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コンクリートジャングルの秘境遺跡を訪ねる~あかぎ児童遊園

今日は書くことがまだ無いので、ずいぶん昔の話を思い出して書いてみます。

その昔、と言っても数年前まで実は公園についてのブログを書いていました。国立の大きな公園から、区立の小さな公園まで、とにかくたくさん歩いて回って取ってきた写真とその公園の概要的なものと感想を毎日毎日アップしていました。その中でとても印象に残っている公園というものがいくつかあります。今日はそのなかの一つを紹介します。

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その公園は東京メトロ東西線の神楽坂駅のすぐ北にあります。

すぐ北と言っても駅を降りて周りを見回しても全く見えません。なぜならその公園は司法が住宅に囲まれているからです。調べた情報から地図をたどり、華やかな早稲田通りの雑踏を離れて北側の住宅に入っていきます。この辺りは起伏がはげしい丘の上に位置し、あまり見通しが良くありません。地図で見る限りでも周囲は住宅に囲まれて、通りから全く見えそうにありません。たくさんの公園を歩いていると、こういったケースは多々あるのですが、たいていは住宅と住宅の隙間からカラフルな遊具がチラリと見えたり、公園のなかの背の高い樹木が公園の存在をなんとなく教えてくれたりと・・・何か手掛かりがあるものなのですが、そんなヒントは全くありません。この時点でもまさに「秘境」です。

幸いにして新宿区の場合、公園に入る通りに面して高い場所に表示があるので、見つけることが出来ました。

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表示の横の住宅と住宅の間には、細い道がありました。普通ならば本当に入っていいのか悪いのか判断に困るような細い道です。しかもその先に公園らしきものが見えません。赤青黄色のブランコや滑り台も見えないし、公園っぽい樹木も見当たりません。黙って入っていっておまわりさんに呼び止められたらなんと言い訳しよう・・・だなんて考えながらその細い道に入っていった。少し勾配のある下り坂だ。周囲は人通りもなく静かな住宅街。客観的に見ても相当怪しいおっさんです。

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コンクリートの塀と塀の間の細い道を呼び止められる事もなく無事に通り抜けると、いきなり周囲が開けました。相変わらず細いことは細い・・・ちょうど家一軒くらいの幅の空き地なので決して広くはないのだが、前方に空が広がっているので思ったよりも広く感じました。行く先に見えるコンクリートの低い塀みたいなものの向こう側は急な坂になっているようで、それが広さを感じさせていました。

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・・・そして坂に近づいてゆく・・・なんか石の滑り台になっているようです。横に階段があったので一段一段降りてゆきました。こういった繁華街から近い公園の場合は周囲に酔っ払いが棄てて行ったゴミが散らばっていたり、雑草が生い茂っていたりと少なからず「やさぐれ感」があるのですが、なぜかここにはそういった感じは全くなく隅から隅まできれいになっていました。それなりに長い階段を下りて後ろを振り返ります


・・・・はっ

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上から見たらただの石の滑り台だったのだが、その滑り台は二段に折り重なった象の顔になっていました。

      「はーっ」

その象の顔は、変に子供にこびたかわいらしいものでもなく、そして本当の生きた象をリアルに再現したものでもなく、なんとも独特なものでした。その目は少し縁取りされ、やさしさと冷淡さ・・・そんな微妙で複雑な雰囲気を醸し出す。まさに神秘的な雰囲気です。

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頭の中にはカンボジアのアンコール遺跡の象のテラスなんかを思い浮かべました。それが都会の街の中というか住宅の窓のすぐそばに存在している。まさにコンクリートジャングルのなかの遺跡のようななんともシュールな空間がここに広がっていたのです。思わず吐いた息をそのまま吸い込んでしまいました。

この面積611平方メートルの小さな空間、そして駅近くであることを感じさせない住宅街の中というとても生活感というか日常間のある場所にあって、なんとも言えないような神々しさ・・・本当に息をのむ光景でした。

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・・・象の滑り台の下で、写真を撮りながらしばらく黙って見上げていました。本当にすごい場所です。暫く見上げていたのですが突然後ろから小さな声で「おはようございます」の声がしました。今まで人の気配なんか感じてはいなかったので少しどっきりしましたが、ふりかえると齢70歳から80歳くらいのおばあさんが掃除道具を持って立っていました。「あ、おはようございます」と返事をするとおばあさんはすこしにっこり笑って、ほうきで土の地面をシャッシャと掃いていました。・・・あぁこの人たちがこの場所をこんな神聖な感じに保っているのだなぁ・・・・そう思いながら会釈をして再び会談を登って公園を後にしました。


ブログの更新日を見てみると10年くらい前の話になります。Googleマップを見てみると象の滑り台もまだ健在のようですこしほっとしました。


ここは本当に良い公園で、ある意味パワースポット的な場所でもあります。神楽坂に行くことがありましたら、是非訪問してみてください。


あかぎ児童遊園

東京都新宿区赤城下町21

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