分の得た知識が、まだ知識にとどまり、活用に至っていないことに気づく。

そのときの苦労が学びであり、考えた分だけ自身の成長につながる。苦労や学びは人それぞれ。安易に講師からの答えを知るよりも、受講者同士の学びを共有する方が効果が大きい。

まずは、自分の苦労や学びを言語化することで、自分が何を考えていたのか整理して発信する。互いの学びを共有することで、さらに新たな気づきを得る。さらにその学びを言語化する、つまりグループ発表などをすることで、学びの定着に近づいていくのである。

ここまで本気で取り組めば、研修講師が語る「正解」はあくまで一般論であり、すでに自分向けの答えが自分の中にできている。

こうした一連の取り組みで得た学びこそが、現場における行動変容につながる。研修室の中で実行することが講師の役割であり、より遠くの場所に意識を連れていくことができることこそが、良い研修講師である。

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