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市⾕聡啓さん講演メモ:正しいものを正しくつくる〜プロダクトマネジメント と プロジェクトマネジメント~Lychee Redmineユーザ会2020より


2020年12月2日にオンライン開催されたLychee Redmineユーザー会の基調講演で登壇された市⾕聡啓さんのセミナーの内容をメモしていたので整理したいと思います。

まずは市⾕聡啓さんのプロフィールです。noteにありました。

・・・今起きているコトのひとつに「DX」があります。しかしながら「DX」という言葉は迷走状態にあります。元々の言葉の始まりはスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した概念で「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というものです。概念なので具体的なイメージはつきにくいものです。

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それを整理したのが上の図。顧客や市場の要求の激しい変化に対応するため、企業が組織・文化を変化させながらデジタルを利用して新しいプロダクトやサービスを生み出し、その結果として顧客体験が変革する。・・・・つまりは「顧客の体験を変える新たな価値を生み出し続けられるようにすること」と考えられます。・・・顧客体験の再定義を伴わない”DX”はDXではない・・・出来たプロダクトやサービスそのものを指すのではなく、新しい体験を生み出し続ける状態がDXということです。

・・・・そんな大げさなと思うかもしれませんがDXの取り組みは政府の「DXレポート/DX推進ガイドライン」や投資の世界のDX銘柄にも表れていて、どの企業や団体も避けられない身近なものになってきています。

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このようなDXの時代に求められることは何かというと「構想」と「実現」の両利きです。~仮説を立て企画するプロデューサーとそれをカタチにするビジネスデザイナーが必要になります。プロデューサーには柔軟なプロジェクトの運用と高いマネジメント能力が必要になります。構想でははプロダクトマネジメント実現の側ではプロジェクトマネジメントが必要になります。

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これを実現するプロセスは「仮説を立てて検証」し、検証で分かったことに基づいて「プロダクトを実装」という2つのプロセスで構成されます。これを実現するのが仮説検証型アジャイル開発です。左側が構想:価値の探索で右側が実現:アジャイル開発となります。

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仮説検証の例です。仮説を検証し、次にイメージにして検証し、プロトタイプを作りまた検証し、MVPを特定し・・・と仮説を修正してゆきますます。ここがプロダクトマネジメントにあたります。

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・・・その次に実現化に向かいますが、ここで必要になるのがプロジェクトマネジメントです。プロダクトマネジメントの話をするとプロジェクトは必要ないように思われたりしますが、プロジェクトはタイムボックスの切り方のひとつだと考えれば当てはまります。



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そういった取り組みにチームが成長してゆきますが、理想とする成長のスピード「傾き」と現実にはギャップが生じます。これにうまく対応するために「段階」の概念を取り入れる必要があります。自分たちの到達したい目的地を設定し、それを実現するために必要となる状態を逆算で考える。その目的地も段階ごとに見直して変えてゆく・・・この営みが「段階の設計」となります。

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そして、この「目的地までの段階」をジャーニーと定義します。ジャーニーの中で行うスプリントでは周期を変えませんが、ジャーニーに関しては必要に合わせて時間も変えて対応してゆきます。


DXに関してもこのジャーニーが存在すると考えられます。たとえば、最初のジャーニーを「業務のデジタル化」、そして次に作ることを変革し、それが出来たら、ビジネスそのものの変革、そして組織そのものをDXの状態にまで変革してゆく・・・・というような段階を設計してゆきます。このなかで必要になるのが計画と現実をすり合わせて進めていくための機動性の高いプロジェクトマネジメントです。・・・・なんだかハードルの高いプロジェクトマネジメントを求められそうですが、大切なのはとても基本的な事です。

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「理解」

物事を進めるうえで様々な問題が起きますが、その原因をつきつめてゆくとその原因が「理解」にあることが多いことに気が付きます。頼む側と頼まれる側の理解の齟齬や、お互いの立場に対する理愛のなさが様々なトラブルを生み出します。もっとも大事なのはこの「理解」というもので、相手の状況を「理解」しないままで仕事を続けると悪い循環に陥ります。

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お互いの関係の質が壊れるとうまくいかない・・・それは理解の質が悪いという状態で、そのままだと悪い循環につながってゆきます。

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逆にお互いの状態をしっかり理解できると新たな思考が生まれ、行動が変わり、当然結果も変わってきます・・・・そしてそれが良い循環につながっていきます。最初の理解の質が良いか悪いかで循環は大きく変わります。

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このお互いの「理解」を深める為に必要なのが「タスク管理」です。これをしっかりと行う事が質の良い「理解」を生み、良い循環につながります。まずタスク管理をしっかり行う事が大事です。

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このお互いを理解していない状態、「分断」は日本の組織に欠けている課題でもあります。世代間、会社間・・・様々な分断が存在しています。この「分断」を乗り越える為に大事なのは自分の姿勢です。自分のほうからからチェンジしないとお互いの間にある分断を乗り越えられません。

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DXを推進していくためにはこの分断の解消に取り組まないといけません。コミュニケーションを変革し、シンプル化を進め、フィードバックを得てカイゼンしてゆきます。その勇気と周囲に対するリスペクトが重要です。

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最後に、このDXを取り巻く状況は変わることはありません。やりすごしていけばうまくいくだろう・・・では変わらない。不都合な事実を直視する心づもりが必要です。

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講演後のQA

【質問】(市谷さん講演)とても参考になりました! 有難うございます! 不都合な事実…日々ぶつかってます…。。。 市川さんの過去で一番「勇気」が必要だった場面とかあれば教えてほしいです!【回答】
そうですね

顧客のほうが「つくりたい!」となっているのをなんの根拠もないので止めましょう、一旦立ち止まって、検証しましょう、と言わなければならなかったときですね

もう10年近く前で、仮説検証も達者ではないし

受託開発会社にいたので、開発を止める、という判断を提言するのは勇気のいることでした


【質問】(市谷さん講演)DXで大切なのは、今、その人その組織で何をして、何をしたいかを、知ることだと考えています。 私が考える、求められる人材として、聴くことができる人なのですが、話すことだけの気がします。 そのような人が変わるには、教育、体験などいろいろあると思いますが、1つだけあげると、何に、なりますでしょうか?

【回答】一緒にやる、というアプローチだと思っています。やっておきやーでも、やったらええんちゃうという投げ方ではなくて、一緒に取り組むこと。そういう伴走が必要だと思います


感想

ここのところJBUG広島でのデンソー及部さんのセミナー、ウィングアーク1stさんのUPDATANOW20での日清食品喜多羅さんセミナー、そしてRPAコミュニティのディップの進藤さんの講演・・・とDXやアジャイルに関して共通点の多い話を聞きました。共通して言えるのは段階を得てDXができる組織に進化してゆく事、そしてプロジェクトマネジメントとは活動の一部のタイムボックスを切り出したものであること・・・・市谷さんの本「カイゼン・ジャーニー」はすでに読んでいましたが、こうやって肉声(デジタルですが)を聞くとさらに理解が進みますし、他の人の言っている内容と比較するとさらに理解と確信が深化します。仕事休んでまで聞いてよかったと思います。





さいごに開催のLycheeRedmineについての紹介

最後はこの講演を実現してくれたアジャイルウェアさんとLycheeRedmineの紹介です。(宣伝する意図はないですが礼儀として・・・)


<Lychee Redmineとは?>

オープンソースのプロジェクト管理ツールとして広く使われているREDMIINEの拡張プラグインで直感的に動かせるガントチャートやカンバンなどのスケジュール管理機能、工数リソース管理、プロジェクトレポート、コスト管理、EVMなどの機能が強化されています。利用ユーザーを見ると日清食品さん、東京海上日動システムズさんなどITの高度利用で有名な大企業さんが並んでいます。会社で導入したときは導入企業は250社くらいだったのに今はなんと2000社も導入しているそうです。Lychee Redmineを提供しているのは大阪の株式会社アジャイルウェアさんです。



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